第404話 やらかし自動行動

 翌朝。目覚めると、いつものようにソフィが頑張っていて……変な感じがする。

 ソフィが俺と分身の一体の相手をしているが、残りの四体は……あれ? 場所は馬小屋っぽいのに、相手がカスミでは無いのだが。

 というか、今も続けて……ソフィは自動行動だから良いとして、馬小屋に居る女性は大丈夫なのか!?

 頃合いを見て分身を解除すると、ソフィの自動行動が解除された。


「ん……マスター、おはようございます。……どこかへ行かれるのですか?」

「おはよう。ちょっと馬小屋へ行ってくる」

「お供いたします」


 衣服を整えて部屋を出ると、


「おはようございます! ご主人様……昨日は凄かったです! ありがとうございますっ!」

「ご主人様、おはようございます! こ、今晩もお願い出来ますでしょうか」


 メイドさんたちが挨拶と共に、熱っぽい目で見つめてくる。

 そんな視線を向けられながら家を出て、馬小屋へ向かうと、全裸で銀髪の獣人の少女と目が合った。


「あ、居たーっ! 急に消えるからビックリしたよー! ねぇ続きっ! さっきの続きをしよー!」

「ま、待った! 君は……すまない。だ、誰だ?」

「えー、ひどーい! さっきまでずっと一緒に居たのにー!」

「だが、昨日までこの村に居なかったよな?」

「えぇっ!? 居たよー!? カレラドの街で、お兄さんがボクたちの事を買ったよねー?」


 買った!? いやいや、人聞きが悪すぎる事を言わないで欲しい。

 そういう人身売買をしている闇ギルドを潰す為に、これから王都へ行こうというのに。

 この銀髪の少女が何者なのか……という話もあるが、先ずは誤解を解かなければと思っていると、


「マスター。もしかして……ボルシチさんと同じなのでは?」

「ボルシチと同じって……え!? まさか、そういう事なのか!?」

「見て参ります」


 ソフィがとんでもない可能性に気付き、馬小屋へと駆けて行く。

 少しすると、別の銀髪の少女と共に戻ってきた。


「マスター。予想通りでした。馬車を引いていた白馬が二頭になっており、こちらの方が居られました。あと、藁の上でカスミさんが眠って居られます」

「藁の上で……たぶんだけど、カスミが分身たちと馬小屋で一晩過ごし、その分身たちが出した大量のアレが藁にかかったと。で、それを君たち二人が食べたのか」


 しかもその後、俺の分身四体でこの少女たちを……じ、自動行動モードぉぉぉっ!


「すまない。君たちの名前を教えてくれないか?」

「ボクはジャーダだよー! それより、さっきのをもう一回しようよー!」

「私はジョヴァンナよ。私もさっきのがしたいなー!」


 どちらも頭から馬の耳が生えていて、お尻の辺りから銀色の尻尾が生えている。

 見た目は十五、六歳くらいといった感じで、バルバラに近いようにも思えるのだが……獣人族は見た目と年齢が合わない事があるからな。


「君たちは何歳くらいなのだろうか」

「んーと、二年くらいは一緒に牧場で暮らしたよねー?」

「そうよねー。何歳って言われると分からないかもー」


 困った。

 とりあえず成人である事を願いながら、ジョブを授かっているか聞こうとして……分かる訳がないか。

 ボルシチはベビーシッターというジョブを授かっていた事も、シェイリーに調べてもらってわかった事だしな。

 この二人を今からシェイリーの所へ連れて行くには、時間がかかり過ぎるし、どうしたものか。


「お兄さん。どうしたのー? 何か悩み事ー?」

「あぁ。君たち二人を連れて行きたいところがあるんだが、少し遠くてな」

「じゃあ、ボクがお兄さんをおんぶして走ってあげるよー! ボクもジョヴァンナも走るのは凄く得意だし、走るのは好きだしねー!」

「いや、そうは言っても遠いし、何より二人とも小柄というか、俺をおんぶなんて……」

「大丈夫、大丈夫。さぁ行こー!」


 そう言って、ジャーダが俺に背中を押し付け、強引におんぶを……って、元馬だからか本当に軽々と俺をおんぶしているな。

 だが、当然ながら俺より身体が小さくて細いから、物凄く申し訳ない気持ちになってしまうのだが……って、走り出したっ!?


「そ、ソフィ! ちょっと魔族領へ戻ってくる! この事をリディアたちに伝えておいてくれ……」

「ま、マスター!?」

「ジャーダ、待ってー!」


 俺をおんぶしたまま、凄い速さでジャーダが走りだしたが、向きが全然違っていて……ただ、速いのは速いので、方角を指示しながら魔族領へ戻る事にした。

 ただ、壁の下を通るトンネルを抜けたところで、ジャーダもジョヴァンナも全裸だという事に気付いてしまったが。

 ……元兎耳族の村で、何か着る物を貰うか。

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