第403話 木の精霊のドロシーの力
カスミが御者を務める馬車に乗り、カレラドの街を出ると、東へ。
本当はそのまま王都まで行ってしまいたかったのだが、正確な距離も分かっていないし、一度ウラヤンカダの村へ戻るべきだとカスミに言われ……夜を迎えて大変な事になっている。
今思えば、カスミなら王都の場所も知っていたのではないだろうか。
「お兄さーん! もっと……~~~~っ!」
「ちょっとカスミはズルいんよ! さっき向こうで分身を使ってアレックスとしていたのを知っているんよ!」
「ナズナもズルいっ! レヴィアたんも分身したいっ!」
ナズナはともかく、本気を出せば五人になれるカスミが、俺の十一体しかいない分身を多めに交わっている……と、ヴァレーリエやレヴィアが抗議しているが、そもそも十一体で少ないって、どうなんだ?
いや、昼間と同じく村中の至る所でしているからなんだけどさ。
「なるほどねー。分身して、感覚を同期させると、数倍楽しむ事が出来ると……こんな感じかな?」
「えぇぇっ!? ドロシーっ!? ふ、増えたっ!?」
俺と一緒に居るリディアの声で、視線の先を見てみると……えーっと、モニカそっくりの全裸女性が十人くらい居るんだが。
流石は木の精霊と言うべきなのか、何でもありだな。
「ドロシー殿。もしかして、同じようにご主人様を生み出す事も出来るのだろうか?」
「んー、ご主人様の種がそこら中にあるし、出来るかも……出来たっ!」
ドロシーの言葉と共に、全裸の俺が二十人程……いや、作り過ぎだろ。
いくら何でも、それは死んでしまう……と思ったのだが、兎耳族の月魔法で生み出されたのと同じように、俺と感覚は繋がっていないらしい。
なので、ドロシーや順番待ちをしている村の女性たちが、ドロシーの生み出した俺の所へ。
だが、十人になったドロシーが、生み出した俺のところへ一斉に行き、
「~~~~~~~~~~っ!」
一突きで気を失った。
まぁ十倍だもんな。
しかも木こりのスキルで、植物には威力アップだから……す、凄まじいものがあったのだろう。
「お、お兄さん。カスミちゃんも五倍に挑戦して良いかな?」
「好きにしてくれ……って、俺の分身となのか?」
「もちろん! カスミちゃんはお兄さん専用なんだから……ふぉぉぉ~~~~っ!」
気絶したカスミを見て、やはりヴァレーリエやレヴィアが羨ましそうに……羨ましいか?
「んー、ウチの魔力があれば、分身くらい作れそうな気がするんよ」
「レヴィアたんもー! 頑張ったら出来る気がするんだよねー」
「待った! 二人が頑張ると村が消滅する! 俺が頑張るから、変な事はしないでくれ」
それから皆を満足させたので、分身を消して俺も就寝しようかと思ったのだが、
「マスター。私にはまだ続きをお願い致します。あ、分身してくださっても良いのですよ?」
ソフィが俺の所へやって来た。
「足りないのであれば、ドロシーが生み出した俺ではダメなのか? ……いや、流石にソフィ一人で二十人は多過ぎるか」
「いえ、数の問題ではありません。マスターの分身であれば、一人で十人と……というのでも構いません。しかし、ドロシーさんが生み出されたのは、姿形はマスターと同じですが、与えてくださる魔力が薄いのです」
いや、魔力が薄いと言われても、俺には何の事かさっぱり分からないんだが。
「これです! やはり、このマスターの……あれだけ大量に出しているというのに、ずっと濃厚な、このマスターのものでないと、満足出来ないのです。もとい、魔力が満たされないのです」
何気にソフィはカレラドの街でもしていたし、かなりの量を飲んで居るから、これ以上は……あ、それはそれとして、いつものように夜を過ごすのか。
まぁフィーネやテレーゼが居て、分身していたりはしないから、まぁいいか。
とりあえず、明日こそは王都へ……って、分身たちを出さず、いろんな女性に触れあっている感覚が混ざらないのは久しぶりな気がしなくもない。
そう思ったところで、
「カスミちゃん復活っ! という訳で、お兄さん、カスミちゃんにもお願いっ!」
気絶していたはずのカスミが寝室に入って来た。
というか、まだする気なのか。
「五倍は流石にやり過ぎだったわ。だから、三倍……いえ、二倍に抑えておくから、お兄さん。お願いっ!」
「カスミはソフィと違って部屋が汚れそうなんだが」
「むー、そんな事ないもん。……じゃあ、馬小屋とかでも良いから、分身をお願ーい!」
「……はぁ。仕方ないな。でも、俺は寝るからな?」
「えぇ、大丈夫よー!」
カスミに押し切られ、五体の分身を出すと、その内の一体がソフィに。
残りの四体の分身が、カスミに連れられて部屋を出ていく。
別に部屋を汚さなければ寝室でも構わないのだが……本当に馬小屋で一晩過ごすのだろうか。
とりあえず、分身たちを自動モードにして、ソフィに乗られながら、就寝する事にした。
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