第402話 命を削って出し続けるアレ

「じゃあ、この男が魔法を使えるようになった経緯とかを喋ったら、解放してやってくれないか?」

「んー、それはこの男の態度次第かしら。お兄さんに頼まれたから殺しはしないけど、カスミちゃんに……お兄さんにケンカを売ってきた訳だし、相応の罰は受けてもらわないとねー」


 まぁカスミはあの魔法を受けているからな。怒るのも仕方ないか。

 カスミの分身が尋問を始めると言うので、念の為ロープで縛られた男を閉鎖スキルで閉じ込めると、


「お兄さん。この男を起こすから、また皆に飲ませてー」

「えっ!? ……仕方ないか。けど、飲むだけだぞ。こいつに皆の肌を見せたくないからな」

「もちろん。というか、ここにある毛布で辺りを囲って、周囲を見えなくするわよ。ロザリーちゃんだけは、ここでお兄さんのを飲んでもらうけど」


 カスミの言葉にロザリーが喜んでやってきて……いや、話を聞いていたか?

 服は着るように。

 ちなみに、毛布で囲われた外――この男に見えない場所では、ナズナとカスミに、ソフィとエミリアが当たり前かのように服を脱いでいるが。


「いい? じゃあ、起こすわよ」

「――ガハッ!」


 カスミに背中を押され、男が目覚める。

 そのすぐ傍で、ロザリーが嬉しそうに俺のを咥えていて、


「なっ!? ロザリー!? ――っ!? こ、こんな状況なのに、何故っ!? し、しかも止まらないっ!? ぐぅっ……」


 カスミの言う通り、男のズボンに染みが広がっていく。


「さて、アナタには強力な媚薬を飲ませたわ。これから私の質問に答えないと……出し続けて死ぬわよ?」

「……」

「アナタは今、自分の命を削って出し続けているんだけど、いつまで強がっていられるかしらね……最初の質問よ。何故私たちにケンカを売ったの?」


 男は苦しそうな表情を浮かべながらも、カスミの質問に答えようとしない。

 というか、命を削ってアレを出し続けている……って、俺も出し続けているんだが。分身しているから、この男の六倍も。

 これ、諸々のスキルが無かったら、本当に俺も死んでいるよな。


「答えなければ、本当に死ぬわよ? 二つ目の質問……アナタは前に会った時は剣士だった。なのに、どうして変な魔法が使えるようになっているの?」

「うぐっ……」


 男が一切答えようとしないので、どうしたものかと思い、ふと気付く。


「ロザリー。今カスミが聞いた事を、ロザリーからあの男に聞いてみてくれないか?」

「……んっ。わかった」


 ロザリーが俺のをコクンと飲み込み、チラっと男に顔を向けると、


「……ウェイ。グラディエーターなのに、魔法が使えるのは何故?」

「ロザリーを助ける為に、ジョブチェンジしたんだ。今の俺は暗黒魔道士だ」


 ウェイと呼ばれた男があっさりと口を割る。


「ジョブチェンジとはなんだ?」

「……」


 俺が聞くと、また無視なのか。


「……ジョブチェンジって何?」

「王都にある六合教の教会に金を払うと、もう一度クラスを授かれるんだ。さぁ、ロザリー! そんな男よりも、俺の所へ……」

「……無理。あと、ウェイの……小さい」


 ウェイが俺の言葉を無視するから、ロザリーがまた代わりに質問する事になったのがイヤだったのか、強烈な一言を……あ、完全に心が折れているな。


「――っ! ……もういっそ殺してくれ」

「まぁ小さいのは仕方ないわよね。ちなみに、私たちを襲ったのは、ロザリーちゃんを追いかけて来たから?」


 ウェイが泣きながら、小さく頷く。

 いやもう、解放してやってくれ。可哀想過ぎる。


「カスミ……」

「わかったわ。じゃあ、解毒薬はあげないけど、一応許してあげるわ。後は、アナタが変態でなければ生き延びるはずよ」

「何をする気なんだ?」


 カスミにそう聞いたところで、再び男が気絶させられた。

 俺も分身と閉鎖スキルを解除すると、


「じゃあ、ちょっと行ってくるわねー。さっき言った通り、こいつが変態だったら死んじゃうけど、そうでなければ社会的な死で済むわよ」


 カスミの分身がウェイを縛ったロープを手に、どこかへ跳んで行く。

 全員で衣服を整え、カスミに案内されて乗合馬車の停留所へ行くと、人垣が出来ていた。

 人々の視線の先を見てみると、


「うわ……あれは、流石に可哀想じゃないか?」

「でも、命は取ってないわよ? あとは、見られて興奮する変態でなければ、誰かが降ろしてくれるわよ」


 かつて元兎耳族の村で見たバルバラのように、近くの建物の屋根から全裸にされたウェイが吊るされていた。

 さっきはグルグル巻きだったのだが、直立したアレが強調されるように絞め直されていて、


「……ぷっ、小さっ!」

「……ビクビク震えているんだけど。変態よね?」

「待って。僕の名前はウェイです。恋人募集中です……って、よくあんな看板を置けるわね」


 道行く女性たちから指をさされている。

 あー、社会的な死ってこういう事か……。

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