第405話 あっという間の往復

 ジャーダにおんぶされたまま、凄い速さで壁の下のトンネルを抜け……第二休憩所に到着する。

 ここで何か着る物を……と思ったのだが、ここは何かあった場合に使う休憩用の場所なので、ベッドくらいしか無かった。

 流石にベッドのシーツを剥ぎ取る訳にもいかず、そのまま北上する。

 第一休憩所も先程同様なので通過し、元兎耳族の村へ。


「流石にここなら服があるだろ。すまない、誰か服を……」

「アレックスー! どうして……どうしてオレの所に来てくれないんだぁぁぁっ!」

「そうですよっ! 旦那様っ! 酷いですっ! もっと妻に愛を注いでくださいませっ!」


 全裸のまま爆走するジャーダとジョヴァンナの服を貰いに寄ると、この村を任せたバルバラに、村を離れられないラヴィニアから半泣きで迫られる。

 そこへ、ブリジットと熊耳族の少女たちも加わり、


「あ、朝の続き? これ、凄いよねー! 何だかよく分からないけど、身体がフワフワーってするからボクは好きー!」

「ですよねー。私も好きです! 皆さんも同じ様にお好きみたいですねー!」


 更にジャーダとジョヴァンナまでも参加されてしまう。

 ラヴィニアたちには悪いが、今日こそは王都へ行きたいんだっ!


「≪分身≫」

「ん? アレックス。分身の数が増えて……やっぱり増えてるーっ!」


 増殖スキルも使って全員を満足させると、一先ずシャツとスカートという最低限の服を二人に渡し、再び走り出す。

 しかし、バルバラやラヴィニアは気を失うまでするけど、ジャーダとジョヴァンナは元から体力があるのか、アレの直後から普通に走るな。

 いろいろと垂れているが、それはさておき、魔族領へ。

 東の休憩所から魔導列車に乗ると、


「うわー! これ、ボクたちが走るより速いよねー!? ……悔しいなー」

「ドラゴンや鳥のように、空を飛ばれたら負けるとは思っていましたけど、まさか陸地を走る者で私たちより速い者が存在していたなんて……私たちも、もっと速くならなければ」


 魔導列車に対抗心を燃やしている二人には悪いが、流石にこれには勝てないと思うのだが。

 そもそも、魔導列車は者ではないしな。

 それからシェイリーの所へ行くと、先程の元兎耳族の村と同じ様な事になり……って、いつの間にかモニカとサクラが参戦しているのだが。


「村を出られたと聞きましたので、こちらかなーっと思いまして、転移スキルでやって参りました」

「アレックス様。それより、私にもお願い致します」

「はっはっは。アレックスよ、相変わらず良きスキルを習得しておるの。どれ、今回は我が上に……おほぉっ! キクぅぅぅっ!」


 シェイリーも満足したようなので、本題であるジャーダとジョヴァンナがスキルを……というか、クラスを授かっているか聞いてみると、


「その二人はキャリアー……要は運び屋のクラスだ。ちゃんとクラスを授かっておるな」


 良かった。成人だった。

 いや、成人だったから良いという訳ではないのだが、最悪の事態は避けられたようだ。


「あと、アレックスは二人から騎乗スキルを得ておるな」

「騎乗スキルっていう事は、馬に乗れるようになったという事か?」

「まぁそういう効果もあるな。騎乗が上手になるのと、騎乗時に攻撃力が上がる効果がある。……乗っていても、乗られていても、どちらの場合でもな」


 乗られていても……って、どういう事だ? 俺が馬に乗る事はあったとしても、乗られる事なんてないはず……あー、そういう事か。


「ねーねー、お兄さんが乗られるってどういう事ー? ボクたちは走るのが好きだから、お兄さんを乗せる事はあっても、ボクたちがお兄さんに乗ったりはしないよー?」

「そうよねー。どういう事かしらー?」


 ジャーダとジョヴァンナは理解していないみたいだけど、わざわざ教える事はないだろう。

 とりあえず、当初の目的である、成人か否かという事がわかったので、ウラヤンカダの村へ戻り、王都へ移動しようと思うのだが、


「ふっふっふ。お嬢ちゃんたち。ご主人様の上に乗るっていうのがどういう事かを、お姉さんが教えてあげようではないか」

「いや、教えようとするなよ。とりあえず、モニカは放っておいて、ウラヤンカダの村の村へ戻ろうか」

「じゃあ、帰りは私がお兄さんを運びますねー!」


 今度はジョヴァンナが俺をおんぶしようとして……いや、服は着ような。

 あと、サンゴたちを魔族領へ送る為に戻っていたサクラも、一緒に村へ行くようだ。


「あの、ご主人様? 私の事を完全に無視していませんか? ご主人様ーっ!?」


 まぁモニカは帰還スキルで帰れるし、別に構わないだろう。

 という訳で、来た時の道を戻ってもらう事に。

 流石は元馬というか、ジャーダとジョヴァンナは物凄く足が速く、あっという間にウラヤンカダの村へ……って、止まらないのかっ!?

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