第469話 北の大陸の情報収集
ヴィクトリアやレヴィアたちを満足させ……ようやく本題へ。
「ヴィクトリア、ジェシカ。玄武という名を聞いた事は無いか?」
「玄武? 残念ながら、聞いた事はないな」
「そうですね。私も知りません」
残念ながら二人共、玄武という名前すら聞いた事はないそうだ。
となると、聞いた事のある者を探さないといけないのだが……よく考えたら、北の大陸について何も知らないな。
「……あ、待てよ。では、この大陸の魔族領は何処にあるのだろうか。確か北の大陸には、第一魔族領と呼ばれる場所があるはずなのだが」
「魔族領? いや、それも聞いた事がないな」
「私も聞いた事がありません。第一……という事は、他にもあるのですか?」
魔族領の事も知らないのか。
一先ず、ジェシカに魔族領の事を説明すると共に、今後の事を考える。
「よし。二手に分かれよう。第一班は俺と共にここから北上する。第二班は、ヴィクトリアたちに案内してもらって森へ行き、拠点となる家を建てて欲しい」
「えぇっ!? アレックス! 何処かへ行っちゃうのっ!?」
「あぁ。元より、俺たちはこの地へ仲間を助けに来たんだ」
確か初めて会った時、ヴィクトリアとジェシカにこの話をしたと思うんだが……あ、覚えてないか。
「だ、だったら私も連れて行って!」
「ヴィクトリアたちが問題ないなら構わないが……大勢の部下? が居るのでは? それに妹さんも」
「あ……部族を抜けるから関係無いと言えば関係無いんだけど、流石に隊長である私と、副隊長のジェシカが同時に抜けるのはマズいわよね。それにチェルシーも――妹も連れて行きたいし」
「とりあえず、まずは周辺の地形を調べるだけで、いきなり何処かへ行くわけではないぞ。なので、そういう事は部族や妹さんたちと相談してもらいたい」
「……わかった。ジェシカ、一度皆で話をしましょう」
そう言って、ヴィクトリアとジェシカが出て行ったが……当面は第一魔族領の場所探しだな。
「アレックス。ラヴィニアはどーする? 置いていく?」
「……あ。置いていくのはダメだ。となると、北ではなく、西か東へ行くべきか。それなら、海沿いに移動出来るから、ラヴィニアも同行出来るし、ここまで来た家というか船も運べるな。レヴィア、また家を引いてもらっても大丈夫か?」
「もちろん。アレックスの為だもん」
レヴィアにお願いして、北の大陸を海沿いに移動する方針に変更したところで、今度はリディアが口を開く。
「アレックスさん。それなら、北の森に作るという家も不要ですよね?」
「うーん。船の上で揺られ続けるのは、お腹の中の子にあまり良くない気がするんだ。だから森の中へ家を建ててもらい、リディアにはそこで安静にしてもらうのが良いと思う」
「ちょ、ちょっと待ってください。アレックスさん、私はそこに取り残されるのですか!?」
「いや、そういう意味ではないよ。俺だって、リディアと行動を共にしたいと思って来てもらった訳だしさ。何より、リディアの身体を心配しているんだよ。だから、ずっとそこに住めと言って居る訳ではなくて、暫くの間だけの話だ」
「で、ですが……」
リディアが物凄く困惑しているが、とにかく揺れは良くないと思う。
この辺りの話は、エリーから沢山聞かされたからな。
「第二班は、人形たちとリディアとミオに残ってもらおう。第一班は俺とレヴィアとモニカって事になるな……いや、ユーリは第一班にしようか」
「わーい! パパといっしょー!」
「いいなー。でも、リディアさんの為にも、ボク頑張って家を建てるねー!」
ノーラの人形がリディアの為に……と言ってくれているので頭を撫でると、ユーリと同じく嬉しそうに抱きついて来た。
家については、ノーラの人形に任せておけば大丈夫だろう。
ステラの人形が居れば、万が一の場合にも大丈夫だと思うし、ミオが居れば結界で第二班を守ってくれるしな。
「……って、そのミオは何処に居るんだ?」
「あのねー、ふねのおうちで、ねてるとおもうよー! よんでみるねー!」
「あぁ、頼むよ」
家にステラの人形も居るらしいので、メイリン経由でステラの人形に話し掛けてもらい、ミオを起こしてもらう。
しかし今更だけど、別大陸に居ても会話が出来るメイリンの人形生成スキルって凄いよな。
「あ、あのっ! アレックスさん、実は……」
第二班について話をしていると、突然リディアが思いつめたような表情で口を開いたのだが、
「アレックスー! 皆と話をしてきたんだが、とりあえずアレックスさんのアレを見せてくれないと、信じられないって! お願い、ちょっとだけ分身してーっ!」
突然ヴィクトリアがテントへ戻って来た。
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