第387話 大人の会

 商人ギルドでの一件から、改めて闇ギルドの本部の撲滅を急がなければと思い、エリラドから再びシーナ国の王都へ移動する事に。


「待って! アレックス、その前にする事があるポン」

「そうだったな。孤児院の様子を見ておこう」

「そっち!? いや、そっちも大事だけど……むぅぅぅ。とりあえず行くポン」


 少し様子のおかしいマミとジュリと共に孤児院へ向かうと、建設の大きな音が聞こえてくる。


「あ、アレックス様ーっ!」

「ケイト。凄いな、もうここまで進んだのか」

「レナちゃんが色々と手配してくれたんですー! とりあえず、どうぞ。家の中はそこまで煩くないですから」


 ケイトに出迎えられて家に入ると、音はかなりマシになった。


「お父さーん!」

「レナ。孤児院の件、色々とありがとうな。あ……そうだ。これはレイが作ったポーションをギルドが買い取った代金だ。孤児院の運営に使って欲しい」

「お母さんが? 流石やね。こんなに沢山……でも、多すぎやわ」


 ウララドの商人ギルドでの代金を渡したけど、半分は返されてしまったので、これは後でネーヴに渡そうか。

 ウラヤンカダの村のメイドさんたちの借金を立て替え、給与を支払う事になっているからな。


「ご主人様ぁぁぁっ!」

「ジスレーヌ!? というか、他の者たちも……何処を触っているんだよっ!」

「あ! 私たちを助けてくれたお兄さんだー! お姉ちゃんたちに襲われてる……のかな?」


 声がした方を見てみると、俺が助けた幼女たちが不思議そうに見てくる。

 だけどジスレーヌや、解呪ポーションで魅了状態になっている二人のメイド少女に、ケイトやマミたちまで暴走し始めたっ!


「と、とりあえずここはダメだ! せめて向こうへ……レナ、ツキ。子供たちを頼む」

「あ、お父さん。材料としてアレが欲しいから、ウチも向こうの石の小屋へ行くよー」

「子供たちは私がみています……が、父上。程々にお願い致します」


 ツキが待機してくれるらしいけど、程々にして欲しいのは俺が言いたい側なのだが。


「さて、皆。父上たちは今から大人の会がある。決して見に行かないように」

「えぇー? 何それズルーい! 大人の会って言って、美味しいものとか食べるんでしょー!」

「ふむ。確かに美味しいものだな。うぅむ……」

「ズルーい! ツキお姉ちゃんも一緒に行こうよー!」

「それもアリだな……」


 アリじゃないっ! 全然ナシだっ!

 子供たちを見ておくと言っていたツキが、その気になってどうするんだ。


「レナお姉ちゃんも、まだ子供じゃないのー!? どうして大人の会に参加するのー!?」

「その通りだな。私も……いやしかし、これも任務。だが私も参加したい……」

「そうだよー。ジスレーヌお姉ちゃんだって子供なのに参加してるし、良いよねー」


 うん。子供たちが興味津々になってしまったので、中止だな。


「はいはい。ウチは残るわ。あと、実はこっそり美味しいお菓子を用意してあるんやけど……どないする?」

「お菓子ー!」


 レナの対応で子供たちの興味が一気にお菓子へ。

 そんな中、


「お父さん。これを」


 レイにバケツを渡された。

 何となく言いたい事を察して、石の壁で作った小屋へ。


「アレックスさん! 早く男の子の姿に!」

「アレックスー! 早くするポン! 焦らされ過ぎて、頭がおかしくなるポン!」

「ご主人様っ! 早くっ、早くっ!」


 誰も離れてくれそうにないので、分身スキルを使用すると、十一体の分身たちが現れる。


「って、どうして分身しか使っていないのに、複製スキルの方まで現れるんだよ」

「凄いっ! アレックスがいっぱい! えっと、女性は六人だから、一人につき二アレックスの割当てポン!」

「いや、俺を単位みたいに呼ばれても……って、待った! ジスレーヌはともかく、そっちの少女メイドたちはダメだぁぁぁっ!」


 既にマミが全裸で、俺の複製も全裸だったが、二人の未成年メイドをギリギリ外へ連れ出し、セーフ! ……だと思う。


「ご主人様。ジスレーヌは良くて、どうして私たちはダメなのですか?」

「いや、ジスレーヌはあぁ見えて成人なんだよ」

「そうなの? ジスレーヌ」


 ん? あれ? ジスレーヌがここに居るという事は……間違えたっ!

 魅了状態のメイド少女が全裸になっていたけど、ギリギリで連れ出したから大丈夫……大丈夫だと言ってくれぇーっ!

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