第415話 魅了される聖女様

 マズい。このプリーストっぽい女性が魅了されてしまっていては、誰が俺の周りに居る女性たちを治すんだっ!?

 既にキャサリンが裸になっているし、今から教会を出る訳にもいかず、どうしようかと思っていると、


「せ、聖女様っ!? 祭服をはだけさせて、一体何をなされているのですかっ!? ……なっ!? これは一体……そ、そこの男っ! 聖女様から離れなさいっ! 聖女様に何をしたのっ!?」


 この教会の職員らしき女性がやって来た。

 しかし、聖女って言っているが……まさか、この聖職者っぽい女性が聖女なのかっ!? 思いっきり胸を露出させ、確実に魅了状態に陥っているのだが。

 聖女といえばパラディンよりも上位のジョブに思えるのだが、状態異常耐性とかは……まぁこれを見る限り、無いのだろうな。


「だ、誰か来てっ! 聖女様が……聖女様が変質者に襲われるっ!」

「待ってくれ! 俺は変質者とかではないんだ。この女性たちの魅了状態を治癒してもらいたくて……」

「きゃぁぁぁっ! 襲われるぅぅぅっ! し、司祭様ーっ!」


 違う! 違うんだぁぁぁっ!

 せっかく魅了状態でない女性が現れたのに逃げ出してしまい……少しすると、金色の豪華な服に身を包んだ中年男性がやって来た。


「こ、これは……何という事だ! 六合様に祈りを捧げる礼拝堂で、何という事をしてくれたのじゃっ!」

「すまない。だが俺は、魅了を解除してもらいたくて……」

「クララよ。お前は聖女になったのだろう。しっかりせぬかっ! 六合様にいただいた加護で己を守るのじゃっ!」


 この聖女だと呼ばれてる女性はクララという名前らしいが……うん。聖女がそんな事をするのはマズい!

 しっかりしてくれっ! 魅了に負けるなっ! クララっ! 服を……胸を隠すんだっ! 胸を押し付けるなっ! 舌を絡めるなぁぁぁっ!

 身動きが取れない俺に、クララがキスしてきて……俺の身体が光り輝く。

 いや、スキルが増えた事はありがたいのだが、聖女という立場上、非常にマズいのではないかと思っていると、突然聞いた事の無い声が響き渡る。


「……あ、あの。私の教会でそういう事をするのは、流石に控えていただけないでしょうか」

「だ、誰じゃっ!? ここはワシの……六合教の教会じゃっ! 誰か知らぬが、勝手に人の教会を自分の物のように言うでないっ!」

「……ですから、私の教会ですよね? それより、本当に止めてくれませんか? これは警告です」


 何だ!? 天井から声が聞こえているように思えるのだが……そういう魔法装置が、この教会に設置されているのだろうか。

 だが、その割には職員っぽい中年男性が周囲をキョロキョロしながら怒っているし……何だ!?

 しかし、そんな事関係無しにキャサリンが激しく動き、


「~~~~っ! お兄さんの……しゅごい」


 一人で気を失い、その場に倒れ込む。


「次は私なんだからっ!」

「ボクの番だよーっ! ずっと待ってたもん!」

「ふふっ! 旦那様のは私が……ふゎぁぁぁっ! これが男性の……」


 って、天井の声に気を取られている間に、女性たちの中で争奪戦が始まっていて、クララが俺のを……初めてなのに無理をするなっ!

 そう思った直後、


「――っ!? せ、聖女ともあろう者が、私の前で……何を考えているのですかっ!」


 先程の声が大きくなり……女性たちが気を失った!?

 いや、クララは聖女で何かしらのスキルがあるからか、何とも無さそうで……というか、むしろ激しくなっているんだが。


「あ、アレックス様! お気を付けください! 何か……来ますっ!」

「サクラ! 平気か!?」

「何とか……ですが、今意識があるのは、拙者とアレックス様。あと、この泥棒猫――もとい、クララという女性のみですね。……はっ! アレックス様! 前ですっ!」


 クララが俺に抱きつきながら、もぞもぞ動いているので見えなかったが、礼拝堂の奥から何かがやってくる気配がある。

 慌てて目を向けると……頭に兎の耳を生やした女の子が居た。


「わ、私の前で、そんな事をするなんて……ずるいですっ! 公平に、私にも同じ事をしてくださいっ!」


 公平に同じ事をしろって言われても意味が分からないし、幼い女の子が何を言っているのやら。

 とりあえず、声は天井から聞こえて来た声と同じだが、子供がそういう事に興味をもたないように。

 クララも、子供の前だし止めような。

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