挿話80 拷問に怯える闇ギルドの下っ端ケイト

「先ず貴女の名前は?」

「ケイトよ」

「年齢は?」

「十六……」


 くっ……何故、私がこんな子供に尋問されなきゃいけないの!?

 けど、今私が持っている武器は、この縛られた身体だけだし、子供はナイフを隠し持っていたし、何より背後にあの男が居る。

 あれだけ離れた場所に居たスナイパーを投石で倒し、十人近く居たアサシンやローグを素手で……それも一撃で戦闘不能にしているから、絶対に逆らってはいけない。

 でも、闇ギルドの事を話したら、後で絶対に報復があるし……どうすれば良いのっ!?


「……なるほど、無視か。これだけ警告してやったのに。もしかして、攻められるのが好きなのか? それとも、我らシノビの薬を舐めているのか?」


 えっ!? 何!? 考え事をしている間に、子供から何かを聞かれていたらしく、めちゃくちゃ怒ってる!

 というか薬って何!? 毒って事!?

 や、やめてっ! 闇ギルドのアサシンたちが使っている毒の怖さはよく知ってる!

 やだやだやだっ! そ、そうだ! 残された私の武器で……この身体で何とか切り抜けよう!


「お、お兄さん。お願い! 私の身体を好きにして良いから、この子を止めてください!」

「ふざけるなっ! 貴様如きが、父上の寵愛を賜れると思うなぁぁぁっ!」

「その通りポン! どうして悪い人にご褒美をあげなきゃいけないポン!」


 えぇぇ……何故今のやり取りで、怒られる事になるの?

 というか、ご褒美って。

 絶対に言えないけど、こんなお子ちゃま二人より、出る所がしっかり出ている私の方が、あの男も喜ぶでしょ!

 そりゃあ、私は初めてだから上手くはないかもしれないけど……って、待って! この子は何をしているのっ!?


「ちょ、ちょっと! 私の服……」

「黙れ。そもそも口答え出来る立場にないのだからな」

「待って! 何処を触って……へ、変な物を塗らないでっ!」

「姉様より預かってきた、シノビの媚薬だ。早く口を割らないと発狂して、最終的には狂い死にする。警告はしたのだから、文句は無いな?」


 いや、だからその警告を聞いていなかったんだってば!

 もう一回質問を……って、な、何これ!?

 変……っていうか、痒い!?


「な、何を……んぁっ!」

「言っておくが、気が狂うのは本当だ。早く話した方が自分の為だ」

「ち、違……何を……」


 服を剥ぎ取られ、変な薬を塗られた所を、物凄く触りたい!

 だけど、手足は縛られているし……って、最初からこのつもりで縛っていたのね!?

 無理無理無理……話すっ! けど、何を話せば良いのっ!?


「な、何を……」

「ナニが欲しいのは分かっている。欲しければ、素直になる事だ」


 素直になってるのよっ!

 狂い死にだなんてイヤァァァっ!

 あぁぁぁ、お腹の奥がおかしくなってきた。

 こんな所、指でも届かないだろうし……やだぁぁぁっ!


「泣かないで欲しいポン。ちょっどだけ手伝ってあげるポン」

「〜〜〜〜っ! ふぁぁぁっ!」

「ちょっと触っただけでビクンって震えて、面白いポン。でも、指が汚れたから、もうやらないポン」


 い、今のは何!? ちょっと触られただけで、頭の中が真っ白になった!?

 だ、ダメ……もっと触って貰わないと、また身体が変になってきた!


「しゃ、喋るから! もっと触って! でないと、おかしくなるのっ!」

「では、貴女の背後には何があるの?」

「や、闇ギルドっ! 奴隷や毒、武器なんかを捌いているのっ!」

「何故、父上の事を知っていた? 自警団との繋がりは?」

「自警団の中に、闇ギルドのメンバーが居るから、情報は全て筒抜けよっ!」

「誰がスパイなんだ?」

「誰……って、そんなの知らないわよっ! 私は下っ端だもの! ただ、一人や二人じゃない……お願い、もう無理っ! 助けてっ!」


 聞かれた事は全部話したし、もうこれ以上話せる事はない。

 仕事があれば、ギルドの方から伝言役がやって来るから、ギルドの場所だって知らないし、ギルドの長が誰かも知らない……本当に洗いざらい話すと、


「ツキ。どうやら嘘は言っていないようだ。もう解毒薬を与えてやったらどうだ?」


 あの男が助けに入ってくれた。

 あ、ありがとう! 怖い人だと思っていたけど、実は良い人だったんだ!

 早く……早く、治してっ!


「畏まりました。では……あっ!」

「どうしたんだ?」

「げ、解毒薬を貰ってないです」


 な、何ですってーっ!

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