第435話 違和感を覚える部屋
「アレックスさん……私が気絶している間に、どうして女性が増えているんですか?」
「いや、これには深い訳があってだな」
結局、闇ギルドまで一旦戻ったのだが、俺や分身たちに抱きつく女性が離れてくれず、かといって屋外であのまま続けると色んな意味で危険なので、全員連れて来る事になってしまった。
で、離れさせる為に全員を満足させたところで、ジト目のクララが目を覚ます。
……クララも混ぜろと言ってくるかと思ったが、闇ギルドの中で満足させていたのが良かったようだ。
一先ず、自警団の詰所へ行きたいと話すと、クララが連れて行ってくれる事になった。
「あの、私はこの街に何度も来ています。当然、建物の外だって分かりますよ」
「言われてみれば、その通りだな」
クララが目を覚ましたら、また面倒な事になると思って起こさなかったのだが……今回は起こすのが正解だったのか。
やはり女性の扱いは難しいなと思いながら歩いていると、何やら視線を感じる。
しまった! クララに説明していなかったからか、普通に大通りへ向かっている!
「クララ、逃げるぞっ! あと、人気の無い道で自警団の詰所へ案内してくれ」
「えっ!? 逃げるって……おんぶですか。抱っこ……というか、走りながらしませんか?」
「しないっ! 次はどっちへ行けば良い!?」
「そ、そうですね。こっちへ走ったから……では左へ!」
それから暫く、クララをおんぶしながら全力疾走し……無事に自警団の詰所へ到着した。
しかしそれにしても、どうして街の中でフェイントをかけたり、閉鎖スキルで足止めをしたりしなければならないのだろうか。
「む? 君は女性を背負って走って来たようだが、何かに追われているのか?」
「あ、気にしないでください。それより、ここの長に会いたいのだが」
「会いたいと言われても、君が何者か分からないのに、会わせる訳にはいかないな」
「そうか……では、俺はここで待っているから、六合教の本部から来たと、伝言を頼めるか? あと、壁の中のシャドウ・ウルフの件で……と」
「シャドウ・ウルフ? そんな災厄級の魔物が現れたら、今頃街はパニックだが……よく分からんが、一先ず伝えてこよう。少し待っていてくれ」
自警団の受付に居た男性に伝言を頼んで暫く待っていると、少ししてから男性が戻って来た。
「うちのボスが話を聞くとの事だ。ただ、よく分からんが場所は地下にするらしい。そっちの階段を居りた所に扉があるから、その奥なんだが……あんた、一体何者なんだ?」
「ん? というと?」
「いや、さっきの話をボスに伝えたら、嬉しそうにニヤニヤ笑っていたからさ。うちのボスが笑っている所なんて初めて見たぜ」
この様子だと、この男は白か。
さて、俺の話を聞いて笑っていたと言うのは何だろうな。
各街の自警団に潜り込んで居た悪人たちを捕らえてきた事は、闇ギルドのボスと同じく知っていると思うのだが。
「アレックスさん。これ、どう考えても罠だと思いますけど」
「まぁ、そうかもしれないが、行かなければ話も出来ないからな。とはいえ、念の為……≪ディボーション≫」
再びパラディンの防御スキルでクララを守り、いざ地下室へ。
言われた部屋に入ると、少し広めの部屋に大柄な男が一人立っていた。
この男は、別にどうという事は無いのだが……何故だろうか。
この部屋に入った途端に、自分の身体に違和感がある。
「あ、アレックスさん。何だか、この部屋……変です!」
「クララもか。俺もだ。何か、おかしな感じがする」
この違和感の正体が何かハッキリとする前に、目の前の男が口を開く。
「よく来たな。さて……お前が俺の思っている人物と合っているか、先ずはお前の話とやらを聞かせてもらおうか。シャドウ・ウルフの話を聞かせてくれるのだろう?」
「あぁ。お前たち、闇ギルドの話だ。先程、本拠地へ乗り込んで潰してきた。お前たちの長の名は聞き忘れたが、奥の手で壁の中からシャドウ・ウルフが出て来たのだが……これで信じてもらえるか?」
「なるほど。その話を知っている者は、本当に極僅かだから、真実なのかもしれないな。俺からも一つ良いか? 各街の闇ギルドの支部や、自警団に居る俺たちの同胞を潰したのもお前か?」
「その通りだ。自首するなら痛い目には遭わずに済むぞ?」
「それは無いな。だが、俺は用心深くてな。王都ベイラドの自警団も潰したんだろ? 魔法が使えないようにしてあったのに」
……あ、そういえばそんな事を言って居た気がする。
元々魔法は使わないから、あまり気にしていなかったが。
「わざわざ地下に来てもらったのは……この部屋は魔法だけではなく、スキルも封じる事が出来るからだ。玄武の力でなっ!」
「玄武? ……どこかで聞いた事があるような気がするな」
「死ぬお前には関係の無い話だっ! 魔法もスキルも使えないこの部屋でなっ!」
そう言って、男が大きな斧を手にして向かって来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます