第353話 妊娠に気付かず参戦
視線が冷たくなっていたエリーを宥め、お腹の子の話をすると、
「あ……うん。ユーディットちゃんとステラが見てくれているんだけど、順調だって。しっかり命を感じるって言ってくれているの」
「うん! 天使族は新たな命を感じる事が出来るからねー! エリーも、もちろん私も、お腹の中に旦那様の子供がスクスク育っているよー!」
ジト目だったエリーの顔が輝き、ユーディットと共にくっついてくる。
だがその一方で、
「うー。ズルいよー。レヴィアたんも、アレックスの子供が欲しいのー!」
レヴィアが拗ねながら、くっついてきて……いや、さっき散々したんだから触ろうとするなってば。
「まぁ竜人族は特殊らしいからな。なかなか子供ができにくい種族だとシェイリーが言っていたぞ? それに俺が人間だから、人間以外の種族とは子供が出来にくいとも」
「でもユーディットは天使族なのに、お腹の中にアレックスの子供が居る。ズルいー!」
「あはは、私は幸運だったみたいだねー。でも、私以外にも他種族で旦那様の子供が居る人が何人か居るよー!」
……え? そうなのか!?
ユーディットの突然の言葉で、思わず固まっていると、
「えぇぇぇっ!? 私とユーディット以外にも、アレックスとの子供が居るの!? しかも複数!? ……まぁアレックスだし、あれだけしていたら、子供も出来るわよね」
エリーが一瞬呆れた表情に。
とりあえず、エリーもユーディットもそうだが、お腹の中に子供が居るのであれば、安静にしてもらわなければ。
「ユーディット。それは誰なのか名前を聞いても良いのか?」
「どうなんだろー。私はすぐに話したけど、エリーは暫く黙っていたよねー?」
「うん。だって、自分では確証もなかったし、間違いだったらアレックスも困るかと思って」
まぁ困るというか、他の者には悪いが特別扱いにはなるかな。
エリーとユーディットには戦闘などには参加させないし、そのアレもしないようにしているし。
何より身体を大事にしてもらい、安静にしてもらわないといけないからな。
「だけどその中の一人は、そもそも旦那様の子供がお腹に居る事に気付いていなさそうなんだよねー」
「え? そんな事あるのか? いや、そもそも俺は男だから分からないんだけど……それより、気付かずに戦闘などに参加したりして、万が一の事があっては困るし、何よりその女性が悲しむ事になってしまう。出来れば、本人に伝えてやってくれないだろうか」
「わかったー! という訳で、ボルシチー! 気付いていないかもしれないけど、お腹の中に旦那様の子供が居るよー!」
って、ボルシチかよっ!
子供が居るなら安静にしていないといけないのに、ついさっきまで思いっきりしていたんだが!
そんなボルシチは、俺が乳を搾って胸の張りが無くなったと喜んでいたのだが、
「……えっ!? そうなのー? それで少し前から、お乳の量が増えていたのねー」
「そ、そうなのか?」
「そうよぉー! もぉー、おにーさん。ほぼ毎日搾っているんだから、気付いて欲しいなぁー」
ユーディットから妊娠を告げられても、いつも通りだな。
「えーっと、ボルシチは子供が出来たのだが、割と平然としているな」
「まぁねー。私は元々乳牛だったからー、子供だって生んだ経験があるものぉ。でもー、おにーさんとの子供が出来たのは、素直に嬉しいわよぉー」
「そうか。喜んでくれるのであれば、良かった。だが、これから安静に……さっきみたいな事も暫くは禁止な」
「仕方ないわねー。でも安定期になったら、またして欲しいのと、私がおにーさんのミルクを飲むのは構わないでしょー?」
「え!? ま、まぁそう……かな」
「あと、これから更にお乳の量が増えると思うから、優しく上手に絞ってね」
ボルシチは俺のアレを飲むと言っているが、あんなものを飲んで大丈夫なのだろうか?
身体に良くない物は摂取して欲しくないのだが……と考えていると、
「なるほど。暫くご無沙汰だったけど、確かに飲む分には大丈夫よね」
「そうだねー! 私も旦那様とイチャイチャしたかったもんー!」
「レヴィアたんは、まだ子供が居ないから、いつも通りで良いよねー!」
……って、おい。エリーもユーディットも……というかレヴィアは、何回目なんだっ!?
「おにーさん。早速おにーさんのミルクを搾る番みたいねー」
「アレックス様ー! 妊婦さんたちに無理をさせる訳にはいきませんので、フィーネも混ざりますー!」
「私も私もー! あー、私も早くお兄さんの子供が欲しいなー!」
ボルシチやテレーゼたちも混ざってきて……エリーとユーディットにボルシチの三人は、くれぐれも無理をしないように!
というか、分身の方に行っちゃダメだぞ! 自動モードだし。
という訳で、三人が俺の所へ来て、レヴィアとフィーネにテレーゼたちで五体の分身の相手をして……いや、何回する気なんだよっ!
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