第244話 尾行されるアレックス

「こいつらだ」

「なるほど。残念ながら、見た事のない顔ですね。賞金首ではない為、賞金はお出し出来ないのをご了承下さい」


 リュウホウと、その部下という自警団の男たちを連れ、閉鎖スキルで閉じ込めていた場所へとやって来た。

 リュウホウが奴隷商人の顔を見て、即座に知らない顔だと言う。


「では、後はこちらで対処しておきますね」

「あぁ宜しく頼む」


 一先ず、これでこの奴隷商人たちは裁かれるだろうと、閉鎖スキルを解除して任せる事にした。

 とりあえず、これでこの件は終わりだと考え、本来行くつもりだった、野菜や果物などが売っている通りへ行く事に。


「アレックス。作物なら、この辺りの露店ポン」

「わかった。少し見て回ろうか」


 マミに案内してもらった露店を見ていると、


「父上……」

「あぁ、大丈夫だ。気付いている」

「如何いたしましょうか?」

「さっきの自警団の一人だろう。たいした力量ではないし、容易に話を聞けるだろう」


 視線を感じたので、マミを抱き上げてツキと共に路地へ駆け込むと、すぐに身を潜め、慌てて追いかけて来た男の腕を掴む。


「ひぃっ!」

「さっきのリュウホウと一緒に居た者だな? 俺たちに何の用だ?」

「ま、待ってください! 俺はリュウホウ派じゃないんです! 貴方の後をつけるように命じられただけです! どうか命だけは……」

「リュウホウ派? 何だそれは?」


 腕を掴んだだけだというのに、物凄く顔を歪めて怯えられ、命乞いまでされてしまった。

 俺を魔物か何かと勘違いしているのだろうか。

 ……とりあえず話を聞くと、この街の自警団は三人の副団長により、三つの派閥に分かれているらしい。

 街の人々を守る事を最優先とするジュリ派と、団員が金を稼ぐ事を優先するリュウホウ派。

 そして、そのどちらにも属さない、事なかれ主義の残りの一派。


「で、アンタもどちらにも属していないと」

「そ、そうなんだ。で、自警団員でもないのに、ゴロツキ共を素手で倒す程の力を持っているから、何処の誰だか知りたいって、リュウホウに言われたんですよ」


 嘘は……吐いていないようだ。

 良いように考えれば、自警団にスカウトしたいのだとも思えるが、そうでは無い気がする。


「へぇー、知らなかったポン。それで、人によって態度が全然違うポン」

「マミが知らないという事は、コイツの話は嘘って事か?」

「待って欲しいポン。私はジュリのお手伝いをしているだけで、自警団じゃないポン。だから、内部のいざこざまでは知らなかったポン」


 なるほど。レッドドラゴンと戦う事になり、マミが自警団に雇われたという事か。

 おそらく、自警団と言いながらも、レッドドラゴンを追い払おうとしたのがジュリの考えに賛同する者だけだったのだろう。


「あ、あの……僕はもう帰って良いでしょうか?」

「……今後、俺たちのあとをつけないと誓えるのならな。こちらにやましい事は無いが、つけらるというのは気持ちの良いものではない。もしも次に会ったら、動けなくさせてもらうからな?」

「は、はいっ! 絶対にしません!」


 涙目で訴えてきたので腕を放すと、物凄い勢いで逃げて行った。

 ……やけに腕が痛そうにしていたのが、随分と大げさだったが。


「本当に何だったポン?」

「さぁな。とりあえず、本来やろうとしていた、この街の調査を再開しよう。先ずは野菜……を?」

「ん? アレックス。どうかしたポン?」

「いや、凄く弱い力なんだが、誰かに叩かれているような……そういう事かっ!」

「ど、どうしたポン!? いきなり抱きかかえて……流石に街中では恥ずかしいポン。ジュリの家でするポン!」

「何の話だ!? それより、ツキは走れるか!? さっきの女の子の家に急いで戻るぞ! マミは道案内を頼む!」

「えっ!? そ、それなら、次の十字路を右へ行って、その次に……は、速過ぎるポーンっ!」


 今更ながら、さっきの男が俺をつけていた理由がわかった。

 あのリュウホウという男は奴隷商人とグル……もしくは、金か何かで解放している。

 というのも、突然俺が叩かれたような気がしたのは、パラディンの防御スキルを解除しておらず、あの女の子が叩かれたからに他ならない。

 俺にとってはダメージとは言えない程の攻撃だったが……やはりっ!

 俺にしがみ付くマミに案内してもらって走ると、先程の家の前に、馬車が停まっていた。

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