第623話 グレイスの新たなスキル
「六合。何か、白い霧みたいな物が、出ている女性が居るんだが……あれは大丈夫なのか?」
「ん? ……へぇ、なるほど。これはこれは……もしかして、アレックスは吸血族にスキルを貰っていたりする?」
「あー、まぁそうだな」
シアーシャが吸血族なんだが、先程クワラドの街の屋敷でスキルを貰う事になってしまったからな。
だが、あの白い霧みたいなのは、吸血って感じではないと思うのだが。
「おおよその検討は付いているんだけど、私は青龍みたいにスキルに詳しく無いからね……まぁ悪いスキルではない事は保証するよ」
「女性側にも悪い影響は無いと思って良いか?」
「うん。大丈夫大丈夫」
「そうか。それなら良かった……いや、良いのか?」
もう既にこの状況がダメだと思うのだが、六合が強制的に俺のスキルを発動させている以上、どうしようもない。
更に、六合の事だから……
「さて、アレックス! ここにいる女性全員を、平等に満足させるのだっ!」
うん。そういうと思った。
だが、いつもに比べてかなり人が多い。
こういう状態では、全員平等に……としようとすると、延々終わらない事も知っている。
という訳で、もう一つの手でこの状況を脱しようと思う。
「む? アレックス。私にしてくれるのは嬉しいが、それよりも向こうでグッタリしている少女が、まだ二回目だ。あの少女に分身を二体程……んぅっ!? わ、私に二人ではなくて、向こうの……むぐっ!」
六合には悪いが、俺の分身三体による集中攻撃で満足してもらい、分身スキルを解除するのが一番早いと学んだんだ。
というか早く解除しないと、どんどん被害が拡大してしまうからな。
しかし、それにしても……肝心の六合はまだ悦んでいるだけだが、他の女性たちが前より気を失うのが早くなっている気がする。
特に、シスター――修道女たちがあっという間だった。
司祭の女性も一瞬だったし。
……あ! あの白い霧に気を取られて、司祭から抜くのを忘れて……あぁぁぁ、めちゃくちゃ身体が痙攣しているが、大丈夫か!?
「≪ミドル・ヒール≫……≪リフレッシュ≫」
治癒魔法と状態回復魔法を使い、司祭を起こす。
「すまない。無理をさせ過ぎた。大丈夫か!?」
「あ、アレックス様ぁ……す、素晴らしいです! 私は普段違う街の教会に勤めており、今日は出張で来ていただけなのですが……アレックス様の教えを、もっと多くの女性に広めて~~~~っ!」
「いや、広めなくて良いから! というか、広めないでくれっ! あと、俺の教えって何なんだぁぁぁっ!」
って、抜かないといけないんだった。
ビクンビクンと身体を震わせる司祭も、クララのように椅子に寝かせると、今度はグレイスがやって来た。
「アレックス様! やっと、アレックス様の所に来れた!」
「グレイスは……ちょっと話し方が変わったのか?」
「うんっ! 六合様のジョブチェンジで、念願の後衛になれたからだと思うの! だから、アレックス様。お側にいさせてくださ……いっ!」
そう言いながら、グレイスが自ら俺のを……更にキスもしてきて、身体が光る。
希望に沿ったジョブになれて良かったと思いつつ、これから西の大陸に行くので連れて行くのは難しいかもしれない。
どう説明しようかと考えていると、
「〜〜〜〜っ!」
六合が満足し、気を失った。
既にこの場にいる者が全員被害にあってしまっているが、とりあえず分身を解除すると……あれ? 分身が消えない!?
いや、よく見たらイライザの相手をしていた分身が消え、
「アレックス様ぁー! どうして私だけ……」
「いや、そういう訳ではないんだ。とりあえず終わりにしようと思って」
イライザが頬を膨らませる。
……あ、そう言えば、分身のレベルが上がった時に、何か聞こえたな。
個別解除とかって。
一先ず、視界に入っている分身を意識して解除を行うと……おぉ、意識した分身たちは消えたけど、他の分身は残っている。
分身を一体だけ残したり出来るのか。
……そんなシチュエーションがあるかは分からないが。
いや、あるな! 極めて重要な役割が。
という訳で、適当に一体を……ロザリーの相手をしている分身を選び、それ以外の分身を全員消したのだが、
「アレックス様。グレイスとロザリーだけズルいですっ!」
「アレックス様は私の身体を気に入って下さっているのですね。嬉しいです〜〜〜〜っ!」
「私も! 私もして下さいーっ!」
ちょっと面倒な事になってしまった。
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