第712話 ブラックドラゴンの罠?

 どれくらい時間が経っただろうか。

 ヴァレーリエはアレの最中もユーリが治癒魔法を懸命に使ってくれて、完全復活した。

 ……完全復活したのに、未だに俺の分身から離れてくれないが。

 その一方で、


「にーにー! もう一回! もー一回するのー!」

「アレックス。分身を追加してくれないか?」


 ディアナが身体能力の高さと身体の軽さを活かして、俺に抱きついたまま自ら……って、今ザシャの声がしたよな!?


「ザシャ!? 何をしているんだ!?」

「いや、それは私の台詞なんだが」

「ち、違うんだ。これは、ブラック・ドラゴンの攻撃で、寒さに弱いヴァレーリエとディアナを守る為なんだ」

「ふーん。とりあえずアレックスは分身を出そう。話はそれからだ」


 分身を出さないと、ディアナにもっと色んな事を教えちゃうぞ? と、ザシャに迫られ、仕方なく分身を追加する。

 何度目になるか分からないが、ヴァレーリエを満足させ、ディアナがギュッと俺にしがみ付き、ザシャが嬉しそうに……って、違ーうっ!


「ヴァレーリエもディアナも、もう体調は大丈夫だな? ザシャが雪の中を歩いて来たから、道もある。あの男を追うぞっ!」

「ん? アレックス。あの男って、もしかしなくともブラックドラゴンの事だよな? どうして止めを刺さなかったん……だっ!?」

「いや、ヴァレーリエが刺した……というか、刺したつもりだったんだ。だが、ブラックドラゴンは炎が効かないらしくてさ」

「~~~~っ! ……な、なるほど。うーん……そっかー。いや、吹雪の中から男が出てきて、消えろって言われてムカついたから、つい殴っちゃったんだよねー。そしたら既に瀕死だったみたいで、死んじゃって」


 あー、既にザシャが止めを刺してくれていたのか。

 よく見たら、黒い吹雪も止んでいて、俺たちの周りだけ雪が解けている。

 ひとまず、ザシャが止めを刺したブラックドラゴンを確認しようと思うのだが……三人とも離れてくれそうにない。


「仕方がない。このまま歩くか」

「にーに!? えっ!? 待っ~~~~っ!」


 ディアナが気絶してしまったが、ザシャの案内に従って進むと、確かに先程の男が事切れていた。

 ヴァレーリエを地面に降ろすと、男を一瞥し、何事もなかったかのように分身の元へ。


「ザシャ。重ね重ね、ありがとう。敵討ちは終わりなんよ。これからは、レッドドラゴンの数を増やす為、子作りに励むんよ」

「ねぇ、にーに。ヴァレーリエは子供を作るって言いながら、どうしてまたこれを続けようとしているのー?」

「……アレックス。色々仕方ない事態ではあったんだと思うけど、説明くらいはした方が良いと思うぞ。魔族の私や竜人族のヴァレーリエは確率がかなり低いと思うが、獣人族のディアナは普通に……というか、むしろアレックスのだから、確率が高いと思うんだが」


 ザシャに呆れられながら、あとでディアナに説明しようと決めたところで、


「ふむ。楽しそうな事をしておるのじゃ。我らも混ぜてもらうのじゃ」


 ミオたちがやって来た。

 聞けば、黒い吹雪が現れた時点でミオが結界を張り、事なきを得ていたのだとか。


「ご主人様! 雪の中での暖め合いプレイ……私もしていただきたいですっ!」

「わ、私はノーマルで良いので、早く……」


 ミオに続いて、モニカとグレイスがやって来て、最後にザシャと離れているからか、直射日光で苦しむシアーシャがやって来た。


「わ、私も……早くアレックスさんのをいただかないと、死んでしまいますの。……ん? あ、あれっ!? 皆さん、待って! この魔力……呪いの力が発動していますのっ!」

「呪いの力!? シアーシャ、どういう事だっ!?」

「このブラックドラゴンは、自分が死んだ時に発動するタイプのスキルを事前に仕込んでいたと思われますのっ!」


 シアーシャの言葉の後に、ブラックドラゴンの身体から、黒い禍々しい何かが溢れ出す。

 シアーシャの話通りだとすると、この黒い力は止めを刺したザシャへ向かう可能性が高い!


「ザシャっ! 気を付けろっ! 何か来るぞっ!」

「んっ! アレックスのアレが私の中に……凄いのっ!」


 いや、そういう話ではないんだよっ!

 というか、ザシャもヴァレーリエもディアナも、一旦離れてくれっ!

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