第176話 唐突の再来
一先ず、ネーヴと守備隊の戦いが兄妹喧嘩だと分かったので、心配していたメイリンにその旨を伝える。
「……という訳で、ネーヴが戦っていたのは、お兄さんらしい」
「なるほど。本気の戦いでなくて良かったです」
「いや、ネーヴが使っていたスキルは凄かったけどな」
結果的には兄妹喧嘩だけど、ネーヴからの攻撃は本気だったように思えるんだが。
それとも同種族だし、雪の攻撃は大した事が無いのだろうか?
ネーヴも居るし、問題は無さそうだと判断したのだが、念の為……と、サクラとサクラの人形たちが二人をこっそり監視しているらしい。
話した感じでは大丈夫だと思うんだけどな。
「旦那様。二人は東エリアを見て回っているそうですが、特に怪しい行動は無いそうです」
「そうか。まぁ奴隷解放スキルで妹が居なくなったとなれば、兄としては心配もするだろう。とりあえず、妹想いの兄みたいだし、自由に見学してもらって良いんじゃないか?」
「そうですね。ただ、シスコンという可能性もありますので、そこだけ見極めなければなりませんが」
シスコン……と言ってもネーヴも成人だし、そういうのは妹が未成年の時に心配からなってしまうものではないのか?
俺には姉も妹も居ないので分からないが。
……まぁでも、ニナやノーラ。ユーディットみたいな妹が居たら、守らなくては! となる気持ちは分かる。
いや、その三人以外でも当然守るけどさ。
「アレックスさん! 昼食の準備が出来ましたけど……ネーヴさんのお兄さんも食べられますよね? 一応、少し多めに作っておきましたが」
「そうだな……って、しまった。リディアはネーヴの兄、スノーウィさんを見たのか?」
「いいえ。未だお会いしていませんが、どうかされたのですか?」
「いや、スノーウィさんは俺の倍とまでは言わないが、かなり大きな男性だからな。それなりに食べるんじゃないかって思ったのと、家の中では窮屈かと思ってさ」
「では、急ぎ食事を追加いたしますね」
「すまない。俺は、屋外のテーブルを準備しよう」
先日の祭の時のように、外で食べる準備をし、ある程度目途が付いた所で、メイリンに人形経由で二人を呼んでもらった。
「……いや、すみませんね。村を見学させていただいた上に食事まで」
「こちらのリディアが用意してくれたんですよ」
「おぉ! エルフには初めて会いまし……あれ? 目がおかしくなったかな? 天使族が居る様に見えるのですが」
「居ますよ? ほら……え? ヨハンナさん!?」
気付けば、いつの間にかヨハンナさんが居て、ユーディットの横にちゃっかり座っている。
「おほほほ。可愛い娘と、もっと可愛い孫娘の様子を見に来たの。アレックスさん、ユーリちゃんはどこかしら?」
「ヨハンナ様! 違うでしょ……今日は壊した家の弁償に来たんじゃないですか」
「まぁ主目的はそうだけど、家族とふれあう時間があっても良いじゃない」
気付いた時には、小柄な天使族の女性たち――トリーシアさんとアーシアさんだったかな――が二人掛かりで大きな木箱を運んで居た。
「こほん。アレックスさん。そしてノーラさん。先日はこちらの勘違いにより多大なご迷惑をお掛けしてすみませんでした。これはお詫びの品ですので、お納めください」
そう言って、ヨハンナさんの指示で天使族の二人が木箱を開けると、
「え!? これは……」
「ノースダックという鳥です。雄雌二匹ずつ持ってきましたので、繁殖させて食べるも良し。卵を食べるも良し。アレックスさんたちの好きなようにしてください。ちなみに、皮が美味しいですよ」
「あ、ありがとうございます」
四羽の鳥が出て来た。
うん。既にニナやノーラが可愛いって言っているから、食べるのは無しだな。
南東エリアに飼育小屋みたいなのを作ってもらおうか。
「た、卵……素晴らしいですっ! ありがとうございますっ!」
「え? えぇ……喜んでもらえて何よりです」
何気に、誰よりもリディアが喜んで居るが……あー、以前から料理に卵を使いたいって言っていたな。
……でも、ある程度繁殖させてからにしような。
「ほほぅ……なるほどな。うむ」
この様子を見ていたスノーウィさんが、一人でうんうん言っているけど……何だろうか。
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