壁役など不要と追放されたS級冒険者、≪奴隷解放≫スキルを駆使して史上最強の国造り

向原 行人

第1章 追放から始まるスローライフ?

第1話 一人でパーティの防御を担う俺は、壁役は不要! と勇者パーティを追放される

「アレックス。攻撃スキルが少ないお前は、俺たちS級パーティに相応しくない。パーティから出て行ってくれないか」


 ダンジョンの攻略を終え、宿屋で泥の様に眠って何とか疲れを取った翌朝。

 今日はハードな依頼を避けて身体を休めたい……そんな事を考えながら朝食にしようとした所で、パーティのリーダーであり、幼馴染でもあるローランドが変な事を言ってきた。

 攻撃スキルが少ない?

 そんなの当然だろう。俺は守りのエキスパートであるパラディンというジョブだ。

 攻撃スキルを持たない訳ではないが、魔物の攻撃を一手に引き受け、パーティメンバー全員を守るのが仕事なのだから。


「ローランド。お前、俺のジョブが何か分かっているよな?」

「動きが遅くて魔物の攻撃を避ける事が出来ない、愚鈍なパラディンだ。その上、攻撃手段は聖属性ばかりで、臨機応変に魔物の弱点を突いて攻撃する事が出来ない、お荷物だという事もな」


 いや、パラディンの別名は聖騎士だから、スキルが聖属性に偏るのは当然なんだが。

 そもそもジョブというのは、十五歳の誕生日に授かるもので、自分で選べるものでは無い。

 だから俺は、守りの専門家であり、極めて珍しいパラディンのジョブを授かった時、先に誕生日を迎え、更に珍しい勇者というジョブを授かっていたローランドを守ってやろうと決めたんだ。

 もう一人、珍しいアークウィザードという攻撃魔法のスペシャリストのジョブを授かった、幼馴染のエリーと共に。


「はっきり言わせて貰うと、昨日だってお前は殆ど魔物を倒していないだろ? どうして俺たちが倒した魔物の分け前をお前にくれてやらないといけないんだ!?」

「だから、俺の役割はこのパーティの壁役だろ? 俺が魔物を引き付けているから、お前やエリーが安全に攻撃出来るんだろうが」

「ふっ……何を言うかと思えば。それは単に、お前がトロいから勝手に囮となっているだけだろ。俺たちは、お前が魔物を引き付けていなくても、余裕で攻撃を避けられるんだよ!」


 いや、無理だろ。

 確かに勇者であるお前は、単体を狙った攻撃なら避けられるだろうさ。

 だが、魔法やスキルによる広範囲攻撃は回避出来ないって。

 もしかして、俺がパラディンの上位防御スキルで常に仲間のダメージを肩代わりしてやっている事を、忘れているのか!?


「言っておくが、ここに居る俺以外のメンバーは、全員火力に特化し過ぎた紙装甲のジョブばかりだから、低レベルの範囲魔法でも、致命傷になりかねないぞ?」

「だから、お前と違って、俺たちは攻撃なんて当たらないと言っているだろ。そもそも攻撃される前に倒すし、万が一攻撃を受けたとしても、プリーストの治癒魔法で回復出来るしな」


 そのプリーストがやられたら、どうするんだよ。

 確かに最も回復能力に優れたジョブはプリーストだけど、防御はパラディンに勝るジョブは無いからな?

 俺たち三人の幼馴染とは別で仲間になったプリーストの特性について、分かりやすく説いてやったつもりなのだが、


「お前がどれだけ自分を正当化しようと、もうこれはパーティのリーダーであり、勇者である俺が決定した事。このパーティに壁役など不要だと、エリーたちも同意済みだ! 今すぐ出ていけ!」


 ローランドから返って来る言葉は変わらなかった。

 しかし、後衛の二人が同意しているというのは、果たして本当なのだろうか。

 女性は朝の準備に時間が掛かるのか、エリーたちはまだ顔を出しておらず、俺とローランドしかいない。

 その為、今は確かめようもないが、常に俺が二人を守って居たから、こんな意見に同意するとは思えないのだが。

 疑惑の目をローランドに向けていると、


「……これは今まで黙っていたが、実は俺とエリーは昔から恋人同士なんだよ。はっきり言って、お前は最初から邪魔だったんだ。幼馴染だからと言って、無理矢理俺たちについて来やがって」

「そう……だったのか。すまん、それは知らなかった」


 予想外の事を口にしてきた。

 今までエリーにそんな素振りは一切見られなかったのだが、上手く隠していたのか。


「分かった。そこまで言うなら俺は出て行こう。……だが、俺は警告したからな? お前たちは、俺の防御スキルに頼り過ぎた紙装甲なんだ。本当に気を付けるんだぞ?」

「うるさい。お前はもうパーティから追放したんだ。さっさと消えろ!」


 こうして俺は、幼馴染三人で始まったパーティから追放され、一人で行動する事になってしまった。

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