第192話 牛乳は牛の母乳です

「レイ。何がどうなっているんだ? というか、貴女も少し落ち着いて。その……とりあえず、服を着よう。あと、変な所に顔を近づけないで欲しいんだが」


 ムギに起こされ、乳牛が大変な事になったと言われたので、薬師のレイを連れて牛舎へやって来た。

 光り輝く乳牛にレイが何かの薬を飲ませると、光が収まった時に乳牛が居なくなっていて、代わりに大きな……特に胸が大きな全裸の女性が居て、何故か俺の股間を凝視している。


「うーん。いやー……まさか、こないな事になるなんてなー。アレックスはんのアレはホンマに凄いな」

「すまん。どういう事なんだ?」

「いや、ムギはんから、アレックスはんがフィーネはんの中に出したミルクを大量に飲ませたって言っていたやろ? それが、何か変化を起こしたいけど、魔力不足? ……みたいな感じやったから、前に貰って聖水と共に精製しておいた、アレックスはんの純正ミルクを飲ませてみてん。そしたら、予想外の結果になったわ。まさか、乳牛が獣人になるなんて」

「……つまりこの女性は、あの乳牛だって事か? まぁ状況的にはその通りなのかもしれないが」


 身体や胸が大きいのは、元乳牛だからか。

 胸はモニカよりも更に大きいが……こうなっては、ミルクを得る事は出来ないだろう。

 リディアがようやく料理にミルクを使えるようになると喜んでいたが、落胆させてしまうかもしれないな。


「って、ストップ! どこに顔を押し付けているんだよっ!」

「だってぇー。私、もう知っちゃったんだもん。貴方が特濃の子種を持ってるって。ねぇ、お願い。貴方のを頂戴っ!」


 いや、なんて事を言い出すんだよっ!

 ここには未成年のムギも居るんだからな?


「アレックスはん。一つ知っている事を伝えておくと、牛の獣人……牛耳族の母乳は、ミルクと全く同じらしいで」

「え? そうなのか!?」

「ホンマやで。だから、この人の母乳は飲めるし、料理にも使えるねん」


 なるほど。レイの言う通りなら、リディアを落胆させる事は無い……って、いや絵面が厳しい!

 完全に人の姿なのに、乳搾りは……いや、ダメだろ。


「そ、そうなのか。けど、搾る訳にもいかないし、そもそも飲み辛いんだが」

「待ってぇ。私は乳牛だから、凄い量の母乳が出ちゃうのぉ。毎日搾って出してもらわないと、体調が悪くなっちゃうし、それはお願いしたいんだけどぉ」


 真面目な表情になった女性が立ち上がり、自身の大きな胸を押すと、先端からチョロチョロと白い液体が流れ出てきた。

 そうか、自分で搾って貰えばよいのか。


「うぅ……自分でやっても、全然出て来ないわぁ。今日、凄く上手な手つきで搾り出してくれた人が居たから、あの人に頼みたいんだけどぉ……」

「それなら、アレックスの事ニャー。とりあえず、溢れているのが勿体ないから、ムギが飲むニャー」

「貴方だったのね。流石、良い物を持っているだけあって、おっぱいの扱いが完璧……ひゃうっ!」


 突然、女性が変な声を上げたと思ったら、ムギが思いっきり胸から出る液体を舐めていた。

 俺と同じくらいの背丈がある女性の大きな胸をにしがみ付く小さなムギ……種族の差か、体格差が凄くて親子みたいに見えなくもないが、この女性は何歳なんだろうか。


「えっと、今更だが何と呼べば良いんだ?」

「ボルシチ……って、この子に名付けられたわよぉ? ちなみに私は、人間に換算すると三十歳くらい……んっ! 手で搾られるのには慣れているけど、舐められたのなんて初めてだから……猫耳があるからかしらぁ? 舌の表面なザラザラしていて、良い感じよぉ」


 ムギはミルクを飲んでいるだけなのだが、色々とヤバい。

 というか、よくダイレクトで飲めるな。

 ……いや、俺もあのミルクをリディアに渡そうとしていたんだけどさ。


「えーっと、ボルシチって呼び名はちょっと……フィーネ、何か良い呼び名はないか?」

「んー、元牛さんなんですよね? だったら、ビーフちゃんとかはいかがですか?」

「いや、余計に悪くなっているから! ストレート過ぎるっ!」


 フィーネに聞いたのが間違いだったのだろうか? 「ちゃん」を付ければ良いという訳でもないだろうに。

 もう、今のままで良いか。


「はふ……とりあえず、ボルシチは無事みたいだし、ムギはお家で寝るニャー。流石に食べる事は出来ないけど、ミルクが美味しいから良いのニャー。おやすみなのニャー」


 お腹がいっぱいになったからか、乳牛が大丈夫だと思ったからか……ムギが一人で家に帰って行く。

 乳牛としては大丈夫ではないが、とりあえず命の危機という感じではなくなった。

 まぁこうなった以上、ボルシチをムギが世話をするというのも難しいだろうな。

 ムギが帰り、残っているのはフィーネとレイとボルシチ……あれ? 嫌な予感がしてきた。


「おにーさん。ミルクの味見をしてくれないかなぁ。私のミルク……甘くて美味しいのよぉ」

「アレックスはん。リディアはんに渡せるかどうか確認する為にも、ここはちゅーっと、吸っとこーや」

「いや、どうして直飲みなんだよっ! 何か器を……んぐっ!?」


 突然頭を抱えられ、大きくて柔らかい物が押し付けられる!

 ……あ。確かに、ミルクそのものだ。

 しかも、味が濃くて旨い。

 そう思った直後、突然下半身に何かが触れている感覚が。

 しかし、分身はちゃんと解除して来たぞ?


「アレックス様が牛さんのミルクを飲んでいるから、私はアレックス様のミルクを飲むねー!」

「ずるーい! 私もそっちが欲しいのぉー」

「あ、ボルシチはんに飲ませた分を補充したいから、アレックスはんは分身して、この容器に出してなー」


 ちょ、フィーネっ!

 まだするのかよっ!

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