第19章 スローライフの新たな敵

第902話 ドワーフの国へ戻るアレックス

 十年近く前から国王モーガンになりすましていた神族を倒した。

 助け出したドワーフの女性たちを国へ連れて帰る為、待機してもらっているレイチェルの家へ。


「うぅぅ、アレックス様。帰られてしまうのですか!?」

「あぁ。彼女たちを家族の元へ帰してあげたいんだ」

「そ、そのあとはまた来てくださいますよね? わ、私のお腹の中には、アレックス様の子がいる可能性もある訳ですし……」

「もちろんだ。その責任も取る」


 そう言うと、レイチェルが抱きついてきて……いや、変なところを触らないように。

 あと、ミオやマリーナも便乗しないでくれ。


「では、出発しよう」

「アレックス様ぁぁぁっ! 早く帰って来てくださいねぇぇぇっ!」

「レイチェルだけでなく、私の事もお願いいたしますね」


 レイチェル母娘に見送られ、ドワーフの女性たちを載せた馬車を引いて歩き出す。

 南東の海岸にドワーフ国の船が泊まっているはずなので、そこまで行って……また戻って来なければ。

 というのも、元々はニナの従姉妹であるララを助けに来たのが発端なのだが、大勢のドワーフの女性たちを助けたものの、肝心のララが見つかっていない。

 という訳で、暫く馬車を引き、途中の村で昼食を取る事にしたのでドワーフたちに聞いてみる。


「すまない。この中で、誰かララというドワーフの女性を知っている者はいないだろうか」

「え……」

「些細な事でも構わない。俺たちは、ララを助け出す為にこの国へ来たんだ」

「あ、あの、アレックスさん」


 呼ばれて目を向けると、小柄なドワーフの少女が恐る恐る近付いてきた。

 この娘は確か……オティーリエがメリナ商会の支部で大暴れしたところで見つけた少女だ。

 囚われていたストレス発散で、穴を掘りまくっていたな。


「君は、ララの事を知っているのか? ニナという少女の従姉妹なのだが」

「ニナ! じゃあ、ニナも帰ってきたの!?」

「あぁ。俺のスキルで助けだし、開墾作業をかなり助けてもらったな」

「良かったぁぁぁ! ニナを助けてくれて、本当にありがとうっ! というか、アレックスさん。私がララだよーっ!」


 そう言って、ララが抱きついてきた。

 灯台下暗し……は、ちょっと違うか。

 既に助け出していたのに、認識出来ていなかったとは。


「あー……言われてみれば、ストレス発散で壁を掘ったり、大きなツルハシが好きだったり、ニナに似ているな」

「大きなツルハシも好きだけど、今はアレックスさんの大きなアレも好きだよー!」

「……ニナに何て言えば良いんだ」

「大丈夫だよー! ニナは仲間外れが嫌いだし、ニナと一緒にしよーっ!」


 いや、何をだよ。

 だけど、ニナはララが奴隷にされるよりも、もっと前から連れ去られたから……と、俺がニナを助け出していた事を、ララがもの凄く喜んでいる。

 という訳で、ララとニナの話をしながら昼食を取っていると、


「ララだけずるいー! マリも混ぜてー!」

「アレックスよ。子作りをするなら、消音の結界を使うから、遠慮なく言うのじゃ」

「こっ……アレックス殿。こ、こんな大勢の人がいる食堂で何をする気なのだ! ……だ、だが、私を混ぜてくれても……」


 マリーナとミオが抱きついてきて、モニカから理不尽に怒られる。

 俺はララとニナの話をしていただけなのに。

 しかし、ララを無事に救出したから、次はモニカを元に戻す方法を探さないとな。

 それに、あのモーガンのような神族と戦う為の力も得なければ。


「父上。ララ殿を無事救助したのであれば、早く戻って来るようにとメイリン母上が……」

「そ、そうだな」

「エリー殿やリディア殿に、シェイリー殿やランラン殿、ヴァレーリエ殿にレヴィア殿やネーヴ殿……要は、大勢の方々が父上をお待ちです」


 何故かモニーが怯えた様子で名前を挙げていくのだが……な、何を言われているのだろうか。

 長らく帰れておらず、新たに得たであろうスキルも確認出来ていないので、一度戻るべきなんだろうな。


「ほう、アレックスよ。これは大変だな。我々は全て参加するつもりじゃが、身体がもつかの?」

「ふむ。察するに、これは子作りチャンスって事かしら? 黒竜族の復活の為、私も全て参加しないとね」

「いいなー。ララも混ぜてよー!」


 ミオやオティーリエの言葉にララが反応し……とりあえず、今はドワーフの少女を無事に送り届ける事に集中する事にした。

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