第448話 船の販売所
「クララ。向こうに船が見えるな。行ってみるか」
「はい。アレックス様」
六合教の宿舎に居た女性陣に、シェイリーの魔法陣について説明した後、クララの転移スキルで再び港町クワラドの家へと戻って来た。
結局、船を入手して北の大陸を目指すしかないのだが、先ずは船を購入しようと思った場合に必要な費用を知る為、港へ向かう事に。
ちなみに、同行してくれているのはクララと、イネスの人形イースに、ステラの人形スティだ。
クララに人通りが少なそうな道を選んでもらいながら、船着き場へ。
「アレックス様。無事に着けましたね」
「あぁ。流石クララだ。ありがとう」
「では、お礼という事で早速……」
「いや、どうしてそうなるんだよっ!」
外でこうなるのを防ぐために、屋敷でヘレナや結衣に、メイドさんたち全員を含めて満足させてから来たというのに。
クララが俺に抱きつこうとしたところで、見知らぬ男が近付いて来たので、強引に止める。
「お客様。当マリーナへようこそ。船の購入をご検討でしょうか?」
「あぁ。そうなんだ。と言っても、船の知識が全く無いので、今日は大体の価格なんかを見に来ただけだが」
「承知致しました。ではご案内させていただきますので、どうぞこちらへ」
どうやら、留まっている船に売り物もあるようだ。
……って、クララはこの状況で諦めていないのか。とりあえず、俺の背後から抱きついて来たので、おんぶして……手が変な所に当たってしまった。
「――っ! アレックス様ぁ。指だけでは……」
「ん? お客様。奥様のお顔がかなり赤いようですが、大丈夫でしょうか?」
「あ、あぁ。妻は少し体調が悪いようだ。オススメの船はどれだろうか」
クララが自ら俺の手に押し付けてきて……いや、マジで何をしているんだよ。
頼むから、モゾモゾしながら耳を甘噛みしないでくれ。
そんな状態のまま歩きながら、男の質問に答えていく。
「お客様。失礼ながら、ご予算はいかほどでしょうか」
「予算……か。厳密には資産を管理している者と相談する事になるが……あぁ、白金貨三枚くらいなら大丈夫だそうだ」
予算の事を聞かれたところで、イースがメイリン経由でレナに確認してくれたのだろう。
こっそり耳打ちしてくれた。
「おぉ。白金貨三枚でしたら、十分です。どれを選んでいただいても大丈夫ですよ」
「なるほど。では、あれも買えるのだろうか」
「ははは、ご冗談を。お客様、あちらは外海へ出る為の巨大帆船です。個人で所有するようなものではございませんよ」
「ふむ。参考までに価格を教えてもらいたいのだが」
「あちらですと、白金貨ではなく黒金貨が必要で、国やギルドなどが所有するものです。当マリーナでも係留しているのみで、流石に販売はしていないのですよ」
なるほど。確か、白金貨が金貨百枚分で、黒金貨は白金貨百枚分だから……金貨一万枚か。
レイのポーションを売りまくったら届きそうな気もするが、あのポーションを必要以上に流通させたくないとも思う。……倫理的に。
ちなみに白金貨三枚だと、近場の海で釣りをしたりする、十人乗りの小型の船はどれでも買えるものの、それこそ別の大陸へ行く為の船となると、もっと大きな船でないと無理らしい。
「食料や水を積むスペースや、長期間海に居られるように寝室を設けたり……と、十人乗りの船でも、外海へ出るような船でしたら黒金貨とまでは言いませんが、白金貨が数十枚は必要となりますね」
「そうか、ありがとう。少し、財務担当の者と検討するよ」
「はい。では、またの起こしをお待ちしておりますね」
男に礼を言って屋敷へ戻る事に。
うーん。買うとしたら、外海へ行ける船となるが、それでも予算が全く足りないのか。
……ソフィなら船を造れないだろうか。あの魔導列車のように。
いや、流石にそれは無茶を言い過ぎか。それに、先程の船は動力が水魔法だと言っていたが、ソフィが魔導船といった物を作った場合、動力がソフィの魔力となる訳で。
それはつまり、俺のアレだから……で、出来れば避けたいな。
「アレックス様ぁ……お、お話は終わりましたよね? 私、アレックス様の指で……も、もう限界なんですーっ!」
「結衣も結衣もー!」
「待て! せめて家に帰ってから……って、いつの間に皆集まって居るんだっ!?」
プライベートビーチ――屋敷の敷地内へ戻って来たところでクララが俺から降りて全裸になり、何故か家に居る女性陣も集まっていて……俺は船の話をしたいんだーっ!
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