第295話 召喚魔法延期のお知らせ

 作業を一旦終え、昼食の為に家へ戻った所で、朝にタバサから言われた事を伝える。


「皆に話しておかなければならない事がある。先程、タバサ――冒険者ギルドの職員から連絡があり、召喚魔法で魔族領から帰してもらうのが延びたという話だ。すまない」


 皆に頭を下げると、この魔族領に一番早くから来てくれていたリディアが口を開く。


「あの、どうしてアレックスさんが謝るのですか?」

「いや、皆をそれぞれの家に帰してあげるのが遅くなってしまうだろ?」

「あぁ、それなら子供が生まれる前までに帰る事が出来れば良いかなと。それまでに両親とエルフの長老にアレックスさんを紹介したいですし」

「えーっと、リディアはエルフの森に帰りたいと言っていなかったか?」

「故郷に一度戻りたいとは思いますが、今の私の居場所は、アレックスさんのお傍ですよ」


 リディアのこの発言を皮切りに、


「ニナもー! ニナも、パパにお兄さんの事を紹介するー! けど、すぐに帰らなくても良いよー!」

「ボクもお兄ちゃんを、いつかお父さんに紹介するんだー! そして、結婚するのー!」

「フィーネも、お母さんを探してアレックス様を紹介したいです。で、フィーネは元よりお母さんを探す旅に出ようと思っていたから、フレイの街に戻れなくても大丈夫ですー。アレックス様のお傍に居られるのなら」


 ニナやノーラに、フィーネ……と皆がそれぞれ、帰れない事を気にするなと言ってくれた。

 そして、


「ま、まぁ私も、この子が生まれる前に帰れれば良いわよ。アレックスの事は両親もよく知っているし、結婚の報告さえ出来れば。あ、でも結婚式は挙げたいかな」

「わかった。俺も両親に話はしないといけないが、先ずはエリーのご両親だよな。またタバサから連絡があると思うから、いつ頃になるか、分かり次第教えてくれと言っておくよ」

「えっと、聞いた話では召喚魔法を使える賢者様が多忙との事です。皆さん、ご迷惑をおかけして、すみません」


 エリーも大丈夫だと言ってくれ、ティナがギルド職員として皆に謝罪する。

 まぁ冒険者ギルドとしても、ちゃんと賢者様とやらを呼んでくれていた訳で、落ち度がある訳じゃないんだがな。


「ステラは……大丈夫か?」

「は、はい。私自身は構わないのですが……その、アレックスさんとエリーさんがこちらへ来られた後、新たに組んだパーティメンバーが心配ですね。一時的にパーティを抜けるという話で来ていて、フレイの街で私の帰りを待ってくれているはずなので」

「なるほど。次回、タバサから連絡があった時にステラも会話に入り、その辺りの話をタバサとしようか」

「わ、私からもタバサさんに連絡しておきます」


 聞けば、ティナは持参しているマジックアイテムで、タバサと文通というか、文字でのやり取りが出来るらしい。

 とはいえ、ティナから送ってすぐに見て貰える訳ではなく、タバサが気付いたら見て返事をくれるという仕組みらしいが。


「……旦那様。旦那様は、いつか別の場所へ帰られてしまうのですか?」

「ん? いや、故郷へ一時的に帰ったり、フレイの街から行った方が皆を家に帰してあげ易い……という事で行く事はあるだろうが、ちゃんとここへ戻って来るぞ。メイリンの国の復興を手伝うと約束したからな」

「旦那様ーっ!」


 不安そうにしていたメイリンが抱きついてくると、近くに居たサクラたちやソフィも安堵した表情になる。

 あー、メイリンやソフィは、元々この辺りが故郷だもんな。


「なるほど。結婚式か! アレックス。なるべく早くスノーウィに国へ行く為の準備をさせるから、私の故郷で結婚式を挙げようではないか」

「あ、あぁ。それは構わないが、あまりスノーウィに無理をさせるなよ? かなり忙しいんだろ?」

「はっはっは。最優先事項だから、大丈夫だ。私とアレックスの結婚式以上に大事な事などないからな」


 いや、ネーヴは無茶を言わないであげて欲しい。

 スノーウィが忙し過ぎて倒れるぞ? かなり偉い人なんだろ?


「私も旦那様を天使族の村へ招待したいけど、遠いんだよー。だから、シェイリーさんに魔法陣を沢山作ってもらわないとね」

「そうだな。よく考えたら、シェイリーの魔法陣があれば、召喚魔法でなくても帰れるのか」

「そういう事ー! 確か、聖水が大量に居るっていう話だったから、お母さんたちに来てもらう? 天使族全員で聖水を提供すれば、結構な量になると思うよー」


 ユーディットの提案は良いアイディアなんだが、天使族が作る聖水ってアレだろ?

 天使族全員でアレを……ど、どうなんだろうな。


「そういう事でしたら、この私も協力致しましょう! ご主人様との結婚式を挙げるため、今すぐ聖水を……」

「さて。そろそろ、作業を再開しようか」

「ご主人様!? 聖水ですよ!? 私も聖水が作れるんですよーっ!?」


 モニカがスカートを捲り上げようとしてきたので、午後の作業を頑張る事に。

 とりあえず、ノーラやティナが居る前で変な事をしないでくれよ。

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