第550話 本来は怖い海獺族の少女

「アレックスの本気……凄かった」

「お兄さんの、とっても美味しかったー!」

「アレックス様。昨晩の……またお願い出来ますか?」


 気絶していたレヴィア、プルムに、海獺族の少女たちが起きてきた。

 ミオは……朝まで頑張っていたからか、まだ起きそうに無い。

 玄武を早く助けなければならないし、ミオは寝かせてあげたいので、今いるメンバーで進む事にしようか。


「天后、転移を頼めるか?」

「えぇ。今はアレックスのおかげで魔力が有り余っている程だもの。任せて!」


 船に移動すると、レヴィアとラヴィニアに、プルムとユーリ、五人の海獺族の少女たちを乗せ、天后のスキルでティーウィーへ戻って来た。


「みんな、来てーっ! 昨日見た船が、いきなり現れたよーっ!」

「本当だっ! この船が神隠しの犯人かっ!」

「おい、族長を呼んで来てくれ! あと、行方不明になっている五人の子供たちの親もだ!」


 マズい。昨日は夕食を一緒に済ませたら、海獺族の少女たちを帰すつもりだったのだが、俺が意識を失ってしまったが為に、神隠し騒ぎになっているのか!

 しかも、更にマズいのが、先程聞こえて来た、この海獺族の少女たちが子供だという声だ。

 これは、謝って済む問題ではないが……とにかく、海獺族の少女たちと、その家族に謝ろう。


「待ってくれ! 俺の名はアレックス! この度は本当に申し訳な……」

「あーっ! お父さーん! あのねあのねー、アレックスさんが凄いのーっ!」

「トゥーリア! 良かった……無事だったのか。お父さんもお母さんも、物凄く心配したんだぞ」


 先ずは、この海獺族の少女たちの親御さんに謝ろうとしたのだが、トゥーリアと呼ばれた少女が大きな声と共に駆け出し、父親の許へ。

 父娘との再会を邪魔してはいけないと思い、少し待っていると、


「あのね、お父さん。私、アレックス様のお嫁さんになるのっ!」

「……もしかして、姿が見えなくなっていたお友達を含め、全員あの人間族の男と一緒に居たのか?」

「うん! アレックス様は凄いんだよー! 気持ち良すぎて、何度も気絶しちゃったー!」

「……なるほど。やはりそういう事か。トゥーリア。お前はお友達と一緒に、あのアレックスという人間族の男と夜を過ごしたのだな?」

「そうだよー!」

「……男は、あの彼一人か?」

「うん! 私の旦那様なのー!」


 トゥーリアが昨日起こった事を正直に話すと、父親がキッと俺を睨んできた。

 いくら意識がなくとも、トゥーリアが話した事は事実だ。

 誠心誠意謝り、父親が俺を殴るというのなら、甘んじて受けよう。そして、責任を取る。

 ズカズカと肩で風を切りながら父親が近付いてくると、


「アレックス君と言ったかね。私の娘、トゥーリアとその友人たち――海獺族の少女と夜を共にしたのだな?」


 ジッと俺を見つめながら、口を開く。


「えぇ。これについては、責任を……」

「君ぃっ! 何て事をしたんだっ! 幸い無事だったから良かったものの、複数の海獺族の女と一人で過ごすなんて自殺行為だぞっ!? いくら若いからと言って、無謀過ぎるっ!」

「……はい? あの、話が見えないのですが……怒っているんですよね?」

「もちろんだ! トゥーリアは、親の贔屓目なしに見ても可愛い。成人したばかりでまだ十四歳だが、それでも海獺族の女には違いない! 山の兎耳族、海の海獺族と言って、女が最強の性欲を持つ二大種族と言われているのに、男一人で立ち向かうなんて!」


 んん? トゥーリアの父親が何の話をしているのかが見えない。

 とりあえず、父親は怒ってはいるが、その理由が娘であるトゥーリアとそういう関係になった事ではなく、男が俺一人しか居ないのに、複数の海獺族の少女と夜を過ごした事に怒っているそうだ。


「当たり前だろう! 我々海獺族は女性の性欲が強過ぎて、男性一人では枯れ果ててしまうから、一妻多夫制の種族だ。その上、体液に催淫効果があるから、必ず一人の女性に複数の男性が一緒でないと危険なんだ! 君はまだ若い。トゥーリアが魅力的なのは分かるが、命を粗末にしてはならん!」

「あの、トゥーリアと夜を過ごしてしまったので、謝罪を……」

「は? 何故謝罪なんだ? それに関してはむしろ感謝したいくらいなのだが。海獺族の女は、初めての時が一番危険だからな。生まれてから一度も発散していないから、初めての時が最も催淫効果が強く、下手をすれば死人が出るからな。男に」

「そ、そうなんですか」

「うむ。それなのに初めての海獺族の少女を一度に五人も……改めて考えると、アレックス君は凄いな!」


 殴られる覚悟で父親と会話したのだが、何故か心配された上に、感心までされてしまった。

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