第549話 意識が無かったアレックス

「……ここは?」


 俺は海獺族の少女たちと共に、アマゾネスの村で夕食を食べていた……はずだった。

 だが、気付いた時には夜が明けかけていて、大半の者が幸せそうな穏やかな顔で、ぐっすり眠っている。

 起きているのは、俺の上に居るレヴィアに、ミオと結衣、プルムくらいだろうか。


「アレックス様、しゅごーい!」


 違った。レヴィア並みに激しい海獺族の少女が二人ほど起きている。

 一人は俺の分身と。

 もう一人は、レヴィアが上に居る俺の隣で横になっていたのだが、上半身を起こして唇を重ねてくる。


「えへへ、アレックスさん。起きたねー。またさっきみたいな、凄いの……お願い」

「あっ! もうっ! 今はレヴィアたんの番……んっ! でも、アレックスが凄くなったから許す」


 どういう訳か、海獺族の少女に唾液を飲まされると、既に熱くなっている身体が、更に熱を帯びる。


「おほぉっ! またアレックスが獣モードになったのじゃ! 先程は気絶させられたが、今度は我も本気を出すのじゃっ!」

「ご、ご主人様。な、何かが壊れ……結衣も獣になっちゃいますぅー!」

「えぇっ!? いまのプルムはちっちゃいから、さっきみたいに、おなかがボコって……んひぃぃぃっ!」


 ミオの身体が大きくなったり、結衣の瞳が妖しく光ったり、分裂後の小さなプルムが大変な事になっていた気がするのだが、それも一瞬の事で……次に気付いた時には、完全に太陽が昇っていた。


「一体、何が起こったんだ?」

「アレックスさん。いくら天后さんの加護があるからって、あんなに激しいのはダメですよ? まぁその……凄く良かったので、時々なら、良いですけど」

「そうだぞ。昨日ので、村の者が何人妊娠したのやら。チェルシーまで妊娠してしまったら、誰を次の族長にすれば良いのだ」


 目が覚めて上半身だけ起こしたのだが、俺の腰や脚に抱きつくようにしてレヴィアや海獺族の少女たちが眠っていて、隣に居るリディアとサマンサが口を尖らせる。


「ふ……ふふふ。我は耐えたのじゃ。ラージ・アバロンと、海獺族の少女による催淫効果で獣となったアレックスに。一度は気を失ったが、本気を出せば……のじゃ」


 分身と一緒に居たミオがパタッと倒れ、もう誰も動く者は居ない……いや、一人居るな。

 俺の分身を三人同時に……って、これは結衣か?


――MMMM! AHHHHH!


 咆哮のような、物凄く大きな声が聞こえて来たのだが、大丈夫か?

 視点を分身に切り替えると、結衣がぐったりしているので、俺の所へ運び、分身を解除する。

 眠っている結衣を抱きかかえながら、


「……一体何があったんだ?」


 改めてリディアに聞いてみたのだが、優しく微笑んでキスをしてきただけで、何も教えてくれなかった。

 それから、レヴィアや結衣たちを寝室へ運び、かなり遅めの朝食をいただいたのだが、


「あの貝はもう手に入らないのかな?」

「誰か泳ぎが得意な人は居ない?」

「待って。あの海獺族の少女たちが目覚めたら、ワンチャン……」


 何故か周囲に居るアマゾネスの女性たちが、ヒソヒソと何かを話している。

 何を話しているかは聞こえないが、何となく視線を感じる中で、俺の膝の上に文字通り天使が――ユーリがやって来た。


「パパー! きのうは、すごかったねー!」

「ユーリ。昨日の事を知っているのか?」

「うん! パパがねー、すごかったのー!」

「凄いって、何が?」

「ナニっていわれると、むずかしいけど……あ、ちょっとまってー! あのねー、メイリンママからの伝言でねー、『きのうは、おたのしみだったようですね。こちらには、いつきてくれるのでしょうか?』だってー!」


 しまった!

 意識を失っていたので、当然と言えば当然だが、逢瀬スキルを使っていない!

 これは、メイリンだけでなく、エリーたちも怒っているな。


「あとねー、かくちにいる、みんなをつうじて、メイリンママに、じきそがあったらしいよー。いろんなひとからー」

「直訴? 誰から、どういう内容なんだ?」

「えっとー、カスミとかー、ネーヴとかー、クララ、マミ、ジュリ、ブリジット、グレイス……とにかくいっぱい、パパにあいにきてーって!」

「お、おぅ。そうだな。早く玄武を見つけて戻らないとな」


 魔族領には逢瀬スキルで行けるが、シーナ国に居る者の所には行く術がないからな。

 とりあえず、急いで……急いで玄武を助けなければ!

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