第699話 ディアナの故郷
豹耳族の男性がディアナが奴隷にされた後の事を放してくれたのだが……普段は単独で行動していて群れない虎耳族が、何故か徒党を組んで村へ攻めてきたらしい。
そして、食料と女性を奪って行ったと。
だが、女性全員が捕まった訳ではなかったのだが、数か月前に忽然と女性が全員姿を消してしまったそうだ。
「それってつまり、ウチのママも行方不明って事なの!?」
「……残念ながら」
「そ、そんな……」
ディアナが落胆し、今にも泣きだしそうな表情で、俺にしがみ付いて来た。
掛ける声も見つからず、ひとまず好きにさせてあげようと思う。
しかし女性が全員姿を消すなんて、俺たちを襲ってきた豚耳族の獣人の村みたいだな。
「一つ教えて欲しいんだが、虎耳族に襲われてから女性たちが姿を消したのは、そんなに期間が経っていないのか?」
「いや、少なくとも数か月は経過しているし、虎耳族が来たのは一度切りだから、女性が消えたのとは無関係ではないかと思っている」
「そうか」
「豹耳族も虎耳族もそうだが、獣人は女性も立派な戦士だ。もしも虎耳族が女性を消すなんて事が出来るなら、村を襲う前に実行しているだろう」
なるほど。言われてみれば確かにそうだ。
だが、女性だけが消えるというのは一体何なのだろうか。
そういう意味では、ディアナは虎耳族に囚われてこの村を離れていたから、消えずに済んだとも言えるが。
「そ、そうだ! パパは!? ウチのパパを知らない!? そこの先にある家に住んでいたんだけど」
「あー……あの辺りは、女性が消えた事を虎耳族が犯人だと思っている人が多く住んでいるな。おそらくディアナちゃんのお父さんは、女性を取り戻すべく虎耳族の棲家を探しているはずだ。何でも、以前に虎耳族の村があった場所は無人の廃墟になっているらしくて」
この村を襲った虎耳族の村も廃墟になっているのか。
一体何があったのだろうか。
虎耳族の村が何かに襲われ、住む所や食料を失ったから、豹耳族の村を襲ったのか?
だが村が廃墟になった事が、この村を襲う理由だったとしたら、この村の家を奪い、代わりにここへ住もうとするはずだ。
だったら、別の場所に村がある……のか?
考えてもサッパリ分からず、どうしたものかと思っていると、豹耳族の男性が口を開く。
「ところでディアナちゃんは、この村に帰ってくるんだよね?」
「え……」
「村が大変な状態だから、少しでも人手が欲しいというのが本音ではあるんだ」
「に、にーに。ど、どうしよう」
ディアナが困った表情を浮かべて、俺を見上げてくる。
俺としては、家族が居るのであれば、ディアナを村へ帰してあげたいが、今の状況でディアナを村へ帰すと……危険な事にならないだろうか。
あの豚耳族の村のように。
「ディアナはどうしたい? 俺としては、ディアナを家族の許へ帰してあげたいと思っている。だが、今その家族が居ないというのであれば、暫くこれまで通り俺たちと一緒に来るというのも良いだろう」
「ホントっ!? じゃあ、ウチはにーにと一緒に居るっ!」
ディアナが即決で俺たちと行動を共にすると答えたのだが、豹耳族の男性が待ったをかけてくる。
「だが、ディアナちゃんはこの村の出身だろ? この村の復興を手伝おうと思わないのかい?」
「……待ってくれ。貴方の言い分は分かるが、どうして今なんだ? さっきの話では、村が襲われたのは半年前だという話だった。だが、未だに本格的な復興作業を始めていないように見えるんだが」
「人手が無かったからだよ。一人増えれば、出来る事だってあるだろう」
「ディアナも家が壊れている可能性があり、家族が居ないのにか? ……ディアナに身の危険を感じるから、父親が戻って来るまで、俺たちが預かるよ」
「……で、では、この村はこのままなのか? ディアナだって、故郷がボロボロのままは嫌だろう? 復興作業を手伝いたいよな?」
男性がディアナに詰め寄り始めたので、俺の背中に隠し、
「わかった。では俺が復興作業を手伝おう……≪分身≫」
あまり長居は出来ないが、村の復興作業を手伝う事にした。
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