第883話 ザガリーの別荘その三
ひとまず一人で中へ入ると、一つ目の別荘と同じ様に廊下を歩いている女性の口を塞いで物陰へ。
「――っ!?」
「すまない。俺はこの施設を調査している者だ。協力して欲しい」
「……」
「わかったら頷いてくれ。そうすれば、手を離す」
一つめの別荘とほぼ同じ事を言い、女性が頷いたのを確認して手を離すと、
「し、仕方ありませんね。私の身体を好きになさってください」
何故か女性が服を脱ぎだした。
「な、何をやっているんだ!? 俺は話を聞きたいだけで……」
「はい。ここでは、身体は口ほどに物を言う……という格言がありまして、真に語らうのであれば、肉体と肉体でぶつかれと教わっております」
「……って、待った! 不要だ! とりあえず、ここが何をしている場所なのかを教えて欲しいだけだ」
「先程も申しましたが、知りたければ私と本気でぶつかってください。そうすれば、自ずとわかるでしょう」
いや、わからんよっ!
みたところ、十八か九くらいに見える女性だが……あぁぁ、全裸になるなっ!
ただ、幸いな事に太陰の力で俺の姿は見えていない様子なので、気配を絶ってゆっくりと離れると……よし、気付いていない。
今となっては誰も居ない場所で女性が一人四つん這いになり、尻を振っているが……一体、何を考えているんだ?
先程の場所から離れ、念の為階層も変えて、二階へ。
「……変わった形の建物だな」
中庭を囲うようにして、建物が正方形の形をしており、内側が廊下で外側が部屋になっている。
各部屋にはガラス窓が付いていて、廊下から部屋の中が丸見えだし、廊下の内側も窓ガラスで中庭が廊下から覗けるという構造だ。
そこまではまだ良いとして……ここで、誰かに話を聞きたいのだが、なかなかに理解し難い状況になっている。
というのも、一階と違って二階には少女が大勢いるのだが、何故か全員全裸で歩いていた。
「ふゎー、今日の訓練も大変だったねー」
「自室に戻っても自主練しないといけないし、身体がもたないよー!」
「そうだよねー。早く妊娠すれば良いのに。子供が出来たら、訓練は免除だしさー」
「でも、それは生まれた子が女の子だった場合だけでしょ? 男の子だったら、そうはならないし」
……どういう事だ?
何か、とてつもない話を聞いた気がする。
もう少し詳しく話を聞きたいが、流石にここは人が多過ぎるし、二人組を静かに物陰へ連れて行くのは無理だ。
今となってはフョークラに来てもらった方がスムーズだったと思うが、ないものねだりをしても仕方がない。
さっきの少女が一人になるのを待つ為、暫く後ろをついて歩いていると、暫くして突然後ろを振り向く。
気付かれたっ!? しまった! まだ十三歳くらいだと思っていたが、既に成人でジョブを授かっていたのか!
シーフなどのジョブであれば、姿が見えなくても気配で気付いたりする事も出来てしまう!
「わぁっ! どうして、ここに男の人が居るのっ!?」
「凄い……凄くがっしりしていて、男前だっ!」
「ねぇねぇ、お兄さんっ! 子供……作ろっ!」
って、おい。何を言い出すんだ!?
というか、どうして俺の体格まで……何のスキルを持っているんだ!?
「ん? えぇーっ! 男の人が居るーっ! 私もっ! 私もしたーいっ!」
「いつも、女の子同士で練習ばっかりだもんねー! 初めての実践、私もするーっ!」
「きゃーっ! 男の人だーっ! 触らせてーっ!」
な、何なんだ!? というか、少女が大勢集まって来て、ペタペタ触ってくるんだが……って、まさか、太陰の姿を消す効果が切れたのかっ!?
「すまない。≪閉鎖≫」
「えっ!? 待って! 触れないんだけどっ! 本物……本物を触らせてよーっ!」
「少ししたら、その結界は解除する。許してくれ」
近くに居る少女たちを結界スキルで封じると、廊下側の窓から外へ。
廊下から視線を感じつつ、急いで建物の一階へ戻ると、
「侵入者です。女子生徒は速やかに自室か教室へ隠れてください! 繰り返します。侵入者です! 女子生徒は速やかに自室か教室へ隠れてください!」
風魔法を使った仕組みなのだろうか。
女性の声が、建物中に響き渡った。
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