第947話 打ち合わせ

 ハヤアキツヒメの事を聞きたかったが、絶対に式が先だとネーヴが折れず、結婚式を挙げる約束をしているなら仕方がないと、レヴィアもネーヴ側についてしまった。

 なので、ひとまず結婚式の打合せを進める事になり、スノーウィが進行を務める。


「まず、スノーホワイトは何処で式を挙げるつもりなんだ? まさか王宮で……」

「王宮? そんな物、私に何の関係も無いだろう。この国で結婚式といえば、精霊の祠に決まっているだろう」

「せ……精霊の祠だなんて、王宮以上に難しい場所じゃないかっ!」

「そこはスノーウィが何とかしてくれ。宰相なんだから出来るだろ」


 ネーヴの言葉で、スノーウィとスノードロップが頭を抱えてしまったが、精霊の祠とは何なのだろうか。

 俺の表情に気付いたのか、ネーヴが説明を始める。


「アレックスに説明しておくと、精霊の祠には雪の大精霊がいて、そこで愛を誓うと子宝に恵まれ、家内安全、商売繁盛、おまけに健康成就というご利益まであって、一生幸せになると言われているんだ」

「そ、そうか。何だか凄い効果があるんだな」

「とはいえ、大精霊がいるのは本当だが、ご利益はそういった伝説が残されているだけで、効果があったかどうかは本人がどう思うか次第だと思うがな」


 ネーヴは伝説に過ぎないと言うものの、絶対に譲れないと口にしているので、どういう難しさがあるのかは知らないが、スノーウィに頑張ってもらう……で良いのか?


「スノーウィ。その祠が難しいというのは?」

「その祠自体を使う事は問題無いんです。大精霊様のお住まいで、誰の物でもなく、国の管理地ですし。ですが、その周囲一帯が、スノーホワイトの敵対勢力の領地でして」


 なるほど。その祠まで移動するのが大変なのか。


「まったく。私が宰相をしていたのは、どれだけ前の事だと思っているのだ。古い話をいつまでも引きずって」

「スノーホワイトが敵対勢力を徹底的に潰そうとしたからだろう」

「うむ。少し情けをかけて、消滅までさせなかったのが誤りだったな」


 まぁその、過去に何があったかは聞かないでおこう。

 いずれにせよ、一番の問題がわかったな。


「あと、来賓の方や披露宴は……」

「それこそどうにでもなるだろう。私はアレックスと精霊の祠で結婚の儀を行えれば良いのだ。披露宴など何処でも良いし、何なら無くても良い。参加者も私の方は両親とスノーウィが出てくれれば十分だ」

「なるほど。アレックス様の方は?」


 スノーウィに話を振られ……どうしたものかと考える。

 言われてみれば、今までの結婚式も俺の両親を呼んだ事はなかったな。

 というか、呼ぶ事も出来ないのだが。


「ここへ来た時のように、俺の両親を召喚魔法で呼ぶ事が出来るのだろうか?」

「対象となる方の魔力が判明しているか、魔法陣などで魔力的な位置が特定出来ていれば可能ですね」

「魔力は……俺にはよくわからないのと、エリーは両親に会った事があるが、他人の魔力を伝えるなんて出来るのか?」

「エリーさんが、魔法に長けた種族……エルフなどでしたら、まだ可能性はありますが、それでも難しいかと」

「そうか……あっ! 俺の故郷である、フレイの街に転送の魔法陣があるんだが、それはどうだろうか。転送先の場所になら案内出来るが」


 第四魔族領まで来てもらえれば、最初の小屋に案内出来る。

 あそこは通話魔法とか、色々とやり取りしているから、何とかならないだろうか。


「うーん。双方向に行き来できるなら大丈夫かもしれませんが……」

「いや、一方通行だな」

「それだと難しいかもです。しかも、人間族の魔力は微弱で、我々の魔法と系統が違いそうですし」

「そうか。であれば、ここにいるレヴィアとユーリが参加者かな」


 エリーたちを呼ぼうにも、妊娠しているから、召喚魔法でどのような影響があるかわからないしな。


「ご主人様っ! 結衣たちもおりますよっ!」

「莉子も莉子もー!」

「美月もアレックス様のお側に……っ!?」


 俺の影から結衣たち三人が現れたのだが、レヴィアとユーリが食べている甘味に気付いて目が釘付けになる。

 ……うん。すまないが追加で注文を頼む。

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