第547話 いっぱい食べる海獺族
「うわぁー! すごーい! これ、食べて良いの!?」
「ちょっと待ってくれ。サマンサに確認してくるから」
リディアは五人くらい増えても大丈夫だと言っていたが、ここはアマゾネスの村だ。
事故に近いが、別の村の者がいきなり現れて、同じ場所で食事をして良いのか、しきたりや習慣がわからないからな。
今すぐテーブルに置かれた物を食べそうな勢いの海獺族の少女たちを連れ、奥の個室に居るサマンサの許へ。
「サマンサ。ちょっと良いだろうか」
「アレックスー! いや、あなた。おかえりなさい」
「あぁ、ただいま。……って、待ってくれ。まず、話したい事が……」
個室に入った途端、後ろに少女たちが居るというのに、そんな事お構いなしにサマンサが抱きついて来て、キスをしてきた。
リディア……は、貝に夢中だったか。だが、誰かしらからか、客人が居ると族長であるサマンサに報告が入りそうなものなのだが。
「どーして、口と口をぶつけたんだろ?」
「お兄さんの口を食べる気だったのかな?」
「でも、ウチのお父さんとお母さんも、あんな事をしてた事があったよー?」
後ろから少女たちの声が聞こえて来たが、思いっきり見られていたな。
というか、容姿こそ十代半ばに見えるが、やっぱり子供なのかもしれない。
少女たちの感じからして食事をお預けには出来ないだろうから、その後のいつものアレが始まる前に、天后に頼んで転移して島へ帰さないとな。
「サマンサ。後ろの少女たちなんだが……」
「ふふっ、報告は受けているよ。アレックスの新たな妻だろ? もちろん、仲間として受け入れるさ」
「いや、妻ではないんだ。成り行きで、この村へ連れて来る事になってしまって……」
「はいはい。細かい事は良いから、それより食事にしよう。皆も、後ろの少女たちもが待ちきれないと言った様子だしな」
サマンサに軽く流されてしまったが、この少女たちは本当に俺の妻ではないんだ。
改めてそう伝えたが、聞く耳を持って貰えないまま、ジェシカがやって来た。
「アレックス様、おかえりなさい。いつもは、私とリディアさんがアレックス様の両隣に座りますが、今日は歓迎の意を示す為、そちらの女性たちにお譲りしますね」
「……あー、うん。頼む」
「では、皆様。こちらへどうぞ」
いきなり知らないところへ連れて来られて、知らない人たちと食事をするよりかは、まだ俺と食事の方がマシではないかと思ったのだが……うん。今となっては関係なかったな。
席について、食事が始まると同時に、五人の少女たちが凄い勢いで食べ始めたし。
「これも美味しい! こっちも美味しい! どれを食べても美味しーい!」
「これは……へぇー! この料理は? ……なるほど。そっちのは? ……全部美味しいっ!」
「……んっ! お、お水を……! あ、危ない。美味しい料理を一気に食べちゃって、死ぬかと思った」
しかし、海獺族の少女たちは、物凄く食べるんだな。
海獺族がよく食べる種族なのか? それとも、普段が食料不足……いや、栄養失調とかって感じではないし、出るところがしっかり出ている健康的な女性らしい体型なので、それはないか。
「アレックスさん。この方たち、物凄く食べられますね」
「そ、そうだな。すまない。大丈夫だろうか?」
「いえ、全て美味しそうに食べてくださるので、私も本日の料理当番のアマゾネスの方たちも、作り甲斐があります。どんどん召し上がっていただければと。あ、それから、こちらのラージ・アバロンは是非アレックスさんが食べてください」
そう言って、リディアが大きな貝料理を置いて、調理場へ戻って行った。
せっかく作ってくれたので、一口大にカットされた貝を口に……
「おぉ! これは旨いな。焼いたのか」
「ん? あ、リンゴのお礼にあげた貝だね! へぇー、こんな風に調理するのは初めて見たー! ……食べても良いー?」
「あぁ、もちろん。君たちが採って来てくれた貝だからね」
「じゃあ、遠慮なく……美味しいっ! 皆も食べてみてー! いつもの貝が、全然違う味だよー!」
リディアが作ってくれた貝料理は、かなりの大きさだったのだが、海獺族の少女たち五人も食べたので、あっという間に無くなってしまった。
「あ、お兄さんの料理だったのに! ご、ごめんね。はい、これ! あーん!」
「え? あ、ありがとう」
海獺族の少女の一人が、フォークに残っていた最後の一つを俺に食べさせてくれた。
……って、気付いたらレヴィアにジト目で見られている。
あー、レヴィアのご褒美の事をすっかり忘れてしまっていた。
これは後で謝らないと……と思っていると、突然身体が熱くなってきた。
ど、どういう事だ!? これは、レイに精力剤を飲まされた時の感覚……ま、まさかリディア。何か料理に盛ったのかぁぁぁっ!?
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