第748話 ドワーフカフェでの出来事

 ニナがドワーフのお爺さんに礼を言って、二人で採掘用の穴の出口へ向かう。


「ニナ。さっき言っていたドワーフの道って何なんだ?」

「うーんとね。ニナは一度しか乗った事がないんだけど、普通に走るよりも速くて、大きな荷物を一度に運べる道があるんだー」

「……馬車みたいなものなのか?」

「そうだねー。ちょっと……結構違うけど、そんな感じかなー?」


 ニナが言っているのは、馬車に近いのか遠いのか、一体どっちなのだろうか。

 ただ、いずれにせよ何らかの乗り物なのかもしれないな。

 それに乗って、素早く移動出来るというのであれば、第二魔族領捜索にも役立ちそうだし、ニナを故郷に連れて行く事も出来るし、一石二鳥だな。

 そんな事を考えながら穴から出ると、先程の大通りに戻って来た。


「さて、ガブリエラが言っていたカフェはどこだろうか」

「んー、そう言えばさっき聞き込みをしている時に、カフェで話を聞いてみたら? って言われたんだよねー。確か、向こうだったかなー?」


 ニナが見覚えがあるというので、そのままついて行くと、カップの描かれた看板を見つけた。

 外観は看板を除けば他の横穴と同じ……というか、全ての横穴がほぼ同じなので、この看板を目印にするしかないのだが、ニナと中へ入ってみると、


「いらっしゃいませー!」


 中は広く、エプロン姿のドワーフの女性が声を掛けてくる。


「すまない。獣人族と人間の女性たちが来ていないだろうか」

「あ! もしかして、アレックスちゃんかな? 奥でママが待っているわよー」


 ……ママ?

 いや、確かに今は子供の姿だが……まぁ俺がドワーフの女性が全員ニナと同い年くらいに見えるのと同じ感じで、ドワーフからすると人間族の顔の判別かつかずに、親子だと思ってしまったのかもしれないな。

 一緒に来ている人間の成人女性は、モニカとグレイスだが、どちらも髪色からして違うのだが……果たして先程の女性はどちらの事を言っていたのだろうか。

 店員さんに案内され、奥の部屋へ向かうと、八人掛けの石のテーブルと椅子があり、


「あーっ! アレックスちゃーん! やっと来たー! 遅いれすよー!」

「え……グレイス? 顔が真っ赤なんだが。大丈夫か?」

「アレックスさん……すみません。グレイスさんが頼んだ飲み物がアルコールだったようで、酔ってしまっています」


 顔を真っ赤にしながら立ち上がったグレイスが、ゆっくりと俺に向かって来て、それを見たガブリエラが頭を下げる。

 なるほど。よく考えたら、この中で神聖魔法を使えるのが俺しかいないのか。

 とりあえず、酔っているだけなら状態異常の回復魔法で治るからな。

 すぐに治し……てっ!?


「さぁアレックスちゃん。ママのミルクを飲みまちょうねー!」

「んぐっ!? ぐ、グレイス!?」

「ぐ、グレイス殿っ! まさかの赤ちゃんプレイ……それなら私も! 私もご主人様に飲んでもらいたいですっ!」


 酔ったグレイスが、元ローグの素早さを突然発揮し、凄い速さで胸を俺の口に押し付けて来た!?

 口を塞がれては、治癒魔法が使えない!

 というか、モニカまで大きな胸を押し付けてきて……いや、グレイスを止めてくれよ!


「ほほう。二人が自身のミルクをアレックスに飲ませるというのであれば、我はアレックスのミルクを飲ませてもらうのじゃ」

「えっ!? 皆さん、何を……わ、わぁ! 子供の姿になっても、そこは元の大きさのままなんですか?」

「ふふっ、違うのじゃ。本来のアレックスはもっと凄いのじゃ。こんなものではない……んっ!」

「えぇっ!? ミオさん!? その小さな身体で、そんなに大きいのが……す、凄い!」


 待った!

 二人に押し倒され、顔に胸が押し付けられて見えないが、この感触と声からして……ミオは何をしているんだよっ!

 奥の個室とはいえ、ドワーフのカフェの中なんだぞ!?


「やれやれ。こうなってはもう止められないだろう。闇で覆っておくから、ミオは結界で人払いと音が漏れないようにしてくれ」

「ふっふっふ。安心するのじゃ。もうとっくに結界は張ってあるのじゃ。という訳でアレックスよ。早く分身するのじゃ」

「えっと、わ、私も参加しても良い……ですよね?」


 ザシャとミオとガブリエラが何か話しているが……こんな事をしている場合ではないんだぁぁぁっ!

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