第79話 それぞれ仕事を見つける人形たち
翌朝。リビングへ行くと、テーブルに沢山の料理が用意されていた。
「リディア、凄い! 何か良い事でもあったの? 朝から、すっごい御馳走だね」
「え? あ、あはは……その、今朝は早くから目が覚めて時間があったから」
沢山の料理を前にニナが喜んでいるけど、すまない。
これは、その……朝から頑張ったから、リディアがご機嫌というか、ご褒美というか、分かり易く行動に出てしまったんだ。
というのも、昨日俺たちが風呂から出たら、既にフィーネがスキルを使って皆を眠らせていた。
なので、俺とフィーネとリディアで小さな寝室へ行き、寝る前と朝に風呂の続きをしたから……まぁそういう事だ。
そんな訳で、いつもより量が多い朝食を食べて居ると、
「最近どういう訳か、寝室に入ると、すぐに眠ってしまうのだが……一体、何故だろうか」
モニカが首を傾げる。
昨晩のリディアは、皆が揃って眠っている事を特に何も思わなかったみたいだが……というか、リディアはリディアで風呂の続きの事で頭が一杯だったのかもしれないな。
一先ず、モニカの疑問をスルーしながら食事を終えると、昨日新たに誕生した六体の人形たちの為に、今日も家を追加で建てる事に。
木を使いまくっているが、昨日シェイリーが送ってくれた時に、森を広げてくれていたし、木材については大丈夫だろう。
昨日と同様に、午前中は新たな家作りをする事にして、皆で小屋の近くへ移動すると、
「お母さん。おはようございます」
「お母さん、おはよー!」
五組目となる人形――俺とエリーの子供の姿をした、アレファイとエルが現れた。
だが、昨日見た一組目の人形モニーたちのように、小さな子供は一緒ではない。
「あ、あら? 私の姿の人形とは子供が出来て居ないの?」
「子供? 何の事ですか?」
「えーっと、な、何でもないの。気にしないで」
エリーが何故か残念そうにしながら、小屋の入り口へ行き、
「え? 三組とも子供が生まれて居ない? どうして? 昨日は四組とも子供が生まれていたのに」
不思議そうに声をあげる。
どうやら、小屋に居た三組の人形たちは、一人も子供を産んで居ないようだ。
まぁ子供は神様からの授かりものというか、子作りをすれば必ず出来る訳でもないだろうし、人形といえども、そこは同じなのではないだろうか。
そもそも、そういう事をしていないかもしれないしな。
……昨日は四組とも子供が生まれていてビックリしたけどさ。
「お母さん。おはようございます。今日は何をすればよいですか?」
「母上、おはようございます」
「めいりんママ、おはよー!」
その一方で、東エリアの人形たちの家から、一組目のモニーたちが出て来て、挨拶してきた。
流石に、二人目の子供が生まれたりはしていないようだ。
その後も、東エリアのそれぞれの家に住む人形たちが出て来たけれど、やはり子供は増えて居ない。
二日前に生み出された四組の人形たちと、その子供四人、昨日生まれた三組の人形たちで、合わせて十八人と、それなりの大所帯だし、人形たちも増え過ぎないように考えているのだろうか。
「よし。皆……すまないが今日も家作りと、畑の拡張を頼む」
昨日と同じように東エリアの壁を拡張し、木を切って小屋を造ってもらい、余った木で小物を作る。
人数が増えた分、畑も増やし、人形たちが作物を生やし、大きく育てて収穫していく。
食料の消費も増えたけど、それ以上に労働力が増えたので、食料事情としては安定している。
それどころか、俺の人形が全員土の精霊魔法を使えるので、作物が余ってしまう程だ。
新たに作物を増やせるのは、木の精霊魔法が使えるリディアとリディアの人形しか居ないのは変わりないが、やはり精霊魔法は凄いな。
そんな事を考えていると、
「ママ、見てー! ニアね、こんなの作れたー!」
ニナの人形ニアが鉄の短剣を作り、メイリンへ嬉しそうに見せている。
メイリンがニアを褒めた後、
「旦那様。この短剣は妾の子たちに持たせても宜しいですか?」
「そうだな。壁の外側には魔物も出るし、万が一の事を考えて、武器はあった方が良いだろうな」
その短剣は、ニアと一緒の家で暮らすアレフォが持つ事に。
ニアが初めて作った武器だからな。
やはり、その夫……というか、一緒に暮らす者に使ってもらいたいだろう。
「あ、あの……お母さん。ニアに包丁を作ってもらっても良いですか?」
「うむ。その辺りは臨機応変にやるが良い……で、良いですよね? 旦那様」
「あぁ、もちろん。あと、メイリンも俺の意見を聞かなくても、自分が良いと思った事は、して良いからな?」
メイリンが、やたらと俺に確認をとるようになったけど、危ない事でなければ、反対したりはしないんだが。
「お兄ちゃん。メイリンさんとくっつき過ぎーっ!」
「いや、ノーラは抱っこしてるだろ」
「んー。何ていうか、メイリンさんの態度が違い過ぎるもん!」
何かを感じたのか、ノーラが俺に強くしがみ付き、かなり長めのキスをされてしまった。
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