第80話 人形たちへの英才教育?

「待てよ。剣か……ご主人様。人形たちに戦い方を教えるというのは、どうでしょうか」

「え? 戦い方!? 子供なのに?」

「でも、私たちのスキルを使えるんですよね? シャドウ・ウルフは無理だとしても、洞窟のサソリくらいなら倒せるのではないでしょうか」


 四組目の人形となるニアが作った短剣を見て、モニカが人形たちを地下洞窟へ連れて行くと言い出した。


「いや、いくらスキルが使えると言っても、子供だからな。余り乗り気はしないな」

「しかし、ご主人様。現状、洞窟探索が私とエリー殿の二人しか居ない為、万が一の事を考え、洞窟の奥にまで進めて居ないという事実があります。パーティを組めば、もっと洞窟の奥まで探索可能となりますが」

「確かにそうかもしれないが、万が一という事もある」

「では、一先ず人形たちの戦闘能力を見てみましょう」

「……分かった」


 一先ず、俺とモニカ、エリーとメイリンが残り、他のメンバーはそれぞれ自分の作業をするために、移動する。

 人形は、ニアと短剣を貰ったアレフォと、その子供。あと、エリーの人形であるエルが残り、他の人形たちはそれぞれの仕事に取り掛かった。


「先ずは、≪ディボーション≫……これで、誰も怪我をしないぞ」


 先ずはモニカとアレフォが戦うみたいんなので、二人をパラディンの上位スキルで守ると、


「さぁ、いらっしゃい。お姉さんが、優しく手取り足取り教えてあ、げ、る」


 モニカが大きく開いた胸元を見せつけるように挑発して……あ、思いっきり攻撃されてる。

 まぁアレフォには、ニアが居るもんな。

 更にその子供である、三歳児くらいの小さな女の子フォニアも、


「パパがんばれー!」


 と、アレフォを応援しているのだから、モニカの胸に目を奪われる訳にはいかないだろう。

 

「≪ホーリー・クロス≫」

「えっ!? ちょっ……危なっ!」


 アレフォがパラディンのスキルを放ち……だが、スキルは使えても、筋力や敏捷性が足りないのか、モニカの剣で防がれる。

 そこからモニカが立て直し、ようやく指導する為の戦いへとシフトしていった。

 一方、その隣ではエリーがエルの魔法を見ている。


「≪ファイアーストーム≫」


 アレフォと同じく、エルはエリーのスキルが使えるのだが、威力が低いように思える。

 かと思ったら、エリーが自分の杖をエルに渡し、


「≪ファイアーストーム≫」


 先程と比べると、エリーの使うスキルには劣るものの、かなり大きな炎の渦が生み出された。


「なるほど。アレックス、私の人形の方は、魔力の媒体となる杖があれば、洞窟のサソリくらいなら倒せるわね」

「杖か。タバサから送ってもらうか?」

「そうね。それか、シェイリーさんかリディアが、杖を作る為の樹を生やしてくれるなら、ここで作れるわね」

「リディアは木を切ると、少し悲しそうにするからな。今度、シェイリーに頼んでみよう」


 家を作る為に木材が必要だと分かっているので、口に出す事はないけれど、木を切る時はリディアが複雑な表情をしているんだよな。

 事前に折れた枝とかなら、リディアは気にしていないみたいだけど、切る為に生やしてもらうのは、避けた方が良いだろう。


「ふぅ、こんなところか。ご主人様……私を倒す程の力はありませんが、地下のサソリ程度であれば、問題ないかと」


 気付けば、モニカ側の戦いも終わっていた。

 しかし、流石は人形と言ったところか。

 それなりに激しく動いていたはずなのに、息一つ乱れていない。

 ……小屋で見たアレの後は、暫く動かなくなったのだが、それとこれとは別物というか、何かが違うのだろうか。

 もしくは、動けなくなる程に激しい事をしていたのか……まぁ別にどちらでも構わないが。


「メイリン。何人かの人形に、戦闘訓練を積ませても良いか?」

「旦那様がそうされたいと思うのであれば、妾は勿論構いません」

「そ、そうか」


 一先ずメイリンが承諾してくれたので、新たに戦闘訓練という作業が増えた。

 今日は皆で人形たちの家作りや、畑の開拓、人形への戦闘訓練を行い、一日を終える。

 その後のお風呂で、


「旦那様。妾にも抱擁を……」

「お兄ちゃん。だっこー!」


 メイリンが俺に抱きつこうとした瞬間、ノーラが走って来て、俺に飛びついて来た。

 とりあえず、お風呂で走るのは危ないからやめような。

 何だか、ノーラがメイリンを警戒しているようにも見えるけど……すまない。

 ノーラを抱っこしているすぐ下で、メイリンたちが俺のを……だが、ノーラやニナには未だ早いと思うんだ。

 決して二人の事が嫌いな訳ではなく、大事にしているからこそなのだが……分かってくれるだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る