第397話 解除したいけど出来ない分身

「い、今のは何っ!? 一瞬でモニカが……アレックス! レヴィアたんも、今のをしてーっ!」

「いや、俺は何もしていないぞ?」

「ホントにー? 一瞬でモニカが……ほら、顔が蕩け切ってるもん!」


 帰還スキルを使ってもらう為に本気を出した所を、レヴィアに見られてしまった。

 だが、何とか誤魔化し……あ、リディアが凄いジト目で見てる。

 リディアにも見られていたのか!?


「アレックスさん……」

「ど、どうしたんだ、リディア」

「私は普通で構いませんから、もっと長くじっくり優しくお願い致します」


 まぁリディアは体力が無いからな。

 とりあえず、レヴィアが騒ぎ出す前に満足させ……次はリディアへ。

 ……うん。やはり本気を出すのはダメだな。腰が痛い。

 リディアとゆっくりまったり過ごしていると、ようやくモニカが目覚め……魔族領へ。


「えっ……あの、アレックスさん? ……まぁ。あの巨人族級のを受け入れているなんて、モニカさんは凄いですね」

「い、イネスっ!? こ、これには訳が……」

「いえ、男性と女性ですし、同じ人間族ですから、そういう事もありますよね」


 ど、どうしよう。

 イネスに思いっきり見られているのだが、関係ないと言わんばかりに、俺に背中を向けているモニカがもぞもぞ身体を動かしているし……


「うっ!」

「あ、アレックスさん! もしかして今のは……そ、その、モニカさんの中に!? わゎ、どうなるんですか?」

「いや、イネスが何を想像したのかは分からな……いや、わかるけど、そうではなくて腰が限界なんだ。すまない、イネス。こんな状況で非常に申し訳ないのだが、腰をマッサージしてもらえないだろうか」

「残念。あの瞬間ではなかったのですね。とりあえず、マッサージは行いますね」


 四つん這いで自ら身体を動かすモニカの後ろに俺が居て、その後ろにイネスが居て……自分で依頼しておいて何だが、もの凄い状態だな。

 だが、ウラヤンカダの村の分身たち八体と、エリラドの街へ向かう分身たち三体がいろんな事をしているので、イネスは気付いていないようだが、もう何度も……げふんげふん。

 そんな状態で、腰を優しくイネスにマッサージされ……流石だな。すっかり腰が痛くなくなった。


「もう大丈夫ではないでしょうか。では、アレックスさん。是非、全力でモニカさんに……」

「イネス、腰を治してくれてありがとう。だけど、今は少し急いでいるんだ。本当にすまない」

「えっ!? そんな状態でどこへ……あっ! これが男の人の……へぇー」


 イネスがモニカの中から溢れ出ているアレに気を取られている内に、エリラドへ向かおうと思ったのだが、


「もう、お兄さんったら。こんなの我慢出来る訳ないじゃない。いただきまーす!」


 イネスとモニカから離れたところで、テレーゼに抱きつかれ……時間が本当にないから、このまま走る事に。


「こ、これこれっ! 相変わらず走りながらは凄……」


 分身を解除出来たら、こんな状態で移動しないのに……とはいえ、子供たちに万が一の事があってはダメだからな。

 ……むしろ、俺の分身が子供たちの傍でされている事が、既に緊急事態というか害悪な気もしなくも無いが。

 途中で出会った人形に頼んで、メイリン経由でマミたちに連絡を取ってもらい、南へ。

 マミたちが来るまでの間、テレーゼが嬉しそうに……あ、来たな。


「アレックスー! 私にもして欲しいポン!」

「すまない。来てもらって悪いのだが、本当に時間がないんだ。ある女性たちに謝罪しなくてはならなくて……後で必ず礼をするから、エリラドへ連れて行ってくれ」

「そういう事なら……後が楽しみポン。けど、そっちの女性は入れないポン」

「そうだな。という訳で、テレーゼ。終わりにしよう」


 テレーゼが満足そうにしながら俺から離れるが……あー、複製スキルの六体は解除したが、五体の分身たちが残っているので、アレが止まらない。


「アレックスさん。その状態で樽の中へ入ったら、樽が満杯になって窒息死してしまうのでは? 私へ出し切っちゃいましょう!」


 ジュリが先にアレを止めるべきだと提案するが、止めたくても止められないんだよ。


「ふっふっふ。ここは私の出番だねー。お兄さん。夢魔族である私は、自分の見た目年齢を変えられるんだよー。という訳で、幼児の姿になるから、一緒に樽へ入ろ」

「流石にそれは……」

「見た目は幼くても、私は私だってば。それより時間が無いんだよね? ほらほら早く」


 結局テレーゼに押し切られ、幼い姿になったテレーゼが延々と、変化スキルで幼くなった俺のを飲み……ウララドへ。

 そのまま樽の中へ入りっ放しで、ジュリたちにエリラドまで馬車で運んでもらい……樽の中に二人で入ったまま、子供たちの馬車が到着するのを待つ事になった。

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