第638話 力の余波
「パパー、ここだよー!」
「ここは……ラーヴァ・ゴーレムが居る洞窟か」
「うん。そのラーヴァ・ゴーレムの近く」
ニースに連れられ、滝の裏にある洞窟へとやって来た。
この洞窟の奥に溶岩であるラーヴァ・ゴーレムが居るので、暑さに弱いプルムが早々にダウンしていたハズだ。
「皆、この先はかなりの高温になる。悪いがここで待っていてくれ」
「あっ! あの洞窟かぁー! わかったー。プルム、待ってる」
プルムは前に来た時の事を思い出したらしく、すぐに足を止める。
「えっ!? ここって、そんなにヤバい洞窟なんですか!?」
「悪い事は言わぬのじゃ。ここで待っていた方が良いのじゃ。奥には溶岩があって、我でも防御結界を張らねば耐えられぬのじゃ」
「えぇ……じゃあ、私もプルムさんと待ってますね」
グレイスの言葉にミオが答え、最終的に俺とミオ、ザシャとニースの四人で進む事に。
冗談抜きにこの先は危険なのだが、ザシャは熱さにも強いらしい。
「まぁ私は魔族だからね。聖属性の攻撃以外は、大体大丈夫だよ。逆に清められた場所は辛いけどさ」
という訳で四人で進んで行くのだが、途中でミオが不思議そうに声を上げる。
「む? 以前に来た時は、この辺りからかなりの熱さで、防御結界を張ったのじゃが……それ程熱くはないのじゃ」
「うん。熱さはあるんだけど、前ほどではないみたいなんだー」
「ほう。何かあったのじゃな?」
ミオとニースの話を聞いている内に、前とは少し違う地形の場所に出た。
ラーヴァ・ゴーレムがいた場所のように、溶岩があるものの、その量がかなり少ない。
「パパー、ここなの。ゴーレムさん、パパを連れて来たよー!」
ニースの言葉で、溶岩の中からラーヴァ・ゴーレムが姿を現すが……何だか小さいな。
前回見た時の半分もない気がするんだが。
「おぉ、アレックスさん。いやー、ニースちゃんは凄いねぇ。あっという間に温泉が出来たよ」
「あぁ、ニースは凄いからな。しかし、それにしても随分小さくなってしまったな。……それは、温泉が出来たからなのか?」
「半分正解で、もう半分はハズレだな。だが遅かれ早かれ、こうなっていたかもしれないから、その前に温泉を作ろうとしてくれたニースちゃんには感謝しているよ」
うーん。よくわからないな。
とりあえず詳しく話を聞いてみると、何でも河を司る神が現れたという。
「いえ、本当に突然の事だったんですけど、数日前にこの大陸の端の方で、物凄く凄い水の魔力が生まれて、地下を流れる水脈が目覚めてしまったようで」
「物凄く凄い水の魔力?」
「えぇ。そりゃぁもう凄い魔力だったよ。俺も土の中から魔力を感じる程だったんだから。その魔力に呼び起されて、小さな水脈だった地下の川が、大きな水脈になってね。それが俺の溶岩に近付き温泉としてニースちゃんが掘っていた穴へ噴き出た感じかな」
「ふむ……しかし、眠っていた河の神が起こされる程の魔力とは、大丈夫なのか? その魔力の正体が気になるんだが」
「流石に、その魔力の主が誰かまでは俺も分からないけど、アレだけの魔力だ。真っ先に思い浮かぶのは玄武様だけど、今は魔王に破れてあれ程の力はないはず。だから、ドラゴンとかの類じゃないかなーとは思うんだけどな。ウォーター・ドラゴンとか、アクア・ドラゴンとか……あ、そういうドラゴンが居るかどうかは知らないけどさ」
ドラゴンか。洞窟の入り口近くでレヴィアなら待機しているけど……あ、待てよ。
数日前と言えば、レヴィアに頼んで黒い雲に砲撃をしてもらっていたな。
……かなりの力で。
まさか、レヴィアの魔力に応じて、河の神が目覚めて、ラーヴァ・ゴーレムに接近して温泉に……いや、そんなハズはないよな? ない……よな? きっと。
「ち、ちなみに、その河の神とやらが目覚めた事で、何か地形に影響とかは無い……よな?」
「いや、あると思うよ。元々、細々としながらもこの大陸中の地下へ伸びていた水脈が、一気に活性化しているんだ。ある所では新たに川が出来ているかもしれないし、池や泉が大きくなったりとか、影響がない事は無いと思うぞ」
「そ、そうか」
「まぁ、そんな事は置いといて、ニースちゃんには本当に感謝している。ありがとうな!」
ラーヴァ・ゴーレムから感謝されたのは、良かったと思う。
約束も果たしたしな。
ただ、もしかしたら俺たちは、この北大陸の地形を変えてしまったかもしれないが……ま、まぁ大丈夫だと信じておこう。……うん。
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