第734話 ヴァレーリエとリディア

 翌朝。レヴィアがビクンと身体を震わせ、ディアナにギュッと抱きつかれた状態で目を覚ます。

 昨日は、ヴァレーリエにツェツィを任せ、ずっとレヴィアに甘えられ、時折ディアナと交代していた。

 ディアナが気を失ってからは、レヴィアに抱きつかれたままで……今に至る。


「……アレックス、おはよう」

「おはよう、レヴィア。あまり無理をするなよ?」

「……大丈夫。まだ百回貰ってない。だから、もっと」

「いや、昨日も言ったけど、流石に百は無理だからな?」


 周囲を見渡した感じだと、レヴィアの他にミオが起きていて、


「はっはっは! その程度か! 竜人族とは大した事が……ひぐぅっ!」

「ふふふ。う、後は未経験で、慣れて、いなかった、だけよ! だけど、今の、私は……どちらで、も~~~~っ!」


 モニカとナターリエが未だに謎の戦いを続けていた。

 うん。二人揃って限界を迎えたみたいだし、もう分身は解除して良いだろう。

 ……レヴィアは未だに離してくれないが。


「むぅ。アレックスよ。我はもう少し頑張れたのじゃ。じゃが、次の戦いに温存する……のじゃ」


 ミオが俺の所までやって来て……眠った。

 いや、限界ギリギリまでするようなことではないと思うのだが。

 とりあえず、右にディアナ、左にミオ。上にレヴィアが居て、身動きが取れず、どうしたものかと考えいると、ヴァレーリエがやってきた。


「アレックス。おはよう」

「あぁ、おはよう」


 どうやらヴァレーリエは身体を案じて何もせず、ツェツィと一緒に眠っていたようだ。


「……何? アレックスは忙しい」

「ふふん。今のウチは無理出来ないから、邪魔はしないんよ」


 おぉ、レヴィアが不機嫌そうに声を掛けたけど、ヴァレーリエがスルーして、言い合いにならなかった。

 ……いや、これが普通なんだけどさ。


「一晩考えた結果、ウチは魔族領で生む事にしたんよ」

「そうか。まぁ向こうの方が、暫く居た訳だし、良いかもな」

「えぇ。こっちは知っている人が少ないしねー。で、第一魔族領まで飛ぶんだけど、アレックスやリディアくらいなら乗せて飛べるんよ。どーする?」


 あー、前に第四魔族領で飛んでもらった時は、重い木材を運ぼうとして、ダメだったんだよな。

 俺たちくらいなら大丈夫か。

 とはいえ、身重のリディアを乗せて飛ぶのは少し怖いが。


「そうだな。俺はニナと話がしたいし、一度帰ってみるのも良いかもしれないな」

「……アレックス。レヴィアたんも」

「いやいや、すぐに戻ってくるよ。モニカも一緒に連れて行けば、転移スキルが使えるし」

「……ん。わかった」


 そう言うと、ずっと動いていたレヴィアが俺の上に倒れてきて……眠ったけど、依然として俺は動けないのだが。


「まぁ三人くらいなら大丈夫なんよ。じゃあ、リディアに聞いてくるんよ」


 そう言ってヴァレーリエがゆっくりと歩いていく。

 ヴァレーリエの動きは慎重で……でも、凄く嬉しそうに見える。

 少しすると、ヴァレーリエがリディアを連れて戻ってきた。

 ちなみに、流石に俺もレヴィアに挿れたまま話すのはどうかと思うので、静かにディアナとミオから腕を抜き、レヴィアをベッドに寝かせて衣服を整えている。


「アレックス。リディアも一緒に戻るって言っているんよ」

「ここで凄くお世話になりましたが、向こうは初めてアレックスさんに出会って、いろいろと思い出のある場所ですので」

「わかった。あとで、サマンサが起きたら話しておこう」


 そんな話をしていると、そのサマンサがやって来る。


「私なら既に起きているよ。まったく……私は余り激しい事が出来ないから、一回しかしていないのに、他の者ときたら」

「でも、一回はしているんよ。ウチは、昨日一回もせずに我慢したんよ。リディアもそだよね?」

「……そ、そうですねー」


 ヴァレーリエに振られたリディアが、明後日の方向を見ているが、昨日のリディアは三回……げふんげふん。

 野暮な事は言わないでおこう。


「それより本題なんだが、ヴァレーリエが空を飛んでリディアを俺たちの国へ連れて行ってくれるそうなんだ」

「今までお世話になりました。本当にありがとうございます」

「いやいや、気にしなくて良いよ。リディアがここで過ごしたのは、丸三週間かな。うちのジェシカも交えて、一緒に生まれて来る子供の話をしたりして楽しかったよ」


 サマンサがジェシカを呼び、改めてリディアが二人に挨拶をすると、


「アレックスは皆が眠っている間に行った方が良いと思うんよ」

「そうかもしれないな……って、とりあえずモニカは連れて行かないと戻って来られなくなる。モニカ、起きてくれ」

「……すぅ」


 モニカを起こそうとしたが、起きない。


「仕方がない。俺が抱えて行こう」

「じゃあ、出発するんよ! アレックスもリディアも、しっかり捕まるんよ!」


 俺とリディアとモニカを乗せ、ヴァレーリエが第一魔族領に向けて飛び立った。


「んっ!? えぇっ!? ご、ご主人様!? これ……空を飛んでます!? 私、全裸なんですがっ! いや、それより怖ぃぃぃっ!」


 少ししてモニカが目覚めたけど……モニカって空が苦手だっけ? 何かトラウマでもあるのか?

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