第70話 人形が加わった新たな生活

「という訳で、メイリンのスキルで新たな仲間? が加わったんだ。けど、まだ色々と準備があるから、今日は向こうの小屋を使ってもらう事にしたんだ」

「あの、アレックスさん。準備とは?」

「あー、その……今、服が無くてさ。全裸なんだよ。で、二人して毛皮を使って服を作っていると思う」


 メイリンの人形たちが小屋に入った後、俺たちは家に戻り、リディアたちが驚かないようにと、人形スキルの事を説明しておいた。

 何も知らずに、俺やモニカに似た子供と遭遇したらビックリするもんな。


「しかしアレックスさんやモニカさんの幼少期にそっくりで、かつ一人で勝手に動く人形だなんて、凄すぎませんか?」

「うむ。この強力なスキルがあるからこそ、妾たち一族の国は大きく栄え、また一方で、このスキルを封じられて大きく衰退してしまったのだ」

「スキルを封じる? そんな事が出来るのですか?」

「うむ。実は妾のスキルは強力な反面、発動にあるモノが必要でな。そのモノが無いとスキルが使えないのだ」


 リディアがメイリンに色々と聞いているけど、知ってさえいれば、このスキルを封じるのは簡単だと思う。

 要は、そのスキルを使う者の近くに男を近付けなければ良いんだろ?

 まぁさっきはモニカの聖水……で、人形を作る事が出来たけど、それまでは女性の人形は作れないと思っていたみたいだしさ。

 そんな事を考えて居ると、


「なるほど。ちなみに、その必要なアイテムとは?」

「それは……その、あ、アレックス殿の、子だ……」

「待った! 詳しい話は後にして、今後の話をしよう!」


 危ない。

 メイリンの一言で、また大変な事態になるところどった。

 リディアはまだしも、すぐそばにノーラが居るからな。

 ノーラに変な事を教えないようにしなければ。


「……じゃあ、人形たちが服を得たら、今後は作物の収穫を担当してもらうという事で」


 暫し皆で話をして、子供でも出来る事を……と、役割の話をして、


「メイリン。人形たちは、どんな様子か分かるか? 既に服が出来ているなら、皆で夕食にしようと思うんだが」

「少し待っていただきたい。聞いてみる」


 食事の話をすると、メイリンがその場で目を閉じる。

 離れていても会話が出来ると言っていたが、思考で会話が出来るという事か。


「……まだ毛皮を柔らかくする作業を続行中との事だ。あと、針と糸があれば欲しいと」

「それなら、ギルドから送られてきている物があるから、持って行くよ」

「ご主人様。それくらいなら、私が」


 掃除を終えて暇なのか、モニカが針と糸を小屋に持って行き、


「ご主人様。持って行って来ました」

「ありがとう、モニカ。……って、どうして、ちょっと嬉しそうなんだ?」

「いえ、私そっくりですし、娘というか、妹が出来たような気分になれたので」


 少し時間が経ってから戻って来た。

 おそらく、幼い頃の自分にそっくりな人形と会話でもしていたのだろう。

 それから夕食を済ませると、リディアが人形たちの食事を運ぶのと、向こうの風呂へ水を入れて来ると言って小屋へ。

 水を熱する必要があるからか、暫くしてから戻って来たのだが、


「リディア? く、くっつき過ぎじゃないか?」

「そ、そんな事無いですよ?」


 少しリディアの様子がおかしい気がする。

 いつも以上に密着してくるし、甘えている……のか?

 ただ、そんなリディアの様子を見たからか、


「お兄さん。ニナもーっ!」

「ボクもお兄ちゃんと、くっつくー!」


 ニナとノーラもやって来た。

 尚、エリーたちは、シェイリーの所で色々としたからか、遠慮してくれているらしい。

 それから皆で風呂へ行き、昨日の風呂と同じような事になったのだが……やはりリディアが変だ。

 何て言うか……モニカが二人居ると言うか、リディアが色々と見せてくると言うか……一体、何があったのだろうか。

 その一方で、


「だ、男性と共に風呂へ……しかも、また青龍様の時と同じように。……あ、モニカ殿。また聖水をくれるのか。しかも、アレックス殿の子種まで……うむ、助かる」


 風呂の隅で小さくなっているメイリンが、モニカから何かを受け取っていた。

 それから、皆でベッドへ移動し、就寝準備を終えたところで、


「≪夢見る少女≫」


 フィーネがサキュバスのスキルを使って、皆を眠らせる。


「え? フィーネ。シェイリーの所でも、風呂でも沢山飲んでいただろ?」

「はいっ! でも、フィーネはもっとアレックス様のが欲しいんですっ!」


 サキュバスの本能なので仕方ないのかもしれないが……いや、俺はフィーネを守るって決めたしな。

 覚悟を決めて、フィーネと小さな寝室で就寝した。

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