第316話 珍しく疲労困憊のアレックス

 ひ、酷い目にあった。

 新月は兎耳族が攻めて来るというのを覚えておかなければ。

 とりあえず、朝になったら兎耳族たちが満足して帰っていったが……本当に一睡もさせてもらえなかった。


「お兄さん。しゅごかったね……流石のカスミちゃんも、あんなにハードだとは思わなかったわ。……一緒に寝よっか」

「あ、アレックス……眠っている間の警護は任せてくれ。……そ、早々に気を失い、昨日はしっかり眠ってしまったので」

「えっと……とりあえず、アレックスさんもカスミさんも、服は着ましょうね。……き、昨日のアレックスさんは凄かったわね」


 ベッド上でボーっとしていると、カスミが眠たそうにしながら俺の胸に顔を埋めて来て、ネーヴが俺の股間を見ながら、警護を申し出て来る。

 更にステラもチラチラと俺を見て……


「って、どうしてステラがここに!?」

「……その、いろいろあって兎耳族さんに巻き込まれてしまって」

「えーっと、まさか昨晩ステラも……」

「……き、気にしないで。わ、私は聖職者だから。そう、聖職者なんです」


 ステラが顔を赤らめ、呪文のように何か呟いているが、頼むから何も無かったと信じたい。

 昨晩は兎耳族たちが一斉に押し寄せてきて、本当に訳が分からなかったからな。


「す、すまん。ネーヴ、俺の下着だけでも履かせてくれないだろうか」

「ふふっ、私は妻だからな。任せるのだ」

「助かる……。いや、綺麗にしてくれとまでは言ってな……」


 ダメだ、眠い。

 とりあえず、ステラが見ているし、ネーヴを止めなければと思っているのだが、


「アレックス様ー! 昨日の分、フィーネにお願いしまーす!」

「お兄さん。おはよー! 私も私もー!」

「おにーさん。朝の搾乳をお願ーい! あと、私もおにーさんのミルクを飲みに来たのー!」


 フィーネとテレーゼのサキュバス組とボルシチがやって来た。

 ネーヴが舐めていたから、すぐにフィーネたちも混ざってきて……待ってくれ。せめて、ステラの前というのは……というか、ステラも両手で顔を押さえているものの、思いっきり指の間から見ているんだが。


「旦那様ー! 酷いですー! 昨日は来てくださいませんでしたー!」

「アレックス様! ビビアナ様を優先で構いませんが、我々にもおこぼれをお願い致します!」


 あぁぁ……兎耳族に襲われていて、それどころではなかったからか、ビビアナと魔族領に残っている熊耳族の少女たちがやって来たっ!

 この人数に襲われ、分身を使わざるを得なくて……ね、眠らせて欲しい。

 いつものフィーネは一緒に寝るのだが、昨日していないからか、寝かせてくれないっ!

 というか朝だし、そもそも俺を寝かせるという発想にないのか。


……


 暫く頑張って全員――何故かカスミも混ざっていたが――満足させたので、今度こそ寝ようと思った所で、


『エクストラスキル≪奴隷解放≫のクールタイムが終了しました。再使用可能です』


 ぐっ……今日が奴隷解放スキルが使えるようになる日だったのか。

 眠たい……だが、奴隷にされている者を解放してあげなければ。

 半分眠りかけているカスミと、幸せそうに気を失っているネーヴ。それから、しげしげと俺のアレを見ているステラだけが残った休憩所で、


「≪奴隷解放≫」


 朦朧とする意識の中でスキルを使用すると、いつもの様に光り輝き……大きな影が現れた。

 何だ!? 俺より……背が高い!?


「えぇっ!? ひ、人が現れた!? アレックスさんの言っていた奴隷解放スキルって、本当だったんですね」

「あ、あの。ここは? 一体、何が起こったのでしょうか?」

「すまない。俺はアレックス。とあるスキルで君を奴隷から解放したんだが……」


 ダメだ。超回復スキルで体力はあるものの、眠さが限界だ。

 新たに現れた者へ状況を説明しようとしたが、フラフラと倒れてしまい、もたれかかってしまった。


「あらあら、大丈夫よー。おねむなんでちゅねー。ママと一緒に、ねんねしまちょうねー」


 えっ? 子供扱いされているのか!? いや、俺より大きいが……や、柔らかくて暖かい物が俺を包み込んできたっ!


「アレックスさんより大きい女性……ど、どなたですか?」

「私ですか? 巨人族のイネスって言いますが……今は、この子が眠そうなので、後でお話しましょうか」


 この子って、まさか俺の事か!?

 ……あ、あれ? いつの間にか横になっていて、優しく撫でられ……眠ってしまっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る