第141話 落ち込むソフィ

 ソフィの作った運搬用小型ゴーレムのシーサーが、鉄器や作物が沢山載った荷車を軽々と引いていく。

 速度も遅くなく、試作機と言いながら、完璧ではないだろうか。


「ソフィ、凄いじゃないか」

「いえ。ここまでは平坦な道と、ニナ様が掘られたトンネルです。問題はこの先ですので」

「あー、そうか。道が整備されていなくて、障害物が沢山あったな」

「はい。そこをクリアして、初めて完成かと」


 今朝のメンバー選出会議で、リディアに来てもらい、石畳で道を整えるという話も出たが、そもそもの障害物を先に取り除かないと……という話になったんだった。

 そんな事を思い出しているうちにトンネルの最奥へ着いたので、精霊魔法で石の壁を開けて地上へ。

 暫くは平地だが、その先で草むらの中の獣道に入り、森の中へと続くので、そろそろシーサーの真価が問われる事になるのか。


「マスター。そろそろシーサーの機能を使用しますので、前を空けていただけますか?」

「わかった。さて、ここからどうする……んんっ!? ソフィ。シーサーは何をしようとしているんだ?」

「暫し、そのままご覧ください。あ、皆様もシーサーの前に出ないようにしてください」


 ソフィの言う通り、少し離れてシーサーの横に立って様子を見ているのだが、突然その場で蹲み込んでしまった。

 大丈夫か? と思っていたら、人型のゴーレムだったシーサーが、いつの間にか獅子の姿になっている。

 なるほど。二足歩行から四足歩行にして、悪路を進むのか……と、思っていたら、シーサーが大きく口を開き、その中が白く光りだす。

 ……これ、何処かで見た記憶があるんだが。

 激しく嫌な予感がして、とりあえず止めようとしたのだが、


「魔導砲……発射!」


 ソフィの言葉と共に、シーサーの口から大きな白い光が放たれた。


「マスター。これでリザードマンの村まで、道が平坦かつ真っ直ぐになりました。成功です」

「いや……うん。まぁ運搬は楽になるだろうけど、この直線上にあった物は?」

「はい。チリとなって消えました。尚、魔力を大きく消費しましたので、先にお伝えしていた通り、リザードマンの村で魔力注入をお願い致します」

「……まぁそれも良しとしよう。けど、今のをリザードマンの村に向かって放ったんだよな? 村は大丈夫なのか?」

「もちろんです。威力を計算しておりますので、村の手前までしか届いていないはずです」


 かなり不安はあるものの、ソフィが自信たっぷりに言うので、少し急ぎ足……くらいでリザードマンの村へ進むと、


「むっ……おぉ、アレックス殿か。気を付けてくだされ。どこからともなく、村が魔法で攻撃を受けましてな。今も警戒している所なのです」


 前に俺が運んで来た鉄器で武装した大勢のリザードマンたちと、長であるヌーッティさんが村の外に居た。


「えーっと、それってもしかして、白い光だったりするのか?」

「えぇ。私は直接見ていませんが、目撃した者によると、大きな白い光が全てを掻き消し、消えていったそうで。幸い、消えたのは目の前の木々と村の柵で、怪我人は居ないのですが……」


 どうやら、シーサーの攻撃が村の一部へ届いてしまったらしい。

 一先ず、怪我人が居ないのが不幸中の幸いで、先ずは謝罪と事情説明。

 それから、柵を修理……出来るレベルではなかったので、精霊魔法で石の壁を生み出し、改めて謝る。


「はっはっは。いや、新手の魔物ではないと分かったので大丈夫です。それに、前の柵より頑丈そうな壁を作っていただきましたしな」

「いや、とはいえ、迷惑を掛けたのは事実だ。今度、何かで埋め合わせをさせて欲しい」

「いえ、気になさらないでください。それより、そちらは残りの鉄器ですな? こちらも布を用意しておりますので、どうぞこちらへ」


 とりあえずヌーッティさんに許してもらい、荷車を村の中へ運ぼうとしたのだが、ソフィの様子がおかしい。


「どうしたんだ、ソフィ?」

「うぅっ……マスターっ! 申し訳ありませんっ! 私の命で償いをっ!」

「償わなくて良いよっ! リザードマンたちに迷惑を掛けたのは事実だけど、幸い怪我人も居なかった。大丈夫だから、落ち着いて」

「マスターっ!」


 いつもクールなイメージのあるソフィが、珍しく涙目で抱きついてきたので、暫くそのまま頭を撫で……落ち着いた所でヌーッティさんの所へ移動した。

 ……空気を読まずに抱きついてきたモニカは、後で説教な。

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