挿話45 驚きが止まらない旅の薬師レイ
長いトンネルを抜けると……両側を高い石の壁で挟まれた通路やった。
その中に、ポツンと大きめの家が一軒あるだけで、他は何もない。
ここは一体なんやねん! というのが、正直な感想や。
まぁ道すがらで聞いた話では、ここがあの第四魔族領という話やったから、納得と言えば納得やねんけどさ。
「皆、疲労はどうだ? 休憩していくか?」
「ご主人様。それは、お風呂へ入るという意味……」
「モニカは休憩不要だな。レイはどうだ? 大丈夫か?」
お風呂がある? 周囲に川も湖も無いのに?
聞いた話では、魔物が入って来ないようにするために壁を作っていて、壁の外は何も無い更地という話やったけど。
「ウチは大丈夫やけど……まだ、どこかへ移動するんやろか?」
「あぁ。ここから暫く西へ行った所に、俺たちが暮らして居る家があるんだ」
「家……リザードマンの所では、村って言うてたけど?」
「あぁ、あれは話を合わせる為に村って言ったんだ。何て言うか、家は沢山あるんだけど、村って言うのは若干抵抗があるかな」
どういう事や? イマイチ言うてる事が分からんけど、一先ず西に向かって歩いて行く事に。
……って、遠いなっ!
ひたすら通路を歩いているだけで景色が一切変わらへんから、同じ所を歩いているんとちゃうかって不安になるわっ!
ただ歩いているだけなのも何やし、改めて皆を眺めてみる。
先ず、リーダーのアレックスはん。中々男前で、パラディンというのがポイントが高い。
聖騎士やからな。真面目で誠実、何かあっても守ってくれそうな気がする。
きっとウチの事も、困っているから助けてくれた訳で、後で襲われたりもせーへんやろ。
続いて、エリーはん。アークウィザードらしく、立派な杖を持っている。
ずっとアレックスはんにベタベタくっついているから、きっとアレックスはんの事が好きなんやろなー。知らんけど。
次はモニカはん。マジックナイトらしく、鎧を着ているんやけど、何故か下半身は短いスカートのみで、脚を露出している。
太ももとか守らんで、えーんか?
それからサクラはんは、妹? を連れている。
幼い女の子を連れて行くのは大変やろーし、今から行く家で待たせといた方が、良かったんちゃう?
そして最後に、ユーディットはんや。
ウチも色んな国を旅してきたけど、天使族っていうのは、初めて見たで。
ただ、何でやろ。ふわふわ飛んでるから、たまにスカートの中が見えてまうんやけど、この子……履いてへんねんけど。
空を飛んでるし、短いスカートやし、絶対にパンツは履かなあかんやろ。
ほら、アレックスはんも目を逸らして……って事は、普段から履いてへんの!?
なるほど。この子は、そういう性癖なんか。……世の中はホンマ、ウチが思てるより広いんやな。
そんな事を考えていると、突然視界が広がり、沢山の家が見えて来て、
「お父さん、お帰りなさい」
「パパー! おかえりー!」
「父上、お疲れ様でした」
アレックスはんに向かって、子供がわらわらと……って、待って! 軽く十人を超えてるんやけど!
しかも、皆お父さんとかパパとかって……全員アレックスはんの子供なん!?
……い、いや、流石にそれはないか。
十歳くらいの子もおるし、年齢が合わん。
アレックスはんは神に仕えるパラディンやし、孤児を養ってる……うん。そうに違いない。
「モニカはん。アレックスはんって、凄いんやね」
「ふふっ……ご主人様は、夜になるともっと凄いぞ?」
……ご主人様?
もしかしたら、聞く相手を間違えたかも。
「エリーはん。アレックスはんは、凄いんやな」
「そうね。私たちを魔物から守ってくれるし、皆の信頼も厚いわね」
そう! こういうのを聞きたかってん。
暫く綺麗に並んだ家が続き……いや、それにしても子供が多過ぎへんか!?
もう、三十人近くおった気がするんやけど。
「……って、ちょっと待って! 何でこんな時期に、トマトが赤く実ってるん!? こっちはコーン!? 向こうにはリンゴが木になって……ここの畑は、どないなってるんや!?」
こう見えて、ウチはそこそこ腕の立つ薬師や。
それなりに植物の知識もあるんやけど、何がおかしいって、収穫時期の異なる野菜や果物が、同時に実ってるやん!
何なん!? 何の奇跡なん!?
ウチが一人で村の様子に驚いていると、
「お兄さん、おかえりー!」
「お兄ちゃん。おかえりなさーい!」
二人の少女がアレックスはんに抱きついた。
お兄ちゃん言うてるし、妹かな……って、一人は獣人族やん! しかも、キスしてるしっ!
恋人!? でも、二人ともキスしたでっ!?
この村は、ホンマにどーなってんねん! と思っていると、
「アレックスさん。おかえりなさい」
薬師にとって憧れにして、至高の存在。植物のプロ中のプロ、エルフが現れ……またアレックスはんにキスしたーっ!
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