第661話 駱駝耳族の砂漠移動
「すまない。待たせたな」
「アレックス様! おかえりなさ……って、女性が増えてるっ! というか、ファビオラさんの家の地下に、女性が住んで居たって事ですかっ!?」
「いや、これには色々と事情があるんだ」
皆の末地上――ファビオラの家へ戻って来ると、グレイスに物凄く驚かれてしまったが、この村の構造として、地下に共通の空間があると説明しただけで、何故か納得されてしまった。
「まぁアレックス様ですしね。女性が居れば、連れ帰ってしまうのは仕方がないのかと」
「いや、そう言われるても困るのだが……こほん。それより、水や食べ物については準備が整った。あと、ファビオラたち駱駝耳族の女性たちが、隣の村まで運んでくれるそうだ」
「あ、それは助かります。正直言って、私は砂漠を歩くのが結構辛かったので」
グレイスがそう言うと、シアーシャが大きく頷く。
まぁ砂地を歩くのは大変だからな。
ひとまず、ファビオラを入れて四人居るので、ここに居る女性陣、ミオ、グレイス、シアーシャ、ザシャをそれぞれ運んでもらう事にした。
「アレックスさんは宜しいのでしょうか? 私はミオさんを運ぶ事になりましたが、小柄で軽いですし、アレックスさんも一緒に運べると思うのですが」
「いや、俺はユーリを抱きかかえているし、自分で歩くよ」
「そうですか……残念です」
ファビオラとミオが残念そうにしているが、この中で一番体力があると自負しているからな。
隣村までは自分で歩いて行こうと思う。
とはいえ、ファビオラたちが本気を出したら、馬耳族のジャーダやジョヴァンナのように速く走れる……と言われたら、ついていく事すら出来なくなるが。
水や食料に、衣類などの荷物を全て空間収納に格納し、ファビオラの家を出ると、
「ご、ご主人様ぁぁぁ……ど、どうして結界を張っていたのですかぁぁぁ。さ、流石に死んでしまいますぅ」
モニカが本気で泣きそうな表情で飛び込んで来た。
……すまん。完全に存在を忘れていたんだ。
どうやらミオも同じだったようで、「そういえば、事が済むまで結界を張っておったのじゃ」と、呟いていた。
ミオ曰く、アレが終わった時点で結界は解いていたそうだが、それ以前にモニカが結界に阻まれ、ずっと待っていたらしい。
「ご主人様っ! このままでは私が干からびてしまいますので、どうかご主人様の精……聖水をください」
「悪いが、この水を飲んでくれ。既にかなり時間を使ってしまっているからな」
「そういえば、中で何をされていたのですか? 知らない間に女性が増えていますし……あぁぁぁっ! 私……私、混ぜてもらっておりませんっ!」
「とりあえず、隣の村へ行くぞ。モニカ、歩けるか?」
「え? スルーですかっ!? ご主人様っ!? ご主人様ぁぁぁっ!」
流石に脱水症状直前のモニカを歩かせるのはどうかと思い、ミオを運んでもらう予定だったファビオラにモニカを任せる事に。
代わりに、俺がミオを抱きかかえ、ユーリをおんぶしながら歩きだすと、ファビオラを始めとした駱駝耳族の女性たちが、それぞれ担当の女性をおんぶする。
「ふふふ。身体が小さいというのは、やはり得なのじゃ」
「うーん。私、お運びするならアレックスさんが良かったです……モニカさんは、紐みたいな格好しかしていないので、手が滑って運び難いです」
「いや、ご主人様が着替える時間もなく出発と仰るから……って、ファビオラ殿っ!? そこを引っ張っては……うぐぅっ! ひ、紐が食い込んで……ひぐぅっ!」
モニカはやはり体調を崩してしまっているのか、ファビオラに運んでもらいながらも、苦しそうにしている。
最悪は、この村へ残していく事も考えなければならないが、ひとまず治癒魔法を試してみるか。
「≪ミドル・ヒール≫……モニカ、大丈夫か?」
「ふぇ? ご主人様。私は大丈夫なのですが、ファビオラ殿がグイグイと紐で刺激し、私に聖水を出させようと……」
「えっ? モニカさん。聖水って何の事ですか……って、何か湿っている気がするんですけどっ! モニカさん!? モニカさぁぁぁんっ!?」
ファビオラが半泣きになりながらモニカを運んでくれて……まずは隣の村へと到着した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます