第662話 駱駝耳族の女性たちへのお礼

 ファビオラたちに運んでもらい、隣の村――サイディ村という所へやって来た。


「アレックス様。私たちは村へ戻るので、ご褒美が欲しいです」

「待ってくれ! それは分かったが、場所を……場所を考えてくれっ!」

「大丈夫ですよ。この村も駱駝耳族の村です。地上には女性しかおりませんから」


 いや、他の男性に見られる事を危惧しているのではないんだ。

 村の入り口でそういう事をしようとしているのが、どうかと思うんだ。


「ふっふっふ。アレックスよ、心配無用なのじゃ。我が隔離と無音の結界を張るのじゃ」

「そして、その中で私が闇を展開すれば、外からは何をしているか、一切わからないからね」

「という訳で、早速結界を張るから、アレックスは分身するのじゃ。……そうそう。あくまで、外から中に入れないだけで、中から外には出れてしまうから、気をつけるのじゃ」


 って、ミオとザシャが早くも行動に移して……とりあえずユーリを守らないとっ!

 約束は約束なので、分身を数体出し、俺自身はユーリを抱き抱えて外へ。

 ミオとザシャの言う通り、確かに中で何が行われているかは分からない。

 そういう意味ではセーフだが、この一部分だけ真っ暗な闇が広がっているのが怪し過ぎるし、俺の分身がいろいろやっているせいで、結衣に頑張ってもらう事になってしまう。

 この結界は今から動かせないので、とりあえず村を囲う柵の傍で、結界の様子を伺いながらユーリと遊んでいると、


「こ、これは何っ!? 誰か、男の人を呼んで来てっ! 村の入り口に、怪しい変な物が……」


 通りかかったサイディ村の女性が、ザシャの闇を見て大きな声を上げる。


「ま、待ってくれ。確かに怪しいが、これには訳があるんだ。その内、消えるから少しだけ待って欲しい」

「えっ!? 誰……って、耳も翼も無い!? まさか、人間族!? そっちの天使族の女の子はともかく、人間族がどうやってこの村に来たんですか!?」

「隣のスーサル村に住んでいる駱駝耳族の女性たちが、ここまで運んでくれたんだ」

「はぁ……って、話を戻しますが、この黒いのは何なんですか!?」


 俺に興味を持って話が逸れたと思ったけど、やっぱりこの闇は怪しまれるよな。

 せめて村の入り口ではなく、目立たないところでして欲しかった。

 どうやって言い訳しようかと考えていると、


「……ん? な、何だか不思議な香りがしますね。不思議と惹きつけられるというか、気になる香りというか……」


 目の前の女性がザシャの闇に近付いていく。

 あー、ミオの結界だと音は遮れても、匂いは無理なのか。


「あ、あれ!? 中に……入れない!? とっても良い香りがするのにっ!」

「えーっと、匂いは気のせいだと思うんだ。それより、教えて欲しい事があって……」

「待って! 貴方からも良い香りが……えっ!? この小さな黒髪の女の子に何をさせているんですかっ!?」

「これにも深い理由があるんだっ! その、決して変な事をしている訳では……」

「ちょっと見せてくださいっ! あぁぁぁっ! やっぱりっ! ……こっちへ来てくださいっ!」


 マズい! 変質者扱いされるが、言い訳出来ないっ!

 力づくで逃げる事も出来るが、ミオたちをどうしようかと思っていると、手を引かれて小さな建物の中へ連れて行かれる。

 兵士の詰所とかだろうか。

 どうやって逃げるかを考えていると、


「もう準備は十分ですよね? 私にも、その芳醇な香りのモノを……ふぁぁぁっ! すっごい! それをこっちへお願いしますっ!」


 女性が結衣を抱きかかえ……何故服を脱ぐんだっ!?


「ご主人様……たまには結衣にもお願いします。いつも頑張って飲んでいますし……」

「あ、パパー。ユーリはなにもみてないよー! そっちでおひるねしてるから、だいじょうぶだからねー!」

「そうそう、ここは私の家なので、ご心配なく。さぁ早くっ! お願いっ!」


 結衣にねだられ、ユーリが言葉通り部屋の隅に行き、女性が俺の手を引いて……分身を一体増やし、二人の要望に応える事に。

 こういう事をする為に、西大陸へ来た訳ではないんだよ……。

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