第43話 俺から離れないノーラと、恒例の自己紹介

「ノーラ。さっき軽く話したけど、この地で一緒に暮らす仲間だよ」

「……リス耳族のノーラです。よ、宜しくお願いします」


 人見知りをするタイプなのか、ノーラが俺の背中にしがみ付き、チラッと顔だけ出して皆挨拶する。

 これは俺が懐かれているのか、それともリスの獣人族だけに、俺の身体が木の代わりにされているのだろうか。


「私はエリーっていうの。ところで、ノーラちゃんはアレックスに随分と懐いているみたいだけど、何歳なのかしら?」

「ボク? 十五歳だよ?」

「……私たち人間と同じで、十五歳で成人よね? だったら、ノーラちゃんは、アレックスに――男の人に抱き付くのは、少し控えた方が良いんじゃないかしら?」

「……お兄ちゃん。ダメ……なの?」


 エリーの言葉で、ノーラが不安そうにギュッと力を込め、耳元で聞いてくる。

 最初は、すぐに逃げ出してしまった程だし、ちょっと臆病なのだろう。

 もしかしたら、リス耳族っていう種族自体が臆病なのかもしれないし、慣れたら離れるだろうから、暫くは好きにさせてあげた方が良い気がする。

 それに、ノーラは手と足を両方使って俺にしがみ付いているから、おんぶの様に俺が手で支える必要が無いし、おまけに軽いしな。


「突然環境が変わった訳だし、不安もあるだろう。慣れるまではノーラの好きにして良いよ」

「……お兄ちゃん、ありがとう」

「アレックス。実は小さい方が……いえ、何でもないわ」


 エリーが何か言い掛けた後、


「くっ……ケモミミの上に、ボクっ娘だなんて! ……こうなったら、ヤられる前にヤれ。この娘よりも先に既成事実を……」


 モニカが小声で何か呟いているが、一体何だろうか。

 エリーも一緒に頷いているが、それより自己紹介が先だな。


「モニカもノーラに自己紹介してもらって良いか?」

「こほん……モニカだ。ちょっと胸が小さいからって良い気になっているかもしれないが、少女にはない、二十歳という年上の女性の戦い方を見せてやるっ!」

「……お兄ちゃん。モニカさんは何を言っているの? ボク、よく分からないんだけど」


 安心しろ。俺もモニカが何を言っているか分からない。


「えーっと、モニカは見ての通り、メイドさんなんだよ。でも、マジックナイトっていう戦闘職でもあるから、戦いは任せろっていう事じゃないかな? ……たぶん」

「見ての通り? ……ボクの知ってるメイドさんは、おっぱいを出したりしてないよ?」

「それは……モニカが服のサイズを間違えただけじゃないか? 流石に、自ら女性が胸を露出したりしないだろうし」

「そうだよね。お母さんが、そういう人は変態さんだって言っていたし」


 お母さんか。ノーラがいつから奴隷にされているのかは分からないが、早く再会させてあげたいものだ。


「……変態さんは――失礼、乳女さんは、何故その服を買ったのですか?」

「……くっ。め、メイドだからだ」

「……なるほど。変態メイドだったのですね」


 リディアとモニカがヒソヒソと何か話しているが、何だろうか。

 所々しか聞こえないが、服の話っぽいし、何故買う前に試着しなかったのか……という話だろう。


「じゃあ、次はリディア。自己紹介を頼む」

「はい。私、リディアは、ここで生活している皆さんのお食事や飲料水、洗濯やお風呂に使うお水などを担っています。ノーラさんもお世話させていただくので、何かありましたら、さっきのエセメイドではなく、私に遠慮なく言ってくださいね」

「え、エセ……私はご主人様に、身も心も夜もご奉仕するメイドだっ!」


 リディアがモニカに冷たい目を向けていると、


「リディアさんは、皆のお母さんなんだー!」

「ふっ……皆の――ご主人様のお母さん。やはり、奥様ポジションは私が……」

「わ、私はまだ百六十歳ですっ! 人間に換算すると十六歳なんですーっ!」


 二人が何やら言い合いを始めてしまった。

 まぁ本気でケンカしている訳ではないと思うので、そっとしておこう。

 ……たまに、モニカが本気で怯えていそうな時もあるけど。


「じゃあ、最後はニナだねー! ニナは十四歳だから、一番歳が近いし、仲良くしてねー!」

「え? ニナって、十四歳だったのか!? でも、ジョブを授かっているし、成人だって言ってなかったっけ?」

「成人だよー! ドワーフは十三歳でジョブを授かって、成人になるんだもん」

「知らなかった。種族によってジョブを授かる年齢が違うのか」


 まぁでも、さっきリディアが百六十歳で十六歳相当だって言っていたしな。

 もしも、全ての種族が十五歳でジョブを授かるなら、人間換算で一歳半ばでジョブを授かる事になってしまうか。


「え、えぇっ!? ちょっと待って! ニナちゃんって、成人なのっ!?」

「そうだよー! エリーには言ってなかったっけ? ニナは大人だから、結婚だって出来るんだもん」

「けっ……結婚!? で、でも、見た感じアレは未だよね?」

「アレって?」

「だから、その子供を作……って、な、何でもないっ!」


 エリーが何を言いたかったのかは分からないが、一先ず恒例? の自己紹介が無事に終了した。

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