第6章 目指していたのはスローライフ
第180話 国力を増強させたいメイリン
「こうしては居れん……アレックス。少し待っていてくれ」
スノーウィから届いた荷物を手に、ネーヴが何処かへ行ってしまった。
一先ず、俺たちは俺たちで、いつもの開拓作業を行うつもりだったのだが、
「旦那様。天使族やスノーウィ殿が作物を所望している故、生産量を増やしたいと思います。その為、ソフィ殿に協力をお願いしたいのですが」
「ソフィに? というと?」
「はい。現在、畑での作物の収穫と水やりなどを、我が子らに担ってもらっていますが、これから畑の拡大や、収穫物の増加に仕分けと作業が増え、かつネーヴ殿の守備隊の訓練もあります。せめて、水やりを簡易化出来ないかと思いまして」
なるほど。この村……というか、いつの間にか国になっているが、作物が主な取引の品なのだから、それに掛かる労力を少しでも下げなければならないという事か。
「ソフィ。今は何を開発しているんだっけ?」
「マスター。今は、ウサギの毛皮をなめす魔法装置を開発しています。リザードマンの村から布が手に入るようになりましたが、まだ数は少なく、人形たちはウサギの皮を服の代わりにしています。そちらの負荷を下げようかと」
「む……それはそれで必要だな。うーん……いや、しかし作物も重要だ。……さ、先に水やりを簡易化して欲しいのだが」
ソフィの言葉でメイリンが悩み、一先ず優先順位が提示されたので、俺からもソフィにお願いし、
「分かりました。マスターがそう仰るのであれば、現在の作業を一時中断し、水やりを自動化させる装置の開発に取り掛かります」
「すまないな。悪いが、頼むよ」
新たな魔法装置の開発が決定した。
それから、一先ず開拓作業をそれぞれ行い、少し遅めの昼食にしようかと言うところで、
「アレックスー! ノーラー! 大変だから来て欲しいのニャー!」
慌てた様子のムギが、俺とノーラを呼びに来る。
何事かと思いつつ、ノーラと共について行くと、
「見て欲しいのニャー! 鳥さんの卵が沢山あるのニャー!」
ノーラが作ってくれた鳥小屋の中が卵だらけになっていた。
「凄いな。一晩でこんなに卵を産むのか。ざっと見ただけで、三十近くあるよな」
「んー、こんなに沢山産むなら、もっと鳥さんたちの家を大きくしないといけないかもねー」
「これだけ沢山あるなら、一つくらい食べても良いニャ? 良いニャ?」
驚くノーラと、目をキラキラ輝かせて涎を垂らすムギ……うん、まぁ猫だからな。
繁殖させたくはあるが、増えすぎても困ると言うのもあるし、少しくらいなら良いだろう。
リディアも喜ぶだろうし。
「じゃあ、少しだけだぞ」
「やったー! じゃあ、美味しそうな卵をムギが選ぶのニャー! という訳で鳥さん、お邪魔するのニャ。……って、痛いニャ! 怒らないで欲しいニャー!」
小屋に入り、卵を拾おうとしたムギを鳥……雌鳥が凄い勢いで突いている。
まぁそりゃあ我が子を守ろうとするか。
しかし、天使族がくれたこのノースダック……トリーシアたちは飼い易いと言っていた気がするんだが、結構攻撃が激しくないか? 雌鳥が。
何故か雄鳥はゲッソリした様子で動かないのも気になるが、環境が変わったからだろうか。
「≪ディボーション≫」
「あ、痛くなくなったニャー」
「ムギのダメージを俺が肩代わりしているから、鳥たちに感謝しながら、少しだけもらおう」
「わかったニャー!」
一先ず、今日の所は卵を三つだけもらい、家に戻る。
リディアが喜び、後で何か作るそうだ。……三つの内、一つは既にノーラがゆで卵を希望しているけど。
それから昼食を終え、午後はシェイリーの所へ行き、ソフィから得たスキルの効果を見てもらおうという話をした所で、エリーやモニカが参加すると手を挙げる中、そこにメイリンも混ざって来る。
「ご主人様。国力増強のため、畑を増やしたいのです」
それはつまり、人形を増やしたいという事かと理解した所で、
「アレックス。こ、これを……ひ、一人の時に見て欲しい」
「ん? わかった」
ネーヴから小さな箱を渡してきた。
何だろうかと思いつつ、言われた通りに一人で寝室へ行って開けてみると、
『愛しのアレックスへ。拝啓、時下ますますご清栄の事とお慶び申し上げ……』
手紙と、その返信用と思われるペンと真っ白な紙と便箋が入っていた。
そういえば、スノーウィからもネーヴと文通をしてくれと書かれていたが……いや、それにしても多過ぎじゃないか!?
ネーヴの手紙が十枚以上あり、返信用と思われる紙も三十枚くらい入っているんだが。
……こ、言葉で返事をするのはダメなのだろうか。
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