第795話 スペシャル料理

「アレックス様! これが、男性の……っ! 凄い……本当に人生を損してた! もう、堕ちちゃう……でもインキュバスの力には抗えませんし、仕方ないですよねっ!」


 フョークラがよく分からない事を言いながら唇を重ねてきて……光ったな。

 というか、ここに居る女性従業員たちも、今回が初めての者が多いようで、ところどころで俺の分身が光っている。

 ……つまり大半はマーガレットのように、かつて俺の魅了スキルが暴走してしまって責任を取る事になった者たちだが、巻き込まれてしまっただけの者も居るという事か。

 その者たちには後で謝罪しなければならないな。


「はぅっ! マーガレット様や先輩たちに、絶対来た方が幸せになるって言われて半信半疑でしたけど、本当でしたぁぁぁっ!」

「だから言ったでしょ? しかも、マーガレット様の旦那様でニース様の父上だから、左団扇確定よっ! 玉の輿よぉぉぉっ!」

「噂では、どこかの国の王族って話も……ううん。そんな事より、もうアレックス様のこれなしで生きていけないっ!」


 遠くで叫んでいる女性たちが居るようだが、巻き込まれた事による抗議だろうか。

 であれば、それが向けられる先は俺でなければ。

 フョークラには悪いが、向こうへ行かないと。


「アレックス様!? 止めないでくださいっ! せっかく幸せを教えていただいたのです! まだダメですっ!」

「……仕方がない。ちょっと歩くぞ」

「えっ!? これはまさか、ルクレツィアさんが言っていた……おほぉぉぉっ!」


 フョークラを抱き上げると……凄い勢いでしがみついてくる。

 いきなり持ち上げたら、怖いか。

 うーん。どうやって、向こうへ行こうかと考えていると、


「アレックス様。本日のスペシャル料理です。当宿の料理長を務めさせていただいている私が、腕に寄りを掛けて作りました。どうぞ、奥の奥までご堪能ください」


 大声と共に突然扉が開き、大きなカートが運ばれてきた。

 そこには暫く姿を見ていなかったヴィクトリアが横たわっている!?


「ふふふ、アレックス様! 料理長にお願いして作ってもらった、女体盛です! どうぞ、全て召し上がって……って、待って! どうしてもう始まっているのっ!? 酷いっ! 私もアレックス様に……あ、あれ? 動けない!? 料理長!? 料理長ーっ!」

「わ、私も混ぜてくださーいっ!」

「えぇっ!? 料理長がアレックス様のところに行ったら、誰が私を解放してくれるのよっ! ちょ、ちょっと! 私だって……私だってアレックス様に召し上がっていただきたいし、いただきたいのぉぉぉっ!」


 どうやらヴィクトリアはカートに固定されているらしいな。

 いや、それよりさっきの騒ぎを何とかしないければ。


「すまない。もしかして君たちはマーガレットに呼ばれて来たのだろうか」

「はいっ! この度はお招きくださり、本当にありがとうございますっ! 結婚してください!」

「いや、もちろん責任は取るが……」

「ほ、本当ですかっ! やったぁぁぁっ! 毎晩……どうか毎晩このパーティを開いてくださいっ!」


 流石に毎晩こんな事は出来ないと思うのだが。

 他の女性陣からも詰め寄られたが、とりあえず、丸く収まった……のか?

 いろんな女性陣の話を聞いていて、ふと気付けばフョークラが完全に気絶していた。

 しまった。話を聞く為にしゃがんだり、立ち上がったりを繰り返して……とりあえずベッドに寝かせようと、一番奥の部屋へ。


「では、次は結衣にお願い致します。あ、移動しながらで良いですよ?」

「ニナやマリーナの様子を見に行きたいのだが……」

「では、そこまでの間だけでも……というか、フョークラさんを始めとした女性の香りが沢山ついておりますので、先にお風呂はいかがでしょうか。向こうの階段を上がると、屋上の露天風呂へ上がれると、マーガレットさんが言っておりました」


 フョークラを寝かした瞬間に、待ってましたと結衣が現れて抱きついてきたが、いつもお世話になっているし、言っている事も尤もなので、階段を上がって屋上へ。


「い、移動は経験しておりましたが、階段は……こ、これは結衣でなければ、気絶してもおかしくない破壊力! ご主人様……流石ですっ!」


 何が流石なのかは分からないが、屋上へ上がると見晴らしの良い景色の真ん中に大きな風呂があり……


「……結衣も来た。よくわかってる。ここは最高」


 既にレヴィアが俺の分身と共に入っていた。

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