第8話 露出を減らそうと思って着せたシャツが思わぬ効果を生んでしまい、困るアレックス
「うぅ……命の恩人であるアレックスさんに、お見苦しい物を見せてしまい、すみません」
「えっ!? いや、何を言って居るんだ。それなら、俺の方こそ、その……見てしまってすまん」
「いえ、元はと言えば私が滑りそうになったのが悪いので。アレックスさんは私を助けようとして下さった訳ですし、少しも悪くないです」
再び背中合わせになると、若干気まずい感じになりながら、お互いに謝り、
「えっと、互いに全裸で風邪をひいても困るし、中へ入ろうか」
「は、はい。そうですね」
リディアの手を引こうと、後ろ手に手を伸ばす。
「ひゃぁっ! あ、アレックスさん。それは、お尻です」
「す、すまんっ! わざとでは無いんだっ!」
「……ふふっ、そんなに謝らなくても大丈夫ですよ。ちょっとビックリしちゃいましたけど、アレックスさんがそういう人じゃないっていうのは、分かりますから」
今度こそ、ちゃんとリディアの手を取って小屋の中へ。
互いに部屋の隅で着替えを済ませ、ふと気付く。
「そうだ。リディア、俺の着替えで悪いが、これを」
「あの、これは?」
「いや、リディアが着ていた服は結構ボロボロだっただろ? 所々大きな穴が空いているし、サイズは合わないだろうけど、まだマシかと思って」
「アレックスさんのシャツ……あ、ありがとうございますっ!」
荷物袋からシャツを取り出してリディアに渡すと、やはりボロボロの服が嫌だったのか、凄く喜んでくれた。
……って今、一瞬顔を埋めて匂いを嗅がなかったか!?
ちゃんと洗っているから、臭くは無い……と思うんだが。
あ……後でリディアに頼んで、今日着ていた服を洗濯する為の水を出してもらう必要があるな。
本当に、何から何までリディア頼み……本当に居てくれて助かったよ。
心の底からリディアに感謝しつつ、着替え始めたので後ろを向いて待っていると、
「アレックスさん。もう、こっちを向いて大丈夫ですよ」
「……あれ? おかしい。何故だ?」
露出を減らす為に俺のシャツ着せたんだが……露出は減ったはずなのに、何故か色っぽく見えてしまう。
「アレックスさん? どうかされましたか?」
「いや、何でも無いんだ。何でも」
「ですが、少し顔が赤くなっているようにも思えますが」
「本当に大丈夫だからさ」
「そうなんですか? ……あ、分かりました。お腹が空いたんですね。すぐ夕食を用意するので、少し待っていてくださいね」
そう言って、リディアが食料の入った箱から色々取り出し、部屋の隅で何かを作り始めた。
一方の俺は、リディアに少しだけ水を出してもらい、着ていた服を洗濯する事に。
もう、リディアに匂いを確認されたりしないように念入りに洗い、ついでに元々リディアが着ていたボロボロの服と一緒に、小屋の外のミカンの木へ干しておいた。
それから、お昼と同じく俺が魔力を提供し、リディアが外で火を起こすと、
「お待たせしましたっ! アレックスさん、ご飯が出来ましたよー!」
パンにキャベツを挟み、焼いたポテトが添えられた夕食を作ってくれた。
リディアの美味しい料理に舌鼓を打ち、感謝の言葉と共に後片付けを済ませると、太陽が完全に沈み、窓から月明かりだけが差し込むだけの闇に包まれる。
「じゃあ、リディア。俺はこの辺で寝るから。あと、毛布はリディアが使ってくれ」
「えっ!? この毛布は、小屋にあった物ではなくて、アレックスさんの持ち物じゃないですか。アレックスさんが使ってください」
「大丈夫だよ。俺は冒険者だから、毛布すら無い所で寝るなんて日常茶飯事だったし」
「それを言うなら、私だって奴隷でしたよ? 見せ物みたいにされていたので、冷たい檻の中で眠っていましたし……あ、そうだ!」
一枚の毛布を譲り合っていると、リディアが何かに気付いたらしく、立ち上がる気配がした。
それから、ゆっくりと俺に近付いてきて、
「アレックスさん。私、怖いので一緒に眠ってくれませんか?」
「えっ!? いきなりどうしたんだっ!?」
「私、暗闇が怖くて、一人で眠れないんです。そして、アレックスさんはパラディンなので、闇に怯える私を守ってくれますよね?」
リディアが問答無用で俺にくっつき、一緒に毛布へ包まる。
怖いから守ってくれって言い方をされてしまい、断れなくなってしまった俺は、リディアと背中をくっつけて寝る事になってしまった。
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