第9章 広がるスローライフ

第327話 様子がおかしい商人ギルド

 翌朝。昨日は大変な一日を過ごしたが、今日はアレ抜きに頑張ろうと思っていると、


「旦那様。ウララドの街に居る我らの子より、お願いがあるそうです」


 朝食の時にメイリンから声を掛けられる。


「ウララドの街っていうと、ツバキやレイの人形たちか。どんな内容なんだ?」

「はい。何でも、商人ギルドから連絡があり、マジック・ポーションとステータスアップ・ポーションをもっと売って欲しいと」

「マジックポーションはともかく、ステータスアップ・ポーションはマズいんじゃないのか?」

「それが、ギルド職員の様子を見る限り、どうやら商人ギルドも何処かから圧力を掛けられているのではないか……と」


 ギルドに圧力を掛けるだなんて……出来るとしたら、王族や貴族、それに他のギルドとかか?

 だが他のギルドが商人ギルドに圧力なんて……いや、待て。闇ギルドなら、そういう事もやりかねないな。

 ウララドの街の闇ギルドは潰したが、本部は別にあると言っていたし……その本部からウララドの街へ、もう新たな手が回って来たという事なのか?


「わかった。ウララドの街へ向かおう。レイ、一応ポーションを持って行こうと思うんだが、今どれくらいある?」

「せやねー。マジック・ポーションなら沢山あるで。ステータスアップ・ポーションの方は、とりあえず十本やな」

「そうか。一先ず、ある程度の数を貰っても良いか? 商人ギルドを助けつつ、大元と思われる闇ギルドを潰してくる」


 そう言って、レイからポーションを受け取り、出発準備をしていると、


「アレックスは何処へ行くの?」

「あぁ、南にあるウララドの街という場所だ。そっちにも別で仲間が居るんだ」

「じゃあ、私も行くっ!」

「いや、その街には普通には行けなくてな。悪いが小柄な者しか連れていけないんだ」

「……私、小さいけど」


 レヴィアがギュッと抱きついてきた。

 何ていうか、ここへ来た直後のノーラの事を思い出すな。

 ノーラも最初は俺から離れてくれなかったし。

 今では一人で活動しているし……うん。レヴィアもここでの生活に慣れるまで付き合ってやろうか。


「わかった。ではシェイリーの所へ行こう。メイリン、マミたちに連絡を頼む。それからカスミはヴァレーリエたちと共に元兎耳の村から南下し、第一休憩所の周辺調査を頼む」


 そこからレヴィアを連れてシェイリーの魔法陣へ。

 少し待つと、いつもの様にマミとジュリがやって来た。


「アレックスー。お待たせ! ちょっと急ぎめでお願いしたいポン!」

「アレックスさん。人形さん経由で話しましたが、どうやら裏でかなり大きな組織が動いているようです」


 二人とも急いでいる様子なので、俺もすぐに変化スキルを使って子供の姿になると、レヴィアと共に樽の中へ。


「アレックスは小さくなったけど、アレは小さくないんだねー」


 レヴィアは空気を読もうな。

 そういう事をしている場合じゃないんだからさ。

 今の俺より大きなレヴィアにいろいろされている内に、いつもの様にジュリの家に到着した。

 樽から出ると、すぐにレイの人形、レナが話し掛けて来る。


「お父さん。メイリンお母さんには話したけど、何か変やねん。商人ギルドのお姉さんが切羽詰まっているというか、鬼気迫る感じというか……」

「なるほど。一先ず、レイからポーションは貰って来た。とりあえずギルドへ行ってみようか」


 元の姿に戻ると、俺、レナ、レヴィアに、マミとジュリとツバキの人形ツキの六人で商人ギルドへ。

 ちなみに、ケイトと俺の人形たちには留守番をしてもらう事にした。


「失礼。ちょっと話を聞きたいのだが……」

「あぁっ! あ、アレックス様っ! お待ちしておりましたっ! こちらへどうぞっ!」


 ギルドの受付の女性に声を掛けると、個室へ通され……ギルド側も大勢出て来たな。


「アレックス様。はじめまして。商人ギルドのギルドマスターです。率直にお話させていただきますが、マジック・ポーションとステータスアップ・ポーションを定期的に売っていただけないでしょうか。価格は言い値で構いません」

「ちょっと待ってくれ。前にもレナが話したと思うが、材料が特殊で作れる量にはバラつきがあるんだ」

「では、ある分だけで構いません。どうかお願いいたします!」


 お願いしますと言いながら、凄い圧を掛けてくるな。

 女性のギルドマスターだからか、俺を圧倒しようとしている訳ではないが、何やら必死な感じがする。


「先程、言い値で良いと言ったが……商人ギルドは適正な価格で取引をしなければならないのでは?」

「――っ! そ、そうですが、このポーションについては、ちょっと事情がありまして」


 俺の言葉でギルドマスターが一瞬目を逸らす。

 やはり何かあるようだ。

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