第399話 カレラドの街の捜索方法

「あの、この孤児院に居れば、アレックスさんが来てくださるんですよね?」

「あぁ。定期的に訪れるが……本当に良いのか?」

「はい! もちろんですっ!」


 女性たちが目を覚ました後、今後どうするかについて改めて話をすると、このエリラドの孤児院で働くと言い出した。

 聞けば、三人とも元よりエリラドの街に住んで居たというのと、何より本人の強い要望なので、俺としては断る事が出来ない。


「こ、子供たちに囲まれながらアレックスさんと……」


 この女性だけは、孤児院ではなくウラヤンカダの村へ連れて行くべきな気もするが……次はカレラドの街で、俺たちを襲った者を探さないといけないからな。

 まぁ流石に子供たちへ変な事はしないだろうと信じて、孤児院を後にする。


「では、参りましょうか。お父さん」


 カレラドで戦闘予定だという事を伝え、一緒に来たがるテレーゼには魔族領へ戻ってもらう事にして……連絡係となる人形と共に乗合馬車へ。

 昨日も、こうしてカレラドの街へ向かった気がするのだが……まぁ仕方が無いか。

 ちなみに、今日はエリスに代わってリディアの人形リースが同行している。

 早くカレラドの街へ行かなければ……と焦るものの、馬車は街道を昨日と同じ速度で走っていく。

 焦る気を抑えなければ……と思っていると、隣に座るリースが俺の脚の上に座り、抱きついてきた。


「リース?」

「お父さん。焦る気持ちは分かりますが、落ち着いてください。焦っても馬車は早くなりません」

「あぁ、そうだな。ありがとう、リース」


 どうやら一人で焦っていたのがリースにも伝わってしまっていたらしい。

 気を落ち着かせようと深呼吸したところで、リースが目を輝かせながら口を開く。


「お父さん。気を紛らわせる為……リディアお母さんとの馴れ初めを聞かせてくれませんか?」

「馴れ初め……というか、奴隷解放スキルで初めて来たのがリディアだったからな。最初は何もない土地で、リディアのおかげで様々な作物が増えていって、本当に助かったよ」

「ほうほう。それで、二人っきりで暮らして居たので、徐々に惹かれ合っていった感じですね?」

「まぁそんな感じだな。最初はベッドも無くて、一枚の毛布で一緒に寝ていたし」


 リースが俺の気を紛らわせようとしてくれているのか、リディアとの話を聞きたがるので暫く話していると、いろんな質問を投げかけてくる。


「それで、リディアお母さんの好きなところはどこですか?」

「リディアの好きなところは、優しいところだな。……怒らせると怖いが」

「ふむふむ、なるほど。ちなみに、メイリンお母さんやエリーさんに、ユーディットさんやボルシチさんより、リディアお母さんの方が好きですよね?」


 ……ん? エリスも似たような事を聞いてきたよな?

 エリーもリディアも、やや独占力が強い二人だから……とりあえず、この質問は今後禁止にしたいな。恐ろし過ぎる。

 昨日と同様に、適当な話でリースの質問を有耶無耶にして回避している内に、カレラドへ到着した。

 さて、どうやって探したものか……と考えていると、


「アレックス様! お疲れ様です!」


 乗合馬車の停留所で女性に声を掛けられる。

 誰かと思って見てみると、


「ナズナ!? どうしてここに!?」

「カスミちゃんも居るわよー! 私を操作してきた奴にお仕置きしないといけないしねー」

「お父さん。私も居るよー!」


 ナズナとカスミ、そしてエリスに出迎えられる。


「三人とも移動して来ただけだよな? まだ何もしていないよな?」

「えぇ、大丈夫よ。お兄さんが来る前に操られたりしたら、目も当てられないもの」


 良かった。流石に同じ考えか。

 だが問題は、この広い街からどうやって奴を探すかだな。

 ナズナとカスミが調べてくれれば、かなり捜索は早いだろう。

 だが、それで前と同じ攻撃を受けてしまっては意味がないので、俺と一緒に行動しながら捜す必要があるのだが、それだと時間がかかり過ぎる。

 そんな事を考えていると、


「アレックス様。捜索用の場所を確保しておりますので、こちらへどうぞ」


 ナズナに手を引かれる。


「捜索用の部屋? どういう事だ?」

「大丈夫です。行けばわかりますので」

「応援として、ソフィちゃんにも来てもらっているわよー。あと、エミリアちゃんとロザリーちゃんにも」


 ソフィはともかく、エミリアとロザリーって、ウラヤンカダの村の村長の家に居た冒険者だよな?

 一体、どこで何をするつもりなんだ?

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