第472話 アマゾネスの村

 アマゾネスの中で、最も歴史や地形に詳しいという族長を紹介してもらう為、部族の本拠地へ。

 本当は、全員で行きたい! と言われたが、魔物も出る場所だし、俺たちも船があるから……という訳で、代表者だけで移動して来た。

 俺とモニカにユーリの三人に、ヴィクトリアとチェルシーだけだが……最後までレヴィアが一緒に行くと拗ねて大変だったな。

 何かあった時に、家を動かせるのがレヴィアだけしかいないという事で、渋々残ってくれたが。


「アレックスさん、こちらです」

「こっちはテントではなく、ちゃんとした家なんだな。何というか、村って感じがする」

「はい。あのテントは、我々遊撃部隊が任務中に寝泊まりする為の仮の家なので」


 ヴィクトリアによると、アマゾネスの村の周辺を定期的に周り、魔物を駆除しているそうだ。

 なるほど。そういう守り方もあるよな。

 感心しながらヴィクトリアとチェルシーについていくと、村の手前で突然槍を持った女性に囲まれる。


「何者だ! ここは男子禁制のアマゾネスの村。早々に立ち去るなら見逃すが、そうでなければ……」

「待って! この人は、私とチェルシーの旦那様なの。私たち、この男の人と結婚することにしたから、族長様へご報告に来たの!」

「なっ!? 遊撃部隊長のヴィクトリア殿と、その妹チェルシー殿と見受けられるが……本気なのかっ!?」

「当然よ。冗談でこんな事は言わないわ」


 ヴィクトリアの言葉に頷くチェルシーを見て、槍を持った女性たちが顔を見合わせる。


「……わかった。一先ず、族長へ話をしてこよう。この場で少し待ってくれ」

「わかった。……アレックス、少し待ってもらえる?」

「あぁ、勿論だ。とりあえず、座って待っていようか」


 この手の話は、だいたい長時間待たされるパターンだと思い、適当に地面へ腰を下ろそうとしたら、モニカから待ったを掛けられた。


「お待ちください、ご主人様。こんな所へ座られては、お身体が汚れます。どうぞ、私の上に腰掛けてください」


 そう言って、モニカがその場で四つん這いになると、


「なっ!? アレックスさん! だったら私もっ! 私の上に座って!」


 ヴィクトリアもモニカと同じように四つん這いに。

 いや、二人は何をしているんだ!?


「アレックスさん。私はアレックスの上に乗りたいなー」

「チェルシー、ずるいぞっ! それなら私だって!」

「ふっ、ご主人様に座ってもらえていないというのに、上に乗りたいなどと……笑止千万っ!」


 チェルシー、ヴィクトリア、モニカが訳の分からない話をしだし……アマゾネスの女性たちが、何故か少しずつ俺たちから距離を取っていく。


「……ヴィクトリア殿は、優れた遊撃部隊長だと聞いていたのだが、所詮は噂だったか」

「……その妹のチェルシー殿と言えば、麗しい見た目で、アマゾネス一の美少女と名高かったのだが……いや、確かに可愛らしいが、あの物欲しそうな目で男を見るのは、ちょっとな」

「……一体、遊撃部隊のジェシカ副隊長はどうしたというのだ!? あのしっかりしたジェシカ殿がついて居ながら、何という事なのだ」


 何を言っているかは聞こえないが、白い眼を向けられているのは分かる。


「パパー。モニカたちは、なにしてるのー?」

「いや、俺にも分からないんだ。とりあえず、そっとしておくのが良いんじゃないかな」


 モニカが四つん這いになったまま、器用に服を脱いでいるが……何故脱ぐのか。

 一先ずモニカをスルーして、ユーリと遊びながら待っていると、槍を持った女性の一人が奥から走って来た。


「ヴィクトリア殿、チェルシー殿。そして、そちらの男とその仲間たちよ。族長が会ってくださるそうだ。ついて来るが良い」

「さぁ、アレックスさん。参りましょう」

「あー! お姉ちゃん、ズルーい!」


 ユーリを肩車した状態で、両腕にヴィクトリアとチェルシーが抱きついてくる。

 定められたルート以外は行かせない……と言わんばかりに、槍を持った女性たちに取り囲まれながら奥へ。


「ご、ご主人様っ! 待ってくださいっ! 酷いですっ!」

「待て! そこの全裸で椅子の格好をしていた女よ! この村に変態は入れぬ!」

「誰が変態よっ! ……こほん。ほら、服もちゃんと着たし問題無いでしょっ!」

「……わかった。だが、絶対に族長の前で全裸になったりするなよ!? くれぐれも失礼の無いようになっ!」

「当たり前じゃない」


 後方でモニカとアマゾネスの女性が言い争っていたようだが、無事にモニカも追いついて来た。


「ん? 向こうに落ちている、小さな三角形の白い布は何だ? おい、これは誰かのパン……」

「わー! みたことない、おおきなひとがいるー!」

「ねぇねぇ。あれって、もしかして伝説の男ってやつじゃない?」


 後方から女性の声が聞こえたが、周囲に居る女の子たちの大きな声に掻き消され……その女の子たちも、見せ物ではないから家に帰れと、槍を持った女性たちに追い払われる。

 わかってはいたが、全く歓迎されていなさそうだな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る