挿話124 ノーラの故郷を探すマジックナイトのモニカの提案

「……ふ、ふぅ。モニカさん。少し休憩しても良いでしょうか?」

「……酷い汗だな。氷魔法はあまり得意では無いのだが、少し待っていてくれ。……≪ロー・フリーズ≫」


 その辺にあった落ち葉を凍らせ、フェリーチェ殿に渡すと、少しだけ苦しそうな顔が和らいだ。

 しかしこの調子だと、いつノーラ殿の故郷へ着くのだろうか。

 ハッキリ言わせてもらうと、先程泉で休憩してから、それほど歩いていない。

 だが、フェリーチェ殿に体力が無いという訳ではないのだ。

 実際、船を降りてから泉までは、それなりの距離を歩いていたからな。

 それより大きな問題がある。


「……えっ!? ここで、ですか!? ま、待ってください。嬉しいですが、すぐ傍に……」


 手頃な石に腰掛けて休憩していたフェリーチェ殿に、プルム殿フォーが近寄り、そのまま木の陰へ。


「……ぁっ!」


 フェリーチェ殿は声を殺そうとしているようだが、殺しきれずに時折嬉しそうな声が漏れ聞こえて来る。

 うぐ……これは想定外だった。

 おそらくプルム殿フォーは、ご主人様の性質を引き継いでいる。

 その為、体力も精力も無尽蔵で、一定期間毎に吐き出さねばならないのだろう。

 だが、私がプルム殿フォーに近付くなオーラを浴びせかけており、ノア殿は幼過ぎる為、必然的にフェリーチェ殿が相手をする事に。

 ……う、羨ましい!

 ご主人様に、あそこまで激しく求められる事など、早々無い。

 いつも私からご主人様へご奉仕を……くっ! 私がプルム殿フォーを受け入れれば、私も嬉しいし、プルム殿フォーも嬉しい。その上、フェリーチェ殿も身体を休ませられるという、一石三鳥だ。


「だが、私は……私はぁぁぁっ!」


 くっ! 早くノーラ殿の故郷を見つけ、ご主人様の所へ戻らねば、おかしくなってしまいそうだ!

 だが、この調子では時間がかかり過ぎるっ!


「お待たせしました。行きましょうか」

「フェリーチェ。ふらふらだよー? モニカ、もうすこし、きゅーけーしよー?」


 フェリーチェがアレを垂らしながら戻って来たが……肌はツヤツヤで、顔は笑顔だけど、足腰はガクガクしている。

 暫くは嬉しさの気力で歩けるが、その内に体力が無くなって、休憩……からの、プルム殿フォーと、これまでと同じ繰り返しになってしまう。

 これを何とかするには……そうだ!


「ノア殿。ここまで来るのに、時々プルム殿に抱っこしてもらっていたが、ここからは私がおんぶして行こう!」

「いいのー? やったー!」


 ノア殿が嬉しそうに抱きついてきて……うん、軽いな。

 これなら、戦闘はさておき、移動には全く支障がないだろう。


「フェリーチェ殿。ここからは、プルム殿フォーに抱っこしてもらうと良いだろう」

「え? モニカさん? 私は自分で歩けますよ?」

「いや、ご主人様が待っているし、ノーラ殿にも早く故郷が見つかった事を教えてあげたい。目的地は、あそこに見える山だったな? ここからは休憩無しで行くぞ」

「なるほど。確かに、私の不甲斐なさのせいで予想よりも、時間が掛かっています。では、プルム・フォーさんに甘えさせていただき、あそこまで運んでいただく事に致しますね」


 よし。これで、あとは一気に移動するだけだ!

 問題はフェリーチェ殿の体力がもつかどうかだな。

 フェリーチェ殿には悪いが、プルム殿フォーは、歩きながらフェリーチェ殿に……あれは、凄まじいからな。

 私はご主人様直々に走りながらしていただいたが……果たして、フェリーチェ殿は耐えられるだろうか。

 それから私が先行して歩いていると、暫くして、私の予想通り、後方からフェリーチェ殿の声が聞こえて来る。


「こ、これっ! 久しぶりっ! この歩きながら……奥までっ! 前みたいに走りながらとも少し違って……んぅっ!」


 あ、あれ? フェリーチェ殿は既にご主人様と走りながらしていただいていたのかっ!

 くぅっ! これでフェリーチェ殿が気絶し、私の精神が揺さぶられる事なく、目的地に移動出来ると思っていたのにっ!


「――っ! 凄いっ! いいっ! とっても凄いのっ!」


 うぐぅぅぅっ! 羨ましいっ! 大失敗だぁぁぁっ!

 その後、フェリーチェ殿の声を聞きながらも、気合で目的地まで耐え抜き、リス耳族の村へと到着したのだが、


「この村には、ノーラという娘を持つ者は居ないねぇ。西の方にもリス耳族の村があるから、そっちかもしれないよ」


 まさかのノーラ殿の故郷ではないと。


「モニカさん。では、次は西へ向かいましょう! 是非、先程と同じ移動方法で!」


 ま、まだフェリーチェ殿の嬉しそうな声を聞かされながら移動するのか!?

 わ、私が欲求不満で倒れてしまぅぅぅっ!

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