第262話 露店探し

「アクセサリーを身につけたら、何処かへ歩いて行く……ですか。なるほど。以前より、ウララドの街で女性が行方不明になったから探して欲しいという依頼があるのですが、これが原因かもしれませんね」


 翌朝。朝一で来てもらったマミとジュリに事情を説明し、早速ウララドの街へ運んでもらう。

 ちなみに、今回は呪いを検知してもらう為に、ユーディットの人形のユーリに同行してもらっている。……いるのだが、


「ユーリは変な事をしないよな?」

「パパー。へんなことってー?」

「いや、何でもないんだ。ここ数日で色々あって、俺の感覚がおかしくなっていたんだ。気にしないでくれ」


 樽の中で密着し、ユーリまでもがツキやレナのように変な事をしてくるのかと思ってしまったが、一切そんな事は無かった。

 樽の中で胡座をかく俺の上にユーリが座り、到着するまで二人でしりとりをして過ごすという、凄く健全に……うん。こういうのが普通だよな。

 いつものようにジュリの家で樽から出ると、


「マミ! 昨日、レナが装飾品を買った露店へ案内してくれ!」

「わかったポン!」

「アレックスさん。自警団として、私も一緒に行きます!」


 ジュリとツキもついて来ると言い、共に行く事に。

 ちなみに、ユーリは翼が目立ち過ぎるので、薄い上着で身体を覆い、俺が抱っこしている。


「お父さん。ウチ……」

「レナは何も悪く無いぞ。悪いのは、あの装飾品を売っていた奴だ。俺が潰して来るから、安心して待っていてくれ」

「うん……」


 泣き出しそうなレナの頭を撫でると、ケイトにレナの事を頼んで出発する。

 マミの案内で昨日の露店が並ぶ通りへ行き……


「居ないな」

「居ないポン」


 例の装飾品を売っていた場所は、服が売られていた。

 昨日の店主は男だったが、今は俺と同じ歳くらいの少女が店主をしている。


「すまない。昨日、ここで装飾品を売っていた者を探しているんだが」

「この通りは、自由露店って呼ばれていて、早い者勝ちで好きな場所を選べるから、露店の並びは毎日変わるわよ。だから、昨日の話をされても分からないわ」

「そうなのか……確かに、隣の露店も違う気がするな」

「残念だけど、頑張って探すしかないわね。それより、そっちのお姉さん。奥さんかな? こんな服とかどうかな? 凄く良く似合うと思うんだけど」


 少女の言う通り、場所は合っているはずだが露店の並びが全然違っていて、ここから昨日の装飾品の露店を見つけるのは難しいかもしれない。


「装飾品を扱っている者が意外に多いな。この中の、どれが昨日の店なのかが分からないな」

「昨日の店主も、特徴が無い男だったポン」

「何となく、小柄な男だったような気もしますが……すみません。そこまで注視しておりませんでした」


 マミもツキも、俺と同じく店主の特徴を覚えていないらしい。


「そうだ。ユーリ、呪いを感じる事は出来るか?」

「できるよー! でも、このあたりには、パパがもっているブローチしかないよー」

「なるほど。毎日居る訳ではないのか」


 露店の場所がランダムというだけではなく、そもそも毎日出店している訳ではないというのは困ったな。

 レナがメイリンに贈ったブローチを借りてきたのに、同じ商品を売っているかどうかという確認すら出来ないのか。


「あ……アレックスさん。もしかして、その呪いが掛かった装飾品を今持っていらっしゃるんですか?」

「ん? あぁ。何か念の為に一つ持って来たが、それがどうかしたのか?」

「いえ……よろしければ、それを私に貸していただけないでしょうか。というのも、私がそれを身に着ければ、おそらく何処かへ移動するんですよね? 私の後をつければ、その呪いの装飾品を売った者か作った者の所へ辿り着くのでは?」

「それは……その通りだろうが、良いのか?」

「はい。だって、アレックスさんが居るじゃないですか。アレックスさんが私を守ってくださるのなら、何の心配もありませんよ」


 そう言って、ジュリが呪いのブローチを身に着ける。


「……あれ? 意外に何も起こりませんね?」

「いや、身に着けてから暫く経ってから発動するタイプらしい」

「少し待ってみよう」


 露店通りから場所を移し、人気の無い川の傍でジュリの様子を見て居ると……突然ジュリが無表情になり、歩き出した。

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