第153話 母娘の再会
「あの、ヨハンナさん?」
「お義母さんと呼んでも良いですよ?」
「……えーっと、ヨハンナさん。何故、そちらの天使族と戦う話になるんだ?」
ヨハンナさんが、ユーディットの母親として話すと言ったかと思えば、突然習わしだから戦えと言ってきた。
どうやら天使族は、イメージに反して好戦的な種族らしい。
「あら、私とした事が……ユーディットちゃんには未だ早いと思って説明していなかったのよね。だからアレックスさんが知らないのも無理はないわね。……ユーディットちゃんは、アレックスさんの事を愛しているのかしら?」
「愛してるっていうのは良く分かんないけど、アレックスの事は大好きだよー。旦那様だし」
「あらあら……なるほどねぇー。じゃあ、アレックスさんの嫌な所とかはある?」
「そんなの、ないよー。あー、でも強いて言えば……」
「言えば……?」
「もっとキスして欲しいかなー」
「あらあらあらあら……ですって、アレックスさん」
恥ずかしそうに頬を染めるユーディットと、ニヤニヤが止まらない天使族の女性陣に見つめられ、エリーやリディアたちにはジト目を向けられる。
えっと、この状況は何だ!? 何の話をしていたんだっけ?
「ヨハンナさん。アレックスさんと天使族が戦う理由の話では?」
「あら、そうだったわね。話を戻すと、天使族の習わしで、天使族女性と他種族の男性が婚姻を結ぶ場合は、その強さを示さないといけないの。妻を守れるようにって」
なるほど。
リディアの問いかけで、ヨハンナさんが説明してくれたが、分からないでも無い。
事実、ユーディットは人間に拐われていた訳だし、強さが求められるのだろう。
それは分かった。分かったが、先にやるべき事がある。
「わかった。そちらの天使族の女性と戦うというのは一旦置いておいて、何かしらで強さは示そう。だがとりあえず、そういう話は後にして、ユーディットは久しぶりに母親と再会出来たんだろ? 先ずは親子水入らずで話してきたらどうだ?」
「そうだねっ! ママーっ! 会いたかったよー!」
ヨハンナさんに向かって、ユーディットがフヨフヨと飛んで行くと、
「くっ……天使族の習わしがっ! 強さを……強さを示してもらわなくてはっ!」
「ユーディットちゃんを使って私を懐柔なんて……」
「ま、孫……孫の名前を教えて」
ユーディットに抱きつかれたヨハンナさんの態度がみるみる軟化していった。
母親と再会する事が出来たユーディットも嬉しそうに、沢山話して居るし、今は二人っきりにしておいてあげよう。
「さて。ユーディットの母親や、同族の皆が来てくれたんだ。とりあえず、歓迎のパーティー……かな?」
「では、私は料理を用意いたしますね。この人数ですので……ニナさん、大きなお鍋を作っていただいても良いですか?」
「任せてー!」
先程はジト目だったリディアも、ユーディットが家族と再会出来たという事に気付き、準備に取り掛かかる。
……まぁ、ヨハンナさんの登場が唐突過ぎたし、最初は敵意丸出しだったからな。
今は完全に仲の良い母娘って感じで良かった。
「そういう事なら私も何か作るわね。この人数分をリディア一人じゃ大変だもの」
「であれば、妾は子供たちと共に食材を集めよう」
そう言って、エリーとメイリンも移動していく。
昨晩祭をしたその翌日に、パーティというのは大変だが、喜ばしい事なので頑張ってもらいたい。
簡単なものなら、俺も料理を手伝うが、他の皆はどうするのだろうか。
「ん、じゃあボクは壊れた壁を直しておこうかな」
「ノーラ、すまないな」
「謝って貰ったし、大丈夫だよー。それに、ヨハンナさんの気持ちも分かるしね」
そうだよな。自分の子供が攫われて、見つかったんだ。
何としても取り戻す! ってなるよな。
……だが、ユーディットの父親は来ていないみたいだけど、どうしたのだろうか。
この状況で来ていないという事は、余程の理由で天使族の棲家を離れられないか、もしくは既に死別しているとか?
ヨハンナさんやユーディットには聞けないので、こっそり天使族の女性たちに聞いてみると、
「あー、ヤーコブ様ですか。ヤーコブ様はその……中々連絡が取れなくて」
「亡くなっている訳ではないんだな?」
「えぇ。ただ、約百年前にユーディット様が行方不明になって以来、単身でユーディット様をずっと探し続けていまして……」
「え? 百年近くも?」
「はい。時々……数十年に一度帰って来ては、ユーディット様が戻って来ていないか確認して、すぐに旅立たれる方でして。次はいつ戻って来るやら……」
なるほど。
一先ず、死別している訳でも、ユーディットの事を放っている訳でもなくて良かった。
いや、再会出来ていないので、良くはないのだが。
「あの、では私たちからも質問してよろしですか?」
「ん? あぁ、俺たちに答えられる事なら」
「に、人間族の男は、毎月子作りが可能と聞いたんですけど、本当なんですか?」
何を言い出すんだ? と思ったが、天使族の女性たちは真面目な表情で俺の言葉を待っている。
とはいえ、どう答えたものかと思っていると、
「ふっ……毎月? 答えは毎日よ。朝、昼、夜の一日三回……しかも、一回につき、五発は出してくださるわっ!」
「しかも、ここに居る女性陣、ほぼ全員にだ。というか、激し過ぎて気を失ってしまうので、女性一人では危険だ。だから、いつも複数人でしてもらっているのだ」
何故かモニカとサクラが得意げに回答して……って、何を言っているんだよっ!
いや、まぁその……うん。ちょっと大袈裟ではあるものの、大きくは間違っていないのが困った話なんだけどな。
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