挿話18 フィーネを何とかしたいギルド職員のタバサ
「ではまた結果をお伝えするので、数日後に来てくださいね」
「はーい! あ、でも、お腹が空いちゃうので、何かのお仕事をしに毎日来るとは思います」
「そ、そうですね。では、見かけたら、こちらからお声掛けしますね」
一先ず、噂のフィーネちゃんが、笑顔で出て行った。
フィーネ・ウォーカー――うちのギルドの最年少冒険者で、母親が幼い頃に行方不明となり、父親も三年前に病死。身寄りも無く、孤児院のお世話になった後、冒険者に。
未知のジョブであるウィッチを授かっている為、ギルドとしてはA級以上の冒険者を付け、保護すると共に、その能力を調査したい。
「そうは言ってもねー……実際難しいわよ」
ギルドの冒険者情報に書かれた一文に突っ込んで居ると、
「ん? どうしたんだ、タバサ。眉間にシワを寄せて」
それを書いた本人がやって来た。
「あ、ギルドマスター。あの例のE級冒険者フィーネさんから、パーティを追放されたと相談されまして」
「あー、あのピンク髪の……か。境遇を考えると、支援してやりたいんだが、未知のジョブっていうのがな。ジョブ名からすると、魔法を使うとは思うんだが……って、タバサはあの嬢ちゃんと面識があったのか?」
「いえ。ですが、あのピンク髪で、すぐに分かりました。ピンク色の髪だなんて、かなり珍しいですし」
フィーネちゃんは生まれつき髪の毛が淡いピンク色らしく、お母さんも同じ色だと予想して、それを目印として探しているらしい。
「まぁそうだな。少なくともこの街にはピンク色の髪なんて、あの嬢ちゃん以外に居ないしな」
「この街には……って、他の街で見た事があるんですか?」
「何度か遭遇した事はあるぞ。だが、俺が現役の頃の話だし、そもそも……いや、何でも無い」
ギルドマスターが何かを言い掛けて、口を閉じる。
気になるけど、教えてくれなさそうなので、
「えっと、フィーネさんをアレックスさんの所へ送ろうと思うのですが、如何でしょうか。もちろん、フィーネさん分の食料はこちらで負担し、定期的に送っている支援物資を増やします」
「アレックスの……って、魔族領か? まぁ双方が構わないというなら良いだろ。アイツなら、守る相手が一人くらい増えた所で問題無いだろうし」
フィーネちゃんの今後について話したら、一先ず承認してもらえた。
とはいえ、アレックスさんの了承は必要だけど。
……正直、アレックスさんは性格的に断らないと思うんだけど、問題はエリーちゃんとモニカさんなのよね。
エリーちゃんは、獣と化しているアレックスさんと数日間二人っきりだったから、既に男女の仲になっているはず。
そこは私の作戦通りだから良いんだけど、モニカさんが予定よりも早く行き過ぎたのよね。
エリーちゃんがアレックスさんの身体だけじゃなくて、心まで完全に掴んでいたら、モニカさんはラブラブな二人の蚊帳の外のはず。
だけど、二人きりの期間が短かったから、心を完全に掴みきれていなければ、アレックスさんがモニカさんの攻めに負けてしまう可能性が否定出来ない。
「……すっごく大きかったもんね……」
「ん? タバサ。何が大きかったんだ?」
「な、何でも無いです。気にしないでください」
危ない、危ない。
モニカさんの胸の大きさを思い出していたら、思わず言葉に出てしまっていた。
けど、モニカさんがアレックスさんを寝取っていたとしたら、修羅場どころじゃないわよね。
そんな中にフィーネちゃんを送ったら、魔法の修行どころじゃないわよね?
向こうでアレックスさんに守ってもらいながら、エリーちゃんに魔法を教えてもらうのがベストなんだけど。
まぁ先にフィーネちゃんの年齢を伝えておけば、エリーちゃんもモニカさんも、アレックスさんを狙うライバルとは思わないわよね?
……年齢の割に発育が良過ぎるから、ローランドには、そういう目で見られていたらしいけど。
「そう言えば、ローランドさんって、どうなったんですか?」
「ん? 中央神殿から来た奴らと一緒に出発したぞ。何でも、先ずは心を正す修行をするとか言っていたな」
「心を正す修行……ですか?」
「あぁ。ローランドが女好きが過ぎると看破されてな。七人のオッサンを雇って、男だらけのむさ苦しい旅をさせると言っていたな」
七人のおじさんに囲まれた旅……うわぁ。私なら絶対に心が折れるわね。
まぁでも自業自得だし、むしろそれで済んで良かったんじゃないかな?
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