第517話 チェルシーの子供?

 そろそろ終わりにしおうかと思い、分身を解除して着替えて居ると、全裸のチェルシーが泣きそうになりながら走って来た。

 いろんな物を垂らしつつ、かつ足腰がフラフラしているのだが、大丈夫だろうか。


「あ、アレックス様っ! お願いしますっ! 分身スキルを使っていただけませんか!?」

「いや、そろそろ俺たちは出発しないといけないんだ。それに、膝がガクガクしているようだし、休憩した方が良いのではないか?」

「違うんですっ! 子供が……子供が居なくなったんですっ! どうか分身スキルも使い、皆で探していただけないでしょうか!」

「子供? どういう事だ?」

「先程まで、あちらの陰でアレックス様に似た十四歳くらいの少年とずっと一緒に居たんですけど、先程突然消えてしまって……何処へ行ってしまったんでしょう」


 ふむ。十四歳くらいという事は、俺の分身と勘違いしているという訳ではなさそうだな。

 ただ、分身スキルを使っている間、チェルシーと触れ合っている感覚はあったんだが……どうなのだろうか。

 とりあえず、チェルシーの望み通り分身スキルを使おうとしたところで、サマンサから待ったが掛かる。


「十四歳の少年……チェルシーよ。ここはアマゾネスの村だ。十歳以上の男は居ないはずだぞ?」

「はい。それは分かって居るんですけど、最初は六歳くらいの可愛らしい男の子だったんです。それが、いつの間にか少しずつ成長していって、気付いた時には十四歳くらいだったんです」

「ほう……となると、普通の子供ではないな。アレックスに似ているという事だが……アレックスは、何か心当たりが無いだろうか」


 六歳くらいとなるとなると、変化スキルを使った俺が、それくらいの年齢だな。

 だが、少しずつ成長するというのがわからない。

 分身も変化スキルは使用出来るはずだが、俺が変化スキルを細かく調整出来ないのに、分身に出来るとも思えないし、何より少しずつ成長させるという意味が分からない。


「アレックス。みたところ、分裂というスキルが増えているようですけど、それが何か関係したりしないかしら」

「あ……いやでも、プルムの分裂スキルだと、使用時にプルム本人も幼くなるよな? 俺には何も影響が無いのだが……まぁ使ってみればわかるか。≪分裂≫」


 天后から、新たなスキルが増えていると言われ、十中八九プルムから貰ったスキルだと思いながら使用したのだが……何も起こらない。


「待てよ。プルムも、分裂スキルは勝手に発動するタイプのスキルか。俺のアレを沢山取り込むと分裂するようだが……俺はどいう条件で発動するんだ?」

「んー、アレックスは分身スキルにいろんな効果が付随しているみたいだし、もしかしたら分裂スキルも分身に付随しているのかもしれないわね」

「なるほど。……皆、あくまで分裂スキルの確認だからな? もう変な事はしないからな? ……≪分裂≫!」


 皆に釘を刺して分裂スキルを使うと、いつもの様に俺と同じ動きをする影分身が二体現れ、俺と影分身二体がそれぞれ二体の分身を生み出し、俺を含めて全部で九人に……いや、十人居るな。

 しかも、一人だけ少し背が低い……って、これが分裂スキルで生み出された、十四歳の俺なのか?


「あーっ! やっぱりアレックス様の分身だったのですねー! アレックス様! この子、チェルシーにください!」

「いや、分身なのであげる事は出来ないが……とりあえず、分身スキルで現れるという事は分かったな。しかし、感覚は共有されているのだが、何か変な感じがするな……天后、何かわかるだろうか?」

「そうですね。こちらの少年アレックスは、女性の愛え……こほん。女性からの愛情を貰い受け、育つようですね」


 女性から愛情を貰って育つ……か。

 プルムの分裂スキルで生まれたプルム・ツーたちが、俺のアレを取り込んで大きくなったような感じなのだろう。


「という事は、この子は私の愛情を受けて育ったという事ですね? いわば、アレックス様と私の子供ですね?」

「いや、チェルシーの身長を既に追い越しているじゃないか。それにアレックスの子は私のように、本物を……こほん。まぁ気持ちは分からなくもないが」


 チェルシーとサマンサが話していると、


「あら? こちらの分裂スキルのアレックス……確かにチェルシーの子供と言っても差し支えないかもですね」


 天后が何やら意味深な事を言い出した。

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