第222話 キノコが食べたいヴァレーリエ

「いいなぁー。自分も乗りたいッス」

「すぐ戻って来るし、帰りには乗せてもらえるはずだから、少しだけ待っていてくれ」


 ビビアナが、ヴァレーリエの背に乗った俺とリディアを羨ましそうに見上げる中、再び空へ。

 最初の時と違い、かなりスムーズに飛ぶので、やはり重量オーバーだったようだ。

 暫く空を飛んだところで、遠目に建物が見えた気がしたのだが、


「アレックスー。ごめん、そろそろ無理なんよ」


 そう言って、ヴァレーリエが降下を始める。

 先程とは違い、俺とリディアを下ろしてからヴァレーリエが少女の姿に戻ると、先ずは石の壁で周囲を囲む。

 そこからは、いつものように少しずつ壁を広げ、ヴァレーリエがドラゴンに変身しても大丈夫なくらいのスペースを確保した。


「じゃあ、ヴァレーリエの体力が回復したら、ニナたちの所へ戻ろうか」

「そうですね。では、何か果物でも出しましょうか。何か、ご希望の品はありますか?」


 リディアが精霊魔法で果物を出してくれると言い、俺は疲れていないのでヴァレーリエの回答を待っていると、


「……キノコ」

「すみません。キノコは植物ではないので、私の精霊魔法では生み出せないんですよ」

「違うんよ。ウチは、もう我慢出来ないんよ! だから、アレックスのキノコ……いただきまーすっ!」


 突然ヴァレーリエが抱きついて来る。


「そういう事ですか。分かります。先程のお風呂はノーラさんやユーリさんが居ましたからね。ここなら声も聞こえないでしょうし、思う存分……アレックスさん。是非、分身を」

「リディアまで!? いや、ニナたちが待っているし、そもそもこんな何も無い場所で……」

「そう言うけど、ウチの初めても、こういう何もない場所だったんよ。それと、あのシェイリーがやっていたみたいに、三本同時に食べてみたいんよ」


 ヴァレーリエの言葉を聞いて、リディアがジト目に。

 いやまぁ、その……分身が三体も出てしまうからな。


「ダメですっ! 平等に二人ずつお相手していただきましょう。それから……≪大地の息吹≫! 芝生を敷きましたから、これなら寝転がっても大丈夫ですよね?」

「ウチは、あの壁に手をついて、立ったまま後ろからっていうのも、やってみたいんよ。シェイリーの社で、サクラっていう人間の女としていた体勢なんよ」

「アレックスさん。分身……出してくださいますね?」


 ダメだ。リディアが目の笑っていない笑みを浮かべている。

 こうなった時のリディアは、引いてくれないんだよな。

 結局二人に押し切られて分身スキルを使い……二人が満足するまで頑張る事に。

 ただ、リディアは俺のハグスキルで回復していても、元々の体力が無いので、結局夜のソフィとフィーネのように……ヴァレーリエに分身三人がかりで、リディアは俺自身とまったり過ごす。


「凄かったんよ! シェイリーが美味しそうに飲んでいたけど、濃厚で飲めば飲むほど魔力が回復して……ヤミツキになる味だったんよ! けど、アレックスとの子供も欲しいし、飲みたいけど下でも飲みたいし……これから毎日悩むんよ」

「子供と言えば……最近、ユーディットさんとエリーさんの様子がおかしい気がするんですが」

「エリーっていう人は知らないけど、ユーディットはアレックスの子供がお腹の中にいるって言っていたんよ。何でも、アレックスが孕ませスキルっていうのを新たに得たらしいんよ」

「へぇー……それは、おめでとうございます。ですが、初めて奴隷解放スキルで呼んでいただいたのは私なのに、それより先にユーディットさんと子供を……ふーん」


 ヴァレーリエっ! ユーディット本人が言うならともかく、勝手にそういう事を言うのはダメだからな!?

 あと、リディアはちょっと目が怖いんだが。

 ……いや、もう十二分にしただろ!? というか、子供は天からの賜りものというか、タイミングというか、これは俺がどうこう出来る話じゃないってば。

 一先ず、ヴァレーリエに注意し、リディアを宥めると、水を出してもらって身体を綺麗にし、再び空へ。

 真っすぐ上に飛んでもらうと、遠目に建物……というか、街が確認出来たので、一先ずニナたちの居る休憩所へ戻り、皆で家に帰る事にした。

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